元悪役令嬢、偽聖女に婚約破棄され追放されたけど、前世の農業知識で辺境から成り上がって新しい国の母になりました

黒崎隼人

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第8章:王都へと続く、黄金の道

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 バルトロ辺境伯という強力な後ろ盾を得たことで、ロゼリアの農業改革は領地全体へと急速に広がっていった。辺境伯は自身の権限で、領内の村々にロゼリアの農法を導入するよう通達を出し、必要な資金や人材を惜しみなく提供した。
 カイは、各村を回る技術指導の責任者となり、ゲオルグは、彼の護衛兼、力仕事が必要な現場の指揮官として活躍した。マリアは、ロゼリアの秘書として、増え続ける仕事を手際よく整理し、彼女を支えた。
 数年のうちに、辺境伯領の農業生産性は飛躍的に向上した。どの村でも、ポタトや高品質な穀物が有り余るほど収穫され、人々は飢えの心配から完全に解放された。
 しかし、ここで新たな課題が生まれる。販路の確保だ。豊作は喜ばしいことだが、売れなければ富には繋がらない。
「辺境伯様。今こそ、私たちの富を確かなものにする時です」
 ロゼリアは、辺境伯の館で作戦会議を開いていた。彼女の目は、すでに領地の外、王都へと向けられていた。
「私たちの特産品、特にポタトの保存性の高さと、薬草の品質は、必ずや王都の商人たちの心を掴むはずです。問題は、どうやって彼らにその価値を認めさせ、有利な条件で取引するかですわ」
 ロゼリアは、辺境を訪れる数人の行商人たちを館に招いた。彼らは最初、辺境伯領の産物など大したことはないだろうと高をくくっていた。しかし、ロゼリアが提示したポタトや薬草の現物を見て、その顔色を変える。
 特に、王都で貴重品として扱われる高品質な回復薬が、ここでは安定して生産されていると知ると、彼らの目の色が変わった。
「こ、これは素晴らしい! ぜひ、我々の商会で独占的に扱わせていただきたい!」
 商人たちが殺到するが、ロゼリアは冷静だった。
「独占契約は結びません。最も良い条件を提示してくださった方と、最も太い販路を持つ方と、公正にお取引させていただきます」
 彼女は商才をも発揮し、商人たちを競わせることで、驚くほど有利な取引契約を結ぶことに成功した。さらに彼女は、一つの条件を付け加えた。
「代金の半分は現金で、そしてもう半分は、街道整備のための労働力と資材で支払っていただきます」
 商人たちは驚いたが、魅力的な商品を前に、その条件を呑むしかなかった。
 こうして、前代未聞のプロジェクトが始まった。辺境と王都を結ぶ、商業ルートの確立。商人たちの資金と技術によって、これまで悪路だった街道が次々と整備され、舗装されていく。それは、単なる道ではなかった。辺境に莫大な富をもたらす、「黄金の道」だった。
 街道が整備されると、物流は劇的に改善した。辺境の豊かな産物が次々と王都へと送られ、代わりに王都からは、現金や様々な文化、技術が辺境にもたらされた。
 もたらされた莫大な富を、ロゼリ-アは領地の未来のために再投資した。街道網をさらに広げ、大規模な灌漑施設を建設し、天候に左右されない農業の基盤を築き上げた。
 かつて「灰色の谷」と呼ばれた寂れた村は、今や辺境領の中心都市として生まれ変わり、その周りには豊かに潤う村々が広がっている。人々はロゼリアとバルトロ辺境伯を称え、辺境領は、王国で最も勢いのある地域として、誰もが認めるところとなっていた。
 ロゼリアは、発展していく領地の姿を、小高い丘の上からカイと共に眺めていた。
「見て、カイ。私たちの夢が、形になっているわ」
「ああ。だが、まだ始まりだ。俺たちの仕事は、まだ山ほどある」
 カイはぶっきらぼうに言いながらも、その横顔は誇らしげだった。
 ロゼリアは、王都の方角をじっと見つめた。自分を追放したあの場所は、今、どうなっているのだろうか。黄金の道が繋ぐ先にある王国の未来に、彼女は一抹の不安を感じずにはいられなかった。
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