元悪役令嬢、偽聖女に婚約破棄され追放されたけど、前世の農業知識で辺境から成り上がって新しい国の母になりました

黒崎隼人

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番外編1:忠実なる侍女の、世界で一番幸せな一日

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 私の名前はマリア。アグリア公国の妃となられた、ロゼリア様の侍女をしています。
 今日という日を、私は生涯忘れないでしょう。
 だって今日は、私の結婚式なのですから。
 お相手は、ゲオルグ様。あの方も、ロゼリア様がまだ公爵令嬢であられた頃からお仕えしている、寡黙で、強くて、とても優しい騎士様です。
 ロゼリア様と共に、あの絶望の地「灰色の谷」へ追放された日のことを、今でも時々思い出します。もうおしまいだと思いました。希望なんてどこにもないのだと、涙が止まりませんでした。
 でも、ロゼリア様は違いました。あの方は、絶望の淵から、ご自身の力で立ち上がられたのです。そのお姿を一番近くで拝見できたことは、私の人生にとって、何よりの誇りです。土にまみれ、汗を流し、時には失敗しながらも、決して諦めなかったロゼリア様。そのお姿は、どんな宝石よりも気高く、美しく輝いて見えました。
 そんな激動の日々の中で、いつも私を守ってくださったのが、ゲオルグ様でした。私が村人に絡まれれば、その大きな背中で庇ってくれました。私が慣れない力仕事で転びそうになれば、無言で手を差し伸べてくれました。言葉は少ない方ですが、その行動の一つ一つに、あの方の優しさが滲み出ていました。
 いつしか、私の心の中には、ゲオルグ様への想いが芽生えていました。まさか、この気持ちが届くなんて思ってもみなかったのですが……。
 アグリア公国が建国され、平和が訪れたある日、ゲオルグ様が、不器用に、でも真っ直ぐな目で、私に花を差し出してくださったのです。「マリア殿。俺の、そばにいてほしい」と。涙が溢れて、返事をするのがやっとでした。
 そして今日。公国の小さな教会で、私たちはささやかな式を挙げました。立会人は、公王陛下となられたカイ様と、そして、私の最愛の主人であるロゼリア様。
 ウェディングドレスなんて、私にはもったいないと思っていたのに、ロゼリア様が「マリアの幸せな日だもの。一番綺麗でなくっちゃ」と言って、素晴らしいドレスを用意してくださいました。
 カイ様が「ゲオルグ、マリアを泣かせたら許さんぞ」と冗談めかして笑い、ゲオルグ様が真面目な顔で「生涯、命を懸けてお守りします」と誓う。
 ロゼリア様は、まるでご自身の妹の結婚式のように、瞳を潤ませて喜んでくださいました。
「マリア、本当におめでとう。あなたとゲオルグがいてくれたから、今の私があるのよ」
 そのお言葉だけで、私はもう、胸がいっぱいです。
 ロゼリア様、カイ様、そしてゲオルグ様。私の大切な人たちに見守られて、私は今、世界で一番の幸せ者です。この幸せを胸に、これからも、忠実な侍女として、そしてゲオルグ様の妻として、精一杯生きていこうと、心に誓いました。
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