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第10話「逆転の激辛スパイス」
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料理が完成し、審査の時間となった。
まずは黄金商会の『特選牛の赤ワイン煮込み』だ。
審査員たちは一口食べ、大袈裟に頷いた。
「うむ、肉が柔らかい! パンとの相性も抜群だ」
「文句なしの満点だな」
買収された三人が早々に高得点をつける。予定調和だ。ベルナールだけが「悪くはないが、ありきたりだ」と渋い顔をしている。
次はいよいよ、俺たちの番だ。
皿に盛られたのは、挽肉と豆がたっぷりと入った、真っ赤なソース。横には、俺のスキルで焼いた(火力が弱いなら、パン種自体が発酵熱で温まるようにスキルで調整した)ふわふわの白パンが添えられている。
「『炎のキーマ・チリ』です。パンにつけてどうぞ」
審査員たちは恐る恐るスプーンを伸ばした。
買収された商人の一人が、あからさまに嫌そうな顔で口に運ぶ。
「どうせ辛いだけで……んぐっ!?」
彼の目が飛び出した。
辛い。確かに辛い。だが、その直後に押し寄せる圧倒的な肉の旨味と、トマトの甘み、そして複雑なスパイスの香り。
汗が吹き出る。喉が焼ける。
だが、手が止まらない。
「な、なんだこれは! 辛いのに、やめられない!」
「パンだ! パンをくれ! ソースが絡んで最高に美味い!」
彼らは我を忘れてパンをちぎり、ソースを拭って食べ始めた。
買収されていたはずの商人たちが、ガルドの存在を忘れて貪り食っている。
ベルナールは一口食べて、目をつぶって天を仰いだ。
「……素晴らしい。パンという淡白な主食を、ここまで引き立てるおかずがあったとは。辛みで食欲を刺激し、パンの甘みを際立たせている」
観客たちも、その様子を見て騒ぎ出した。
「おい、あの審査員たち、皿まで舐める勢いだぞ」
「どんだけ美味いんだよ!」
結果発表。
黄金商会の得点は、買収組の満点を入れても伸び悩んだ。
銀の葉商会の得点は――全員一致の満点。
買収された審査員たちも、本能には逆らえなかったのだ。あるいは、あまりの美味さに自分の役割を忘れてしまったのかもしれない。
「バカな……! 金は払ったはずだぞ!」
ガルドが小声で叫ぶ声が、マイクを通して広場に響いてしまった。
会場が静まり返る。
「え? 今、金って言ったか?」
「やっぱり八百長だったのか!」
観客たちからのブーイングの嵐。
そこへ、ベルナールが冷ややかに告げた。
「不正があったようだな。この件は王宮に報告させてもらう。黄金商会には、厳正なる処分が下るだろう」
ガルドは顔面蒼白になり、その場に崩れ落ちた。
完全なる自滅。ざまぁみろ、という言葉すら生ぬるい。
俺はリリアナとテオの方を向いた。
リリアナは涙を流して喜んでいる。テオはガッツポーズをしている。
「勝ちましたね、カイさん!」
「ああ。パンに合うおかずでも、俺たちの勝ちだ」
だが、俺は心の中で付け加えた。
実はこのキーマ・チリ、ご飯にかけても最高に美味いんだよな。
こうして、俺たちは名実ともにこの街一番の商会へと成り上がったのだった。
まずは黄金商会の『特選牛の赤ワイン煮込み』だ。
審査員たちは一口食べ、大袈裟に頷いた。
「うむ、肉が柔らかい! パンとの相性も抜群だ」
「文句なしの満点だな」
買収された三人が早々に高得点をつける。予定調和だ。ベルナールだけが「悪くはないが、ありきたりだ」と渋い顔をしている。
次はいよいよ、俺たちの番だ。
皿に盛られたのは、挽肉と豆がたっぷりと入った、真っ赤なソース。横には、俺のスキルで焼いた(火力が弱いなら、パン種自体が発酵熱で温まるようにスキルで調整した)ふわふわの白パンが添えられている。
「『炎のキーマ・チリ』です。パンにつけてどうぞ」
審査員たちは恐る恐るスプーンを伸ばした。
買収された商人の一人が、あからさまに嫌そうな顔で口に運ぶ。
「どうせ辛いだけで……んぐっ!?」
彼の目が飛び出した。
辛い。確かに辛い。だが、その直後に押し寄せる圧倒的な肉の旨味と、トマトの甘み、そして複雑なスパイスの香り。
汗が吹き出る。喉が焼ける。
だが、手が止まらない。
「な、なんだこれは! 辛いのに、やめられない!」
「パンだ! パンをくれ! ソースが絡んで最高に美味い!」
彼らは我を忘れてパンをちぎり、ソースを拭って食べ始めた。
買収されていたはずの商人たちが、ガルドの存在を忘れて貪り食っている。
ベルナールは一口食べて、目をつぶって天を仰いだ。
「……素晴らしい。パンという淡白な主食を、ここまで引き立てるおかずがあったとは。辛みで食欲を刺激し、パンの甘みを際立たせている」
観客たちも、その様子を見て騒ぎ出した。
「おい、あの審査員たち、皿まで舐める勢いだぞ」
「どんだけ美味いんだよ!」
結果発表。
黄金商会の得点は、買収組の満点を入れても伸び悩んだ。
銀の葉商会の得点は――全員一致の満点。
買収された審査員たちも、本能には逆らえなかったのだ。あるいは、あまりの美味さに自分の役割を忘れてしまったのかもしれない。
「バカな……! 金は払ったはずだぞ!」
ガルドが小声で叫ぶ声が、マイクを通して広場に響いてしまった。
会場が静まり返る。
「え? 今、金って言ったか?」
「やっぱり八百長だったのか!」
観客たちからのブーイングの嵐。
そこへ、ベルナールが冷ややかに告げた。
「不正があったようだな。この件は王宮に報告させてもらう。黄金商会には、厳正なる処分が下るだろう」
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完全なる自滅。ざまぁみろ、という言葉すら生ぬるい。
俺はリリアナとテオの方を向いた。
リリアナは涙を流して喜んでいる。テオはガッツポーズをしている。
「勝ちましたね、カイさん!」
「ああ。パンに合うおかずでも、俺たちの勝ちだ」
だが、俺は心の中で付け加えた。
実はこのキーマ・チリ、ご飯にかけても最高に美味いんだよな。
こうして、俺たちは名実ともにこの街一番の商会へと成り上がったのだった。
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