元悪役令嬢、偽聖女に婚約破棄され追放されたけど、前世の農業知識で辺境から成り上がって新しい国の母になりました

黒崎隼人

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第13章:愚かな王子の、破滅への進軍

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 辺境領からの屈辱的な拒絶と、ロゼリアへの侮辱。その報告を受けたアルフォンスは、逆上した。彼の思考は、もはや正常な判断力を完全に失っていた。
「逆賊め……! あの女、私に恥をかかせたばかりか、王国にまで牙を剥くというのか!」
 彼は、リナの陰謀など知る由もない。彼にとって、ロゼリアはただの、自分のプライドを傷つけた許しがたい反逆者にしか見えなかった。
「軍を出す! 辺境領へ進軍し、逆賊ロゼリアを討ち、食糧を力づくで奪い取ってやる!」
 側近の良識派貴族たちが、「お待ちください、殿下! それでは内乱になってしまいます!」「今は、隣国のガルバニア帝国の動きも不穏です。国内で争っている場合では……」と必死に諫めるが、アルフォンスの耳には届かない。
「黙れ! 私に意見するな! これは、王太子としての、いや、次期国王としての命令だ!」
 リナも、彼の隣で火に油を注いだ。
「そうですわ、アルフォンス様! あの魔女を放置しておけば、王国は滅ぼされてしまいます! 正義の鉄槌を下すのです!」
 彼女にとっては、むしろ好都合だった。アルフォンスが国内の戦争に気を取られている間に、帝国を迎え入れる準備がさらに進められる。
 こうして、エルグランド王国史上、最も愚かな軍事行動が決定された。アルフォンスは、自ら総大将として軍を率い、「逆賊ロゼリアを討ち、王国を救う」という独りよがりな大義名分を掲げ、辺境領へと進軍を開始した。
 その兵力は、一万。王国の虎の子である近衛騎士団を中心とした、精鋭部隊だ。対する辺境領には、正規の兵士などほとんどいない。誰もが、アルフォンスの圧勝を信じて疑わなかった。
 進軍する街道で、アルフォンスの胸に蘇るのは、かつてロゼリアと愛を誓い合った日々の記憶だった。だが、彼はその記憶を、自ら汚し、踏みにじった。後悔も、罪悪感も、全てを自分勝手な正義感で塗り替えてしまう。
『私が間違っているはずがない。悪いのは、私を裏切り、国を裏切ったロゼリアなのだ』
 彼はそう自分に言い聞かせ、かつて愛した女性へと、無慈悲な刃を向けた。それは、自分自身の過去と、正しくあれたはずの未来を、自らの手で破壊する行為に他ならなかった。
 愚かな王子の軍勢が、地響きを立てて辺境へと迫る。その先にあるのが、栄光ではなく、破滅の崖っぷちであることに気づかぬまま。エルグランド王国は、自らの手で、終わりの始まりの引き金を引いてしまった。
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