「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした

黒崎隼人

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第2話「覚醒した世界の見え方」

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 未知の通路に降り立った俺は、まず周囲を警戒した。
 ひんやりとした空気が漂い、壁から水滴が滴り落ちる音が反響している。

 脳内に展開されたマップと現実の光景を照らし合わせる。寸分の狂いもない。

『すごい……本当に見たままの世界が地図になるのか』

 マップ上には俺の位置を示す青い点と、少し先に進んだ通路の曲がり角の向こう側に赤い点が二つ表示されている。魔物だ。

 これまでは仲間の後ろで怯えていることしかできなかった。だが今の俺には敵の位置が正確に分かっている。

 そっと息を殺し、壁際に身を寄せて角の向こうをのぞき込む。
 そこにいたのは二匹のゴブリン。棍棒を手に何かを言い争っているようだった。

『ゴブリン二匹なら……』

 俺の戦闘能力は一般人以下だ。まともに戦えばまず勝てない。
 だが戦う必要はない。

 俺はゴブリンたちから少し離れた通路の奥に『マーキング』を行う。

『マーキング・テレポート』

 視界が切り替わる。俺はゴブリンたちに気づかれることなく、彼らの背後を通り抜けることに成功した。

 これが【絶対領域把握】の戦い方。敵を察知し戦闘を回避する。これほど俺に向いている戦い方はないだろう。

『まさに、地図製作者のためのスキルだ』

 危険を避けながら俺はマップが示す黄色い点――宝箱の反応がある場所へと向かった。
 そこは一見すると、ただの行き止まりの壁だった。しかしマップは壁の向こうに隠された小部屋があると示している。

 壁を注意深く調べてみると、わずかに輪郭の違う部分があった。隠し扉だ。

 力を込めて押してみると、ゴゴゴ……と重い音を立てて壁が内側へと開いた。
 これまでのパーティーでは盗賊のジンが『罠探知』や『隠し扉発見』のスキルでこういうのを見つけていた。でも今の俺にはそんなものは必要ない。

 小部屋の中はひどく埃っぽく、中央にぽつんと古びた木箱が置かれていた。
 罠がないことをマップで確認し、慎重に蓋を開ける。

「おお……!」

 思わず声が漏れた。
 箱の中には銀色に輝く短剣と、ずっしりと重い金貨袋が入っていた。

 短剣には風の魔力が込められているようで、握ると身体が軽くなるのを感じる。俊敏性が上がるエンチャント武器だ。金貨も百枚は下らないだろう。

 これまでパーティーで得た報酬をすべて合わせても、こんな大金は手にしたことがなかった。

『追放されて、むしろ運が向いてきたんじゃないか?』

 皮肉なものだ。アルドたちといたらこの宝を見つけることは永遠になかっただろう。

 短剣を腰に差し金貨袋を懐にしまう。
 心なしか足取りも軽い。

 その後も俺はスキルを駆使し、次々とダンジョン内の隠されたアイテムを発見していった。
 希少な薬草、高価な魔石、さらには魔法が封じられた巻物まで。

 誰も足を踏み入れなかった未踏破エリアは、まさにお宝の山だったのだ。
 俺のアイテムポーチはあっという間にパンパンになった。

『それにしてもこのスキル……応用範囲が広すぎる』

 例えば俺は今、ダンジョンの入り口に『マーキング』してある。つまり何かあっても一瞬で地上に脱出できるわけだ。この安心感は計り知れない。

 さらに『リモート・ビューイング』を使えば、マーキングした地点の様子を遠隔で見ることができる。

 試しにダンジョンの入り口の様子を見てみる。
 脳内にダンジョン入り口の光景がリアルタイムで映し出された。まるでそこにいるかのように鮮明だ。冒険者たちが数人、準備をしているのが見える。

『これなら、偵察も思いのままだな』

 ふと、アルドたちのことが気になった。
 俺が最後に彼らを見た場所、モンスターの巣の手前にマーキングはしていない。だが俺が通ってきたルートを辿れば、彼らがどうなったか分かるかもしれない。

 俺は自分が通ってきた道にいくつかマーキングをし、『リモート・ビューイング』で順番に様子を覗いていった。

 するとある通路で、見覚えのある装備が転がっているのを見つけた。
 盗賊ジンの革鎧だ。引き裂かれ血に濡れている。
 その近くには僧侶マルクの錫杖が折れて落ちていた。

『……まさか』

 嫌な予感が背筋を走る。
 さらに探索を進めると広間のような場所で、惨劇の跡を見つけた。

 おびただしい数のオークの死骸。そしてその中心でボロボロになって倒れている魔法使いのセーラと、片腕を失いながらも必死に剣を振るうアルドの姿が遠目に見えた。

 彼らは俺がマップで確認したモンスターの巣に、真正面から突っ込んでしまったのだ。

『助ける……?いや、俺が行っても何もできない』

 俺にできるのはせいぜい彼らを安全な場所へ転移させることくらいだ。だがそのために危険を冒す義理はない。彼らは俺を捨てたのだから。

 それに彼らを転移させたとして、この怪我ではどのみち助からないだろう。
 俺は静かに『リモート・ビューイング』を解除した。

 後味の悪さは残る。だがこれが冒険者の世界だ。自分の選択が、生死を分ける。
 彼らは俺を切り捨てる選択をし、その結果破滅した。

 俺は、生きることを選択する。この新しい力と共に。

『まずは地上に戻ってこのアイテムを換金しよう』

 今日の稼ぎだけでも、しばらくは宿に泊まって贅沢な暮らしができるはずだ。
 俺はダンジョンの入り口にマーキングしたポイントへテレポートした。

 一瞬で視界が切り替わり、洞窟の薄闇から眩しい太陽の光が降り注ぐ世界へと躍り出た。
 新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。

『自由だ……』

 誰に指図されることもない。誰の顔色をうかがう必要もない。
 俺は俺の力で、生きていける。

 その実感が腹の底から湧き上がってきた。
 新しい人生の始まりだ。俺はまだ知らない。この力が俺をどこまで連れて行ってくれるのか。

 ただ確かな期待感を胸に、俺はダンジョンを背にして歩き出した。
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