地味で無能な聖女だと婚約破棄されました。でも本当は【超過浄化】スキル持ちだったので、辺境で騎士団長様と幸せになります。ざまぁはこれからです。

番外編2：残された者たちの末路

　リナに拒絶され、絶望と共に帰国したアランを待っていたのは、完全な破滅だった。
　「辺境の聖女」の噂は、アランが辺境から戻るより先に王都に届いていた。彼が追放したリナこそが本物の聖女であり、その奇跡の力をみすみす手放した愚かな王子。その事実は、もはや隠しようもなかった。
　民衆の怒りは爆発した。王宮の門には、アランとエマを糾弾する人々が押し寄せ、「偽の聖女を差し出せ！」「愚かな王子を退けろ！」という声が昼夜を問わず響き渡った。
　国王は、国の崩壊を避けるため、苦渋の決断を下した。アランは全ての王位継承権を剥奪され、王宮の北の塔に幽閉されることとなった。彼は毎日、リナが治める豊かになった辺境の方角を眺めながら、「すまなかった」と虚ろに呟き続けるだけの、抜け殻になったという。

　一方、エマの末路はさらに悲惨だった。
　姉を陥れ、国を欺いた罪は重い。彼女は「偽りの聖女」として民衆の前に引きずり出され、容赦なく石や泥を投げつけられた。天使のような可憐だった面影は、憎悪と恐怖に歪みきっていた。
「私が悪いのじゃない！　あのお姉様が、私を騙したのよ！」
　最後まで見苦しい嘘を叫び続けたが、もはや誰も彼女の言葉を信じなかった。彼女は罪を償うため、国で最も戒律が厳しく、貧しい「懺悔の修道院」へと送致された。贅沢な暮らしも、ちやほやしてくれる取り巻きもいない場所で、彼女は一生、自らの罪と向き合い続けることになった。

　リナを失った王国は、エルドラード王国に多大な援助と賠償金を支払うことで、属国に近い形でかろうじて存続を許された。それは、かつての大国にとって、最大の屈辱であった。
　自分たちが捨てた幸福が、隣で輝かしく咲き誇るのを、ただ指をくわえて見続ける。それが、愚かな選択をした者たちに与えられた、永遠の罰だった。