出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人

文字の大きさ
36 / 41

第35話「絶望の淵、枯渇の呪い」

しおりを挟む
 通路を抜けた先に広がっていたのは、言葉を失うほどの光景だった。

 地底にこれほどの空間が存在するとは信じられない、巨大なドーム状の空洞。
 天井や壁には不気味な紫色の結晶が無数に生え、まるで巨大な生物の体内のように脈動している。

 そして、その空洞の中心。
 漆黒の闇の中に、それは浮かんでいた。

 直径百メートルはあろうかという、巨大な黒い心臓。
 ドクン、ドクンと不気味な鼓動を刻みながら、禍々しい瘴気を周囲にまき散らしている。
 あれが『虚ろなる神』の本体、『虚無の揺り籠』。

「……ついに、来たか」

 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
 ただそこに存在するだけで魂が凍りつくような、絶対的な絶望感。
 あれが、この星を喰らい尽くそうとしている元凶。

 俺たちが呆然と立ち尽くしていると、黒い心臓の鼓動が急速に早まった。
 ドクン! ドクン! ドクンドクンドクン!
 まるで俺たちの来訪を歓迎するかのように。

『……ヨクキタ、我が糧たちよ……』

 脳内に直接、おぞましい声が響き渡る。
 それは男でも女でも、老人でも子供でもない、全ての生命への侮蔑と嘲笑に満ちた声だった。

 邪神がついに覚醒したのだ。

「まずい! 総員、構えろ!」

 エリアナが叫ぶが、遅かった。

 邪神は物理的な攻撃を仕掛けてくるのではなかった。
 その黒い心臓から目に見えない黒い波紋が同心円状に広がっていく。
 それは俺たちをすり抜け、地上へ、そして世界中へと瞬く間に伝播していった。

『……喰ラエ、我が祝福ヲ。万物ヲ無ニ還ス、枯渇ノ呪イヲ……』

 その言葉と同時に、世界に異変が起きた。
 様子はセレスティアの祈りを通して、俺たちの脳裏に直接流れ込んでくる。

 地上の大地から生命力が急速に失われていく。
 緑豊かな森は瞬く間に枯れ木となり、色とりどりの花々は色を失い崩れ落ちる。
 豊かな実りをつけていた畑は干からび、不毛の荒野へと変わっていく。
 川は干上がり、海はその輝きを失い、淀んだ死の海へと姿を変えた。

 それはまさに、世界の終わりを告げる光景だった。

 俺の領地も例外ではない。
 奇跡の作物が実っていた俺の畑も枯れ果て、黒い土へと還っていく。
 そして何よりも、俺たちに衝撃を与えたのは。

 天を突くようにそびえ立っていた世界樹が、その神々しい輝きを失い、みるみるうちに枯れていく姿だった。
 葉は落ち、幹はひび割れ、まるで巨大な墓標のようになってしまった。

「ああ……。世界樹が……」

 セレスティアが悲痛な声を上げる。
 世界樹の枯渇は、この星の生命力が完全に尽きようとしていることを意味していた。

 そして、その呪いは俺たちの身にも直接降りかかってきた。

「ぐっ……! 力が、抜けていく……!」

 ダグが膝をついた。
 彼の自慢の剛腕から力が失われていく。

「魔法が……! 魔法陣が構築できん……!」

 グラン爺の杖から魔力の光が消える。

「聖なる力が……。神の御声が聞こえません……」

 セレスティアも顔面蒼白でその場にへたり込んだ。

 エリアナ、シルフィ、レオも同様だった。
 枯渇の呪いはこの星のマナそのものを枯渇させる。
 魔法使いは魔法を使えず、神官は祈りが届かず、戦士でさえ本来の力を発揮できなくなっていた。
 俺たちは最強の精鋭部隊から、ただの無力な人間へと成り下がってしまったのだ。

『……サア、絶望セヨ。ソシテ、我ガ一部トナレ』

 邪神の嘲笑が響き渡る。

 もはや打つ手はないのか。
 世界はこのまま無に帰してしまうのか。
 俺たちの心は、深い深い絶望の淵へと突き落とされた。
 希望の光は完全に消え失せてしまったかのようだった。
 仲間たちの瞳から光が消えていく。

 俺は唇を噛みしめた。
 拳を強く握りしめる。
 爪が食い込み、血が滲み出た。

『……まだだ』

 まだ、終わってはいない。
 俺の心の中には、まだ小さな小さな炎が残っていた。
 セレスティアと交わした約束。
 仲間たちと笑い合ったあの日々。
 それらが俺を奮い立たせる。

『俺は、諦めない』

 たとえ世界中の光が消えたとしても。
 俺が最後の光になってやる。

 俺は震える足でゆっくりと立ち上がり、虚ろなる神を真っ直ぐに睨みつけた。
 戦いは、まだ終わっていない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?

黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。 古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。 これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。 その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。 隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。 彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。 一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。 痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。

処理中です...