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第11話「黒き魔物と偽りの聖女」
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氷雪竜フェンリルの背に乗り、アナベルとレオニールは王都上空に到達した。
眼下に広がる光景は、まさに地獄絵図だった。
美しい白亜の街並みは黒い泥に飲み込まれ、崩れた建物の瓦礫が散乱している。王城の中庭には、ヘドロの塊のような不定形の巨人がそびえ立ち、触手を振り回して周囲を破壊していた。
「あれが……聖女が呼び出したものか」
レオニールが苦々しくつぶやく。魔物からは強烈な瘴気が発せられており、上空にまで腐臭が漂ってくる。
王城のバルコニーには、ラインハルトとセレスティアがへたり込んでいた。セレスティアは半狂乱になりながら杖を振り回している。
「止まりなさいよ! 私の言うことを聞きなさい! 私は聖女なのよ!」
だが魔物は彼女の声など無視し、巨大な腕をバルコニーへ振り下ろそうとした。
「フェンリル、降下だ! 氷結ブレス!」
レオニールの号令と共に、竜が急降下し、青白い極低温の息吹を魔物に浴びせかける。魔物の腕が瞬時に凍りつき、粉々に砕け散った。
間一髪で助かったラインハルトたちは、空を見上げる。
「あ、あれは……レオニール!?」
フェンリルが中庭に着地すると、その衝撃で周囲の泥が吹き飛ぶ。レオニールは剣を抜き、アナベルを背中に庇いながら降り立った。
「お、遅いぞ! 何をしていた!」
ラインハルトが震えながら虚勢を張る。
「早くその化け物を倒せ! それとアナベル、貴様もだ! その身を捧げて魔物を鎮めるのだ!」
「黙れ」
レオニールの一喝が響く。
「助けに来たのはお前たちのためではない。この国に生きる罪なき民のためだ。勘違いするな」
その時、魔物が再生を始めた。砕けた腕が泥で再構成され、さらに巨大化していく。物理的な攻撃は効かないようだ。瘴気の塊そのものである魔物には、聖なる浄化の力しか通用しない。
「いやぁぁぁ! 来ないで!」
セレスティアが悲鳴を上げる。彼女の手元にあった古代の魔道具は、魔力の暴走によって砕け散っていた。もはや彼女には何の力もない。ただの少女に戻り、醜く顔を歪めて逃げ惑うのみ。
「グオォォォッ!」
魔物が雄叫びを上げ、無数の泥の槍を放つ。
レオニールが剣で弾き、フェンリルが氷壁を作って防ぐが、数が多すぎる。
「レオニール様!」
「下がるんだ、アナベル! くそっ、きりがない!」
瘴気は濃くなり、レオニールの動きを鈍らせていく。かつて彼を蝕んでいた呪いと同じ波長の瘴気だ。それが再び彼の体を侵食し始めようとしていた。
苦悶の表情を浮かべるレオニールを見て、アナベルは悟った。
剣や氷では勝てない。今こそ、自分の力を使う時だと。
「私が……やります」
アナベルはレオニールの背中から離れ、一歩前へと踏み出した。
「馬鹿な! 危険だ!」
「大丈夫です。私には、あなたの愛がありますから」
アナベルはドレスの胸元を握りしめ、目を閉じた。自分の中にある、熱い奔流を感じる。
幼い頃から疎まれてきたこの力。けれど今は、愛する人を守るための、何よりも誇らしい力。
『開放……!』
アナベルが目を見開いた瞬間、世界が銀色に染まった。
眼下に広がる光景は、まさに地獄絵図だった。
美しい白亜の街並みは黒い泥に飲み込まれ、崩れた建物の瓦礫が散乱している。王城の中庭には、ヘドロの塊のような不定形の巨人がそびえ立ち、触手を振り回して周囲を破壊していた。
「あれが……聖女が呼び出したものか」
レオニールが苦々しくつぶやく。魔物からは強烈な瘴気が発せられており、上空にまで腐臭が漂ってくる。
王城のバルコニーには、ラインハルトとセレスティアがへたり込んでいた。セレスティアは半狂乱になりながら杖を振り回している。
「止まりなさいよ! 私の言うことを聞きなさい! 私は聖女なのよ!」
だが魔物は彼女の声など無視し、巨大な腕をバルコニーへ振り下ろそうとした。
「フェンリル、降下だ! 氷結ブレス!」
レオニールの号令と共に、竜が急降下し、青白い極低温の息吹を魔物に浴びせかける。魔物の腕が瞬時に凍りつき、粉々に砕け散った。
間一髪で助かったラインハルトたちは、空を見上げる。
「あ、あれは……レオニール!?」
フェンリルが中庭に着地すると、その衝撃で周囲の泥が吹き飛ぶ。レオニールは剣を抜き、アナベルを背中に庇いながら降り立った。
「お、遅いぞ! 何をしていた!」
ラインハルトが震えながら虚勢を張る。
「早くその化け物を倒せ! それとアナベル、貴様もだ! その身を捧げて魔物を鎮めるのだ!」
「黙れ」
レオニールの一喝が響く。
「助けに来たのはお前たちのためではない。この国に生きる罪なき民のためだ。勘違いするな」
その時、魔物が再生を始めた。砕けた腕が泥で再構成され、さらに巨大化していく。物理的な攻撃は効かないようだ。瘴気の塊そのものである魔物には、聖なる浄化の力しか通用しない。
「いやぁぁぁ! 来ないで!」
セレスティアが悲鳴を上げる。彼女の手元にあった古代の魔道具は、魔力の暴走によって砕け散っていた。もはや彼女には何の力もない。ただの少女に戻り、醜く顔を歪めて逃げ惑うのみ。
「グオォォォッ!」
魔物が雄叫びを上げ、無数の泥の槍を放つ。
レオニールが剣で弾き、フェンリルが氷壁を作って防ぐが、数が多すぎる。
「レオニール様!」
「下がるんだ、アナベル! くそっ、きりがない!」
瘴気は濃くなり、レオニールの動きを鈍らせていく。かつて彼を蝕んでいた呪いと同じ波長の瘴気だ。それが再び彼の体を侵食し始めようとしていた。
苦悶の表情を浮かべるレオニールを見て、アナベルは悟った。
剣や氷では勝てない。今こそ、自分の力を使う時だと。
「私が……やります」
アナベルはレオニールの背中から離れ、一歩前へと踏み出した。
「馬鹿な! 危険だ!」
「大丈夫です。私には、あなたの愛がありますから」
アナベルはドレスの胸元を握りしめ、目を閉じた。自分の中にある、熱い奔流を感じる。
幼い頃から疎まれてきたこの力。けれど今は、愛する人を守るための、何よりも誇らしい力。
『開放……!』
アナベルが目を見開いた瞬間、世界が銀色に染まった。
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