ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています

黒崎隼人

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第四話「森で出会ったエルフ」

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 リンドウの町を取り巻く「ささやきの森」は、穏やかな名前とは裏腹に、道に迷いやすいことで知られていた。しかし、アッシュにとっては何の問題もない。
「【鑑定】」
 足元の土を鑑定すれば、【情報:多くの冒険者が踏み固めた跡。ギルド推奨ルートはこちら】と表示される。木々を鑑定すれば、【隠された情報:この木の洞には眠り茸が群生。胞子を吸うと三時間は眠り込む】といった危険予知まで可能だ。
 目的のセリナ草も、鑑定を使えば一目瞭然だった。
「あ、あった。これで五本目か」
 他の冒険者が一日がかりで見つける量を、アッシュはわずか三十分ほどで集めてしまった。このスキルがあれば、薬草採取だけで大儲けできるかもしれないな、と彼は呑気に考える。
 依頼分はすぐに集め終え、ついでに高く売れそうな薬草も採取していた、その時だった。
 森の奥、木漏れ日が差し込む開けた場所で、誰かが倒れているのが見えた。
「誰かいるのか?」
 警戒しながら近づくと、そこにいたのは、長く尖った耳を持つ、美しいエルフの少女だった。銀糸のような髪は乱れ、額には脂汗が浮かんでいる。浅く速い呼吸を繰り返し、ひどく苦しそうだ。
 アッシュはすぐに駆け寄り、彼女の状態を【万物鑑定】した。

【名称】ルナリエル
【種族】エルフ
【状態】呪い(衰弱・中度)
【情報】
 ▶森の深奥で暮らすハイエルフの生き残り。
 ▶身に着けている首飾りの呪いにより、生命力が継続的に吸収されている。このままではあと半日も持たない。

「呪い……!?」
 アッシュは彼女の首元に目をやった。そこには、黒ずんだ銀細工の美しい首飾りがかけられている。一見するとただの装飾品だが、鑑定してみると恐ろしい情報が浮かび上がった。

【名称】嘆きの首飾り
【等級】呪物(アーティファクト)
【効果】装備者の生命力を徐々に奪い、魔力に変換して内部に蓄積する。
【隠された情報】
 ▶物理的に外すことは不可能。
 ▶【解除方法】:呪いを中和する『月光草の露』を三滴、首飾りの宝石部分に垂らす。

 解除方法までわかるのか!
 アッシュは息をのんだ。もはやこのスキルは、ただの情報閲覧ツールではない。万物の理を解き明かし、解決策まで提示する「世界の攻略本」そのものだ。
「待ってて、すぐに助けるから!」
 アッシュは苦しむエルフの少女に声をかけると、すぐさま周囲の探索を再開した。「月光草」を探すためだ。
【万物鑑定】を最大範囲で発動させると、脳内に森の植物の情報がマッピングされていく。
(あった!ここから北に二百メートル、大きな岩の影だ!)
 アッシュは全力で走り、目的の植物を見つけ出した。月の光を浴びて淡く輝くという月光草は、その名の通り、葉先に宝石のような露を溜めていた。慎重に三滴分の露を小さな葉で受け止めると、彼は急いで少女のもとへと引き返した。
「大丈夫、もう苦しまなくていい」
 アッシュは優しく語りかけながら、月光草の露を呪いの首飾りにそっと垂らした。
 一滴、二滴……そして、三滴目が宝石に触れた瞬間。
「カチャリ」
 小さな音と共に、今まで少女の肌に食い込むように巻き付いていた首飾りが、あっけなく地面に落下した。同時に、首飾りから黒い瘴気が霧のように立ち上り、消えていく。
「ん……ぅ……」
 少女の瞼が、かすかに震えた。ゆっくりと開かれた翠色の瞳が、心配そうに自分を覗き込むアッシュの顔を映す。
「……あなたは……?」
「気がついた?よかった。俺はアッシュ。森で倒れている君を見つけて……」
 状況を説明すると、少女は自分の首元に触れ、呪いの首飾りがなくなっていることに気づいた。そして、自分の身体に力が戻ってきていることを実感する。
「あなたが……私を助けてくださったのですね……」
 少女はゆっくりと身体を起こすと、アッシュに向かって深々と頭を下げた。
「私の名前はルナリエル。森の民エルフです。このご恩は、決して忘れません」
「気にしないで。困ってる人を助けるのは当然だろ」
 アッシュが照れ臭そうに言うと、ルナリエル――ルナは、じっと彼の顔を見つめた。
「いいえ、これは当然のことではありません。奇跡です。……アッシュ様、一つ、お願いがあります」
「お願い?」
「はい。命の恩人であるあなたのそばで、この身を捧げさせてください。私を、あなたの旅に同行させてはいただけませんか?」
 真剣な瞳で懇願され、アッシュは少し戸惑ったが、断る理由もなかった。何より、彼女の澄んだ瞳を見ていると、放っておけない気持ちになる。
「わかった。俺でよければ。これからよろしく、ルナ」
 アッシュが短く愛称で呼ぶと、ルナは花が咲くように微笑んだ。
「はい、アッシュ様!」
 こうして、追放された鑑定士の元に、一人目の心強い仲間が加わったのだった。
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