ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています

黒崎隼人

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第三話「辺境の町と新たな一歩」

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 ダンジョンを脱出したアッシュは、【万物鑑定】を駆使して道中の薬草や鉱石を採取した。それらを麓の村で換金すると、瞬く間に大金が手に入った。もはや生活に困ることはない。
 彼はひとまず、王都から遠く離れた辺境の町を目指すことにした。かつての仲間たちと顔を合わせる気はまったくなかったし、静かな場所で今後のことを考えたかったからだ。
 数日後、アッシュは城壁に囲まれた穏やかな町「リンドウ」にたどり着く。活気はあるが、どこかのんびりとした空気が流れており、今の彼には心地よかった。
 まずは冒険者として再登録し、生活の基盤を築こう。そう考えたアッシュは、町の中心にある冒険者ギルドの扉を叩いた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。ご用件は?」
 カウンターの向こうから、鈴を転がすような声が聞こえた。そこに座っていたのは、亜麻色の髪を緩く結い、知的な眼鏡をかけた、息をのむほど美しい女性だった。胸元のネームプレートには『アナスタシア』と記されている。
「あの、身分証を失くしてしまって……。冒険者の再登録をお願いしたいのですが」
「再登録ですね。承知いたしました。では、こちらの用紙にご記入をお願いします」
 アナスタシアはにこやかに、しかしどこか事務的に書類を差し出した。彼女の仕草は洗練されており、ただの受付嬢とは思えない気品が漂っている。
 アッシュが名前や年齢を書き進めていくと、経歴の欄で手が止まった。元Sランクパーティ所属、などと書けば面倒なことになるのは目に見えている。
「どうかされましたか?」
 アナスタシアが不思議そうに首を傾げる。アッシュは正直に話すことにした。
「いえ……その、パーティを追放されまして。それで、どんな顔をして経歴を書けばいいのかと」
 彼は自嘲気味に苦笑いを浮かべた。普通なら同情されるか、あるいは侮られる場面だろう。しかし、アナスタシアの反応は違った。彼女は驚いたように少し目を見開いた後、ふっと優しい笑みを浮かべたのだ。
「そうですか。それは……大変でしたね。ですが、追放は終わりではありません。新しい始まりです」
 その言葉には、不思議な説得力があった。まるで彼女自身も、何かを経験してきたかのような深みが感じられる。
「ありがとうございます」
 アッシュが礼を言うと、アナスタシアは「でしたら、経歴の欄は『心機一転』とでも書いておきましょうか」と悪戯っぽく微笑んだ。
 彼女の気遣いに心が和む。この町に来てよかった、とアッシュは思った。
 登録を終えたアッシュに、アナスタシアは一枚の依頼書(クエストシート)を差し出した。
「もしよろしければ、こちらの依頼はいかがでしょう?町の近くの森で、回復薬の材料になる『セリナ草』を十本採取してくるだけの簡単な依頼です。今のあなたには、ちょうど良い肩慣らしになるかと」
 それは、駆け出しの冒険者が受けるような、ごく簡単なGランクの依頼だった。しかし、アッシュは素直にそれを受け取った。
「はい、ありがとうございます。受けてみます」
「ご武運を」
 アナスタシアに見送られ、アッシュはギルドを後にする。
 受付嬢の彼女を、何気なく【万物鑑定】してみる。

【名称】アナスタシア・フォン・エルロード
【身分】???
【状態】???
【情報】
 ▶高度な隠蔽魔法により、詳細な情報の閲覧が不可能。
 ▶しかし、その魂が持つ光は極めて高貴で、王族に匹敵するほどの気高さを秘めている。

「……王族に匹敵する?」
 ただの受付嬢ではないとは思っていたが、まさかここまでとは。アッシュは驚きつつも、今は目の前の依頼に集中することにした。
 どんな簡単な依頼でも、今の自分にとっては、新たな人生の確かな一歩なのだ。
 リンドウの町と、不思議な受付嬢アナスタシア。この場所が、これから自分の大切な居場所になっていく。そんな予感を胸に、アッシュは穏やかな陽光が差し込む森へと足を踏み入れた。
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