追放された【才能鑑定】スキル持ちの俺、Sランクの原石たちをプロデュースして最強へ

黒崎隼人

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第5話「原石たちの不協和音」

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「今日から、このミリアがパーティーに加わることになった。彼女は後衛の魔法支援を担当する。二人とも、よろしく頼む」
 クロスロードの安宿の一室で、司はリョウガとミリアを引き合わせた。しかし、そこに和やかな雰囲気は全くなかった。
「……よろしく」
 ミリアは気まずそうに視線を逸らし、小さな声で挨拶する。何百年も森に一人でいた彼女にとって、人間、それもリョウガのような粗野な男と接するのは、苦痛でしかないようだった。
 一方のリョウガは、ミリアを頭のてっぺんからつま先までなめ回すように見ると、あからさまに不満そうな顔をした。
「おい、司。こいつ、大丈夫なのかよ。ひょろひょろで、俺の剣より軽そうじゃねえか。本当に戦えるのか?」
「失礼な人ですね。あなたこそ、脳みそまで筋肉でできているようです」
 ミリアも負けじと冷たく言い返す。
「んだと、てめえ!」
「事実を言ったまでです」
 早くも一触即発の空気が流れる。
「うわあ、こりゃ想像以上に前途多難だな……」
 司は頭を抱えた。個々の能力はSランクでも、チームとして機能しなければ意味がない。むしろ、才能があるぶん、衝突した時の反発も大きい。
 人事コンサルタントの経験上、こういうケースは何度も見てきた。優秀な社員同士を集めたプロジェクトが、互いに反発し合って全く成果を出せない、という典型的な失敗例だ。
「こういう時は、共通の目標を持たせ、小さな成功体験を共有させることが重要だ」
 チームビルディングの基本に立ち返る必要がある。
「まあまあ、二人とも落ち着け。口で言い合っても始まらない。実力は、依頼をこなせばわかることだ」
 司はそう言うと、ギルドで選んでおいた依頼書を取り出した。
「今回の依頼は『廃坑のゴブリン集団討伐』。ランクはC+。数が多い上に、坑道内での戦闘になる。連携が取れなければ、苦戦は必至だ」
「ゴブリンだあ? 雑魚じゃねえか。俺一人で十分だろ」
 リョウガが鼻で笑う。
「その油断が命取りになる。それに、今回はただ倒すだけじゃない。パーティーとしての連携を確認するのが目的だ。リョウガ、君は前衛で敵を引きつけ、絶対にミリアの前に敵を行かせるな。ミリアは後方から、魔法でリョウガを援護しつつ、敵の数を減らせ。いいな?」
「……わかったよ」
「承知しました」
 二人は不満そうながらも、しぶしぶうなずいた。
 翌日、三人は街の外れにある廃坑に到着した。入り口からは、不気味な風とゴブリンたちの甲高い鳴き声が漏れ聞こえてくる。
「よし、行くぞ」
 司の合図で、リョウガが先陣を切って坑道内へ突入した。ミリアがそれに続き、司は最後尾から二人の様子を窺う。
 坑道内は薄暗く、足場も悪い。しばらく進むと、広間のような場所に出た。そこには、数十匹のゴブリンがひしめき合っていた。中には、一回り体の大きいゴブリンリーダーの姿も見える。
「うじゃうじゃいやがるぜ! よっしゃあ!」
 リョウガは雄叫びを上げると、大剣を振り回してゴブリンの群れに突っ込んでいく。その戦い方は、以前の猪突猛進そのものだった。
「おい、リョウガ! 前に出すぎるな! 隊列を維持しろ!」
 司の指示が飛ぶが、興奮したリョウガの耳には届いていない。
 一方、ミリアは冷静に戦況を分析していた。
「数が多すぎます。リョウガ一人では、いずれ囲まれる……!」
 彼女は杖を構え、呪文を唱え始めた。
「芽吹け、大地の檻!『プラント・ケージ』!」
 ミリアの足元から無数の蔓が伸び、ゴブリンたちを絡め取っていく。敵の動きが鈍った隙に、リョウガがそれを斬り伏せる。
「やるじゃねえか、エルフ!」
「あなたこそ、私の魔法の邪魔をしないでください!」
 口では憎まれ口を叩き合っているが、その連携は悪くなかった。リョウガが敵の注意を引きつけ、ミリアが魔法でサポートする。理想的な形ができつつあった。
 しかし、ゴブリンリーダーがその連携を打ち破る。
 リーダーは巨大な棍棒を振り上げると、ミリアを狙って一直線に突進してきたのだ。
「しまっ……!」
 リョウガは他のゴブリンに囲まれ、すぐに助けには行けない。ミリアは次の魔法の詠唱中で、完全に無防備だった。
 絶体絶命のピンチ。その時だった。
「させるかあっ!」
 リョウガが、囲んでいたゴブリンを強引に吹き飛ばし、ミリアの前へと回り込んだ。そして、リーダーが振り下ろした棍棒を、その大剣で真正面から受け止めた。
 ガキンッ! と、凄まじい金属音が響き渡る。
 リョウガの体は衝撃で大きく揺らいだが、その足は一歩も引かなかった。
「てめえの相手は、俺だろが!」
 彼は渾身の力で棍棒を弾き返すと、反撃の一撃をリーダーの脳天に叩き込んだ。
 リーダーを失ったゴブリンたちは、統率を失って散り散りに逃げていく。
 戦闘が終わり、静寂が訪れる。
「……助かった」
 ミリアが、か細い声で礼を言った。
「ふん。お前がやられたら、俺の寝覚めが悪いだけだ」
 リョウガはぶっきらぼうにそう言うと、そっぽを向いてしまった。その耳が少しだけ赤くなっているのを、司は見逃さなかった。
「いいぞ……いい傾向だ」
 リョウガの才能開花条件は、「信頼できる仲間のために剣を振るうこと」。
 今、彼はミリアを「仲間」と認識し、彼女を守るために剣を振るったのだ。それは、彼にとって大きな一歩だった。
 帰り道、三人の間の雰囲気は、来た時とは少しだけ違っていた。相変わらず会話は少ないが、そこにはいがみ合いとは違う、確かな一体感が生まれ始めていた。
「なあ、司」
 リョウガが口を開いた。
「俺たちのパーティーの名前、まだ決めてなかったよな」
「ああ、そうだな。何かいい案でもあるか?」
「『原石の輝き』……なんてのはどうだ」
 それは、司が初めてリョウガをスカウトした時に言った言葉だった。
「君というダイヤの原石を磨く、と」
「……いい名前じゃないか」
 司が同意すると、隣を歩いていたミリアも、小さくうなずいた。
「悪くない響きですね」
 こうして、司がプロデュースするパーティー「原石の輝き」が、正式に結成された。
 今はまだ粗削りな原石かもしれない。だが、いつか必ず、世界を照らすほどの輝きを放つだろう。
 司は、二人の頼もしい仲間を見ながら、その未来を確信していた。
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