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第7話「大都市アークライトへの道」
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大都市アークライトへの道のりは、決して楽なものではなかった。
俺たちが護衛するのは熟練の商人であるゼノンさんが率いる、五台の馬車で構成されたキャラバンだ。
絹織物や香辛料など高価な商品を積んでいるため、道中は盗賊や魔物に狙われやすい。
「レイン殿、リリア嬢、バルガス殿。この旅、よろしくお願いする」
人の良さそうな笑顔を浮かべるゼノンさんだが、その目には商人らしい抜け目のなさが光っている。
俺たちのパーティー『フロンティア』は結成したばかりで実績はゼロ。そんな俺たちを破格の報酬で雇ってくれたのには、何か裏があるのかもしれない。
『まあ、やることは変わらない。依頼を完璧にこなすだけだ』
俺はバルガスに作ってもらった『道標の守護印(ガーディアン・コンパス)』を構える。
スキルを発動させると、周囲数十キロの地形が脳内マップに詳細に表示された。
「すごい……街道から外れた獣道や、森の中にある泉の位置まで分かる……」
以前とは比べ物にならない情報量だ。
そしてマップ上には街道の先、山賊が根城にしていそうな岩陰に十数個の赤い点が表示されていた。
「ゼノンさん。この先の峠道に盗賊のアジトがあります。数は十五。回り道をした方が安全です」
「なんと!レイン殿には盗賊の居場所まで分かるのか!」
ゼノンさんは心底驚いた様子だ。
俺の指示でキャラバンは安全な迂回路を進む。
おかげで俺たちは一度も盗賊に遭遇することなく、危険な峠を越えることができた。
「素晴らしい!レイン殿の索敵能力は、まるで予知能力のようだ!」
ゼノンさんは手放しで俺を褒めてくれる。
リリアとバルガスもどこか誇らしげだ。
旅は順調に進んだ。
夜、野営の準備をしているとリリアが興奮した様子で俺に話しかけてきた。
「レインさん!アークライトってどんな街なんですか?」
「大陸一の大都市だって聞くな。世界中の珍しいものが集まる、活気のある場所らしい」
「わあ……!行ってみたいお店とか、たくさんあるんだろうなあ」
目をキラキラさせるリリア。彼女はずっと森の奥で暮らしていたから、大きな街に行くのは初めてなのだろう。
「バルガスさんは、アークライトに行ったことは?」
俺が尋ねると焚き火で肉を焼いていたバルガスが、ぶっきらぼうに答えた。
「ああ、昔な。鍛冶師のコンテストやらで何度か行ったことがある。まあ、いい思い出はねえがな」
そう言う彼の横顔は少しだけ寂しそうだった。
彼が失った誇りを取り戻す場所も、もしかしたらアークライトにあるのかもしれない。
旅の四日目のことだった。
平原を抜けていた俺たちの前に、巨大な影が立ちはだかった。
「グリフォンだ……!」
護衛の傭兵の一人が悲鳴のような声を上げた。
獅子の身体に鷲の頭と翼を持つAランクの魔物。
空を高速で飛び回り、鋭いくちばしと爪で獲物を引き裂く空の王者だ。
普通の冒険者パーティーなら遭遇した時点で全滅を覚悟する相手。
キャラバンに緊張が走る。馬たちは怯えて嘶き、商人たちは顔面蒼白だ。
「レイン、どうする!?」
「レインさん!」
バルガスとリリアが俺を見る。
俺は冷静にマップを確認する。グリフォンの弱点は風魔法に弱いこと、そして翼を傷つけられると飛べなくなることだ。
『リリアの魔法では素早いグリフォンを捉えるのは難しい。バルガスさんの斧も空を飛ばれたら届かない……』
だが俺たちには勝機がある。
俺は即座に指示を出した。
「バルガスさんは馬車を守ってくれ!絶対にグリフォンを近づけるな!」
「おう、任せろ!」
「リリアは俺の隣に!俺が合図をしたら詠唱を始めてくれ!」
「はい!」
俺とリリアは馬車から少し離れた場所へ走る。
グリフォンは俺たち二人を格好の獲物と判断したのか、甲高い叫び声を上げて急降下してきた。
風を切る音がすぐそこまで迫る。
リリアがごくりと唾をのむのが分かった。
「まだだ……まだ引きつけろ……!」
俺は脳内マップでグリフォンの動きを完全に捉えている。
速度、角度、降下予測地点。そのすべてが手に取るように分かる。
そしてグリフォンの爪が俺たちの頭上数メートルまで迫った、その瞬間。
「リリア、今だ!座標、真上!全力で!」
「はい!――天よ来たれ、裁きの雷!極大雷槍(ギガ・サンダー)!」
リリアが構えた『天雷の紡ぎ手』から極大の雷が放たれる。
それは回避行動を取ろうとしていたグリフォンの、まさに死角から突き刺さった。
「ギィヤアアアアアア!!」
悲鳴を上げ黒煙を吹きながらグリフォンが墜落する。
だがまだ息はある。
翼を傷つけられ地面をのたうち回っていた。
「バルガス!」
「言われなくとも!」
俺の合図より早くバルガスが地を蹴っていた。
墜落したグリフォンに向かって猛然とダッシュし、その巨大な戦斧を振りかぶる。
「これで、終わりだぁっ!」
振り下ろされた一撃がグリフォンの首を断ち割った。
空の王者は声もなく絶命した。
静寂が戻る。
商人たちも護衛の傭兵たちも、何が起こったのか分からないといった顔で俺たちを呆然と見ていた。
やがて誰からともなく拍手が沸き起こった。
それはすぐに熱狂的な歓声へと変わった。
「す、すげえ……Aランクモンスターをたった三人で……」
「あのパーティー、何者なんだ……!」
ゼノンさんが満面の笑みで駆け寄ってくる。
「素晴らしい!実に見事な連携でした!あなた方に依頼して本当によかった!」
こうして俺たちは最大の危機を乗り越え、ついに大都市アークライトの城門へとたどり着いた。
高くそびえる城壁、活気に満ちた人々の声、様々な匂い。
そのすべてが俺たちを歓迎してくれているようだった。
「ここが、アークライト……」
リリアが感嘆の声を漏らす。
俺たちの新たな冒険がこの街から始まる。
胸の高鳴りを抑えきれずに、俺は固く拳を握りしめた。
俺たちが護衛するのは熟練の商人であるゼノンさんが率いる、五台の馬車で構成されたキャラバンだ。
絹織物や香辛料など高価な商品を積んでいるため、道中は盗賊や魔物に狙われやすい。
「レイン殿、リリア嬢、バルガス殿。この旅、よろしくお願いする」
人の良さそうな笑顔を浮かべるゼノンさんだが、その目には商人らしい抜け目のなさが光っている。
俺たちのパーティー『フロンティア』は結成したばかりで実績はゼロ。そんな俺たちを破格の報酬で雇ってくれたのには、何か裏があるのかもしれない。
『まあ、やることは変わらない。依頼を完璧にこなすだけだ』
俺はバルガスに作ってもらった『道標の守護印(ガーディアン・コンパス)』を構える。
スキルを発動させると、周囲数十キロの地形が脳内マップに詳細に表示された。
「すごい……街道から外れた獣道や、森の中にある泉の位置まで分かる……」
以前とは比べ物にならない情報量だ。
そしてマップ上には街道の先、山賊が根城にしていそうな岩陰に十数個の赤い点が表示されていた。
「ゼノンさん。この先の峠道に盗賊のアジトがあります。数は十五。回り道をした方が安全です」
「なんと!レイン殿には盗賊の居場所まで分かるのか!」
ゼノンさんは心底驚いた様子だ。
俺の指示でキャラバンは安全な迂回路を進む。
おかげで俺たちは一度も盗賊に遭遇することなく、危険な峠を越えることができた。
「素晴らしい!レイン殿の索敵能力は、まるで予知能力のようだ!」
ゼノンさんは手放しで俺を褒めてくれる。
リリアとバルガスもどこか誇らしげだ。
旅は順調に進んだ。
夜、野営の準備をしているとリリアが興奮した様子で俺に話しかけてきた。
「レインさん!アークライトってどんな街なんですか?」
「大陸一の大都市だって聞くな。世界中の珍しいものが集まる、活気のある場所らしい」
「わあ……!行ってみたいお店とか、たくさんあるんだろうなあ」
目をキラキラさせるリリア。彼女はずっと森の奥で暮らしていたから、大きな街に行くのは初めてなのだろう。
「バルガスさんは、アークライトに行ったことは?」
俺が尋ねると焚き火で肉を焼いていたバルガスが、ぶっきらぼうに答えた。
「ああ、昔な。鍛冶師のコンテストやらで何度か行ったことがある。まあ、いい思い出はねえがな」
そう言う彼の横顔は少しだけ寂しそうだった。
彼が失った誇りを取り戻す場所も、もしかしたらアークライトにあるのかもしれない。
旅の四日目のことだった。
平原を抜けていた俺たちの前に、巨大な影が立ちはだかった。
「グリフォンだ……!」
護衛の傭兵の一人が悲鳴のような声を上げた。
獅子の身体に鷲の頭と翼を持つAランクの魔物。
空を高速で飛び回り、鋭いくちばしと爪で獲物を引き裂く空の王者だ。
普通の冒険者パーティーなら遭遇した時点で全滅を覚悟する相手。
キャラバンに緊張が走る。馬たちは怯えて嘶き、商人たちは顔面蒼白だ。
「レイン、どうする!?」
「レインさん!」
バルガスとリリアが俺を見る。
俺は冷静にマップを確認する。グリフォンの弱点は風魔法に弱いこと、そして翼を傷つけられると飛べなくなることだ。
『リリアの魔法では素早いグリフォンを捉えるのは難しい。バルガスさんの斧も空を飛ばれたら届かない……』
だが俺たちには勝機がある。
俺は即座に指示を出した。
「バルガスさんは馬車を守ってくれ!絶対にグリフォンを近づけるな!」
「おう、任せろ!」
「リリアは俺の隣に!俺が合図をしたら詠唱を始めてくれ!」
「はい!」
俺とリリアは馬車から少し離れた場所へ走る。
グリフォンは俺たち二人を格好の獲物と判断したのか、甲高い叫び声を上げて急降下してきた。
風を切る音がすぐそこまで迫る。
リリアがごくりと唾をのむのが分かった。
「まだだ……まだ引きつけろ……!」
俺は脳内マップでグリフォンの動きを完全に捉えている。
速度、角度、降下予測地点。そのすべてが手に取るように分かる。
そしてグリフォンの爪が俺たちの頭上数メートルまで迫った、その瞬間。
「リリア、今だ!座標、真上!全力で!」
「はい!――天よ来たれ、裁きの雷!極大雷槍(ギガ・サンダー)!」
リリアが構えた『天雷の紡ぎ手』から極大の雷が放たれる。
それは回避行動を取ろうとしていたグリフォンの、まさに死角から突き刺さった。
「ギィヤアアアアアア!!」
悲鳴を上げ黒煙を吹きながらグリフォンが墜落する。
だがまだ息はある。
翼を傷つけられ地面をのたうち回っていた。
「バルガス!」
「言われなくとも!」
俺の合図より早くバルガスが地を蹴っていた。
墜落したグリフォンに向かって猛然とダッシュし、その巨大な戦斧を振りかぶる。
「これで、終わりだぁっ!」
振り下ろされた一撃がグリフォンの首を断ち割った。
空の王者は声もなく絶命した。
静寂が戻る。
商人たちも護衛の傭兵たちも、何が起こったのか分からないといった顔で俺たちを呆然と見ていた。
やがて誰からともなく拍手が沸き起こった。
それはすぐに熱狂的な歓声へと変わった。
「す、すげえ……Aランクモンスターをたった三人で……」
「あのパーティー、何者なんだ……!」
ゼノンさんが満面の笑みで駆け寄ってくる。
「素晴らしい!実に見事な連携でした!あなた方に依頼して本当によかった!」
こうして俺たちは最大の危機を乗り越え、ついに大都市アークライトの城門へとたどり着いた。
高くそびえる城壁、活気に満ちた人々の声、様々な匂い。
そのすべてが俺たちを歓迎してくれているようだった。
「ここが、アークライト……」
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