【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人

文字の大きさ
13 / 16

第12話「世界を救うのは、聖剣ではなく特大カボチャです」

しおりを挟む
 そんな平穏な日々を打ち砕くような事件が起きたのは、冬の足音が聞こえ始めた頃だった。

 空が急に暗くなり、腐ったような風が吹き荒れた。
 北の空に、山脈ほどもある巨大な影が現れたのだ。

「あれは……伝説の『腐食竜(ブライト・ドラゴン)』!?」

 シルヴィアが絶叫する。
 通過した土地の生命力を吸い尽くし、死の荒野に変える最悪の古竜。
 それが、生命力に満ち溢れたこの農園の匂いを嗅ぎつけ、一直線に向かってきているのだ。

「グオオオオオオ!!」

 竜の咆哮だけで、周囲の岩が砕け散る。
 ゴードンたちが武器を構えるが、顔は青ざめている。
 物理攻撃も魔法も通じにくい、厄介極まりない相手だ。

「どうする……? せっかく作った畑が、全部枯らされちまう!」

 みんなの顔に絶望が浮かぶ。
 でも、僕は不思議と落ち着いていた。
 竜の体が「灰色」に見えたからだ。
 あれは、ただ暴れているんじゃない。お腹が空いて、栄養失調で苦しんでいる色だ。
 生命力を奪うのは、自分が生きるために必死だからだ。

「だったら、腹いっぱい食わせてやればいい」

 僕は一番大きな畑に向かって走った。
 そこには、僕が丹精込めて育て上げた、品評会用の「超特大カボチャ」がある。
 直径五メートル。中には凝縮されたマナと栄養が詰まっている、最高傑作だ。

「フェン! 力を貸してくれ!」

「ガウッ!」

 フェンが本来の姿である巨狼に戻る。
 僕はその背中に飛び乗り、カボチャを蔦(つた)で縛って持ち上げた。
 重さは数トンあるはずだが、今の僕の筋力(農作業でカンスト済み)なら持てる!

「いくぞ、フェン! 空へ!」

 フェンが空を駆け上がる。
 迫り来る腐食竜の目の前まで一気に肉薄する。
 竜が大きく口を開けた。腐敗のブレスを吐くつもりだ。

「食らええええええッ!! 特製・栄養満点カボチャだッ!!」

 僕は全身全霊の力を込め、竜の口の中にカボチャをシュートした。

 ズボッ!!!

 カボチャは見事に竜の喉の奥へと吸い込まれた。
 直後、竜の動きが止まった。

 ゴクン。

 竜がそれを飲み込んだ瞬間。
 カッッッ!!!
 竜の体の内側から、黄金色の光が溢れ出した。
 カボチャの中で圧縮されていた【土壌改良】と【生命活性】のエネルギーが、竜の体内で爆発したのだ。

 灰色だった竜の鱗が、見る見るうちに輝くエメラルドグリーンに変わっていく。
 腐臭が消え、代わりに花の香りが漂い始めた。
 枯れ木のような翼に、瑞々しい力が戻っていく。

「グ、グルルル……(美味い……! 力が、満ちる……!)」

 竜の瞳から凶暴な色が消え、至福の表情へと変わった。
 どうやら、満腹になって正気に戻ったらしい。

「満足したかー!?」

 僕が叫ぶと、竜はゆっくりと頷き、空に向かって感謝の咆哮を上げた。
 その息吹は、通過した土地に花を咲かせる「生命の息吹」へと変わっていた。

 世界を滅ぼす竜を、カボチャ一個で浄化してしまった。
 地上では、仲間たちが口をあんぐりと開けて空を見上げていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

「洗い場のシミ落とし」と追放された元宮廷魔術師。辺境で洗濯屋を開いたら、聖なる浄化の力に目覚め、呪いも穢れも洗い流して成り上がる

黒崎隼人
ファンタジー
「銀閃」と謳われたエリート魔術師、アルク・レンフィールド。彼は五年前、国家の最重要儀式で犯した一つの失敗により、全てを失った。誇りを砕かれ、「洗い場のシミ落とし」と嘲笑された彼は、王都を追われ辺境の村でひっそりと洗濯屋を営む。 過去の「恥」に心を閉ざし、ひまわり畑を眺めるだけの日々。そんな彼の前に現れたのは、体に呪いの痣を持つ少女ヒマリ。彼女の「恥」に触れた時、アルクの中に眠る失われたはずの力が目覚める。それは、あらゆる汚れ、呪い、穢れさえも洗い流す奇跡の力――「聖濯術」。 これは、一度は全てを失った男が、一枚の洗濯物から人々の心に染みついた悲しみを洗い流し、自らの「恥」をも乗り越えていく、ささやかで温かい再生の物語。ひまわりの咲く丘で、世界で一番優しい洗濯が、今始まる。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される

黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」 無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!? 自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。 窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!

婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

処理中です...