追放された【才能鑑定】スキル持ちの俺、Sランクの原石たちをプロデュースして最強へ

黒崎隼人

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第6話「加速する伝説と王宮の影」

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 パーティー「原石の輝き」が結成されてから、数ヶ月が過ぎた。
 司の的確なプロデュース能力は、二人のSランクの才能を、恐るべき速さで開花させていった。
 司はまず、二人の能力を徹底的に分析し、それぞれに合わせた育成プランを構築した。
 リョウガには、彼の長所である突破力を最大限に活かすための「一点突破型」の戦闘訓練を課した。同時に、彼の弱点である防御面を補うため、ミリアの魔法との連携を徹底的に叩き込んだ。
 ミリアには、豊富な魔力量と知識欲を満たすため、ギルドの資料室や街の古本屋から集めた古代魔法に関する文献を大量に与えた。彼女はそれを驚異的なスピードで吸収し、誰も見たことのない新しい魔法を次々と編み出していった。
「リョウガの才能開花条件は、仲間との信頼。ミリアは未知への探求。二人の欲求を、クエスト達成という形で満たし続けることが、彼らの成長に繋がる」
 司は人事コンサルタントの「目標による管理制度」を応用していた。個々のメンバーに明確な目標(才能開花)と、そのための具体的な道筋(クエスト)を示すことで、モチベーションを高く維持させるのだ。
 パーティーの連携も、日を追うごとに洗練されていった。
 最初はぎこちなかった二人も、司が間に入ってコミュニケーションを仲介し、共通の敵との戦いを重ねるうちに、言葉を交わさずとも互いの意図が分かるようになっていた。
 リョウガが敵陣に切り込み、ミリアが魔法で広範囲の敵を足止めする。孤立した敵を、リョウガが確実に仕留める。その完璧な連携は、まさしく芸術の域に達していた。
 その結果、「原石の輝き」は、破竹の勢いでランクを上げていった。
 Cランクの依頼から始まった彼らは、あっという間にBランクを制覇し、今やAランクの依頼を専門にこなす、クロスロードでも指折りの実力派パーティーとして名を轟かせていた。
「おい、聞いたか? 『原石の輝き』が、あの“ワイバーンの巣”を半日で攻略したらしいぜ!」
「マジかよ!? 何パーティーも挑んで返り討ちにされた、あの難関クエストを!?」
「リーダーは、戦闘能力ゼロのプロデューサーだって言うし、一体どんな魔法を使ってるんだ……」
 ギルドでは、彼らの噂で持ちきりだった。その名はクロスロードを飛び出し、王都にまで届き始めていた。
「原石の輝き」の快進撃。その噂は、司を追放した宮廷魔術師団の耳にも、もちろん入っていた。
「バルド様! 大変です!」
 幹部の一人であるゲルドが、血相を変えてバルドの執務室に駆け込んできた。
「騒々しいぞ、ゲルド。何事だ」
 バルドは不機嫌そうに顔を上げた。最近、彼は常に苛立っていた。
 司を追放して以降、魔術師団の戦力は、明らかに低下していたのだ。
「例の、クロスロードで名を上げているパーティー『原石の輝き』ですが……そのリーダーが、追放したはずの相馬司だということが判明しました!」
「なんだと!?」
 バルドは椅子から立ち上がった。あの、魔力も持たない無能な鑑定士が、Aランクパーティーのリーダー? あり得ない。
「馬鹿なことを言うな。あいつにそんな力があるものか。何かの間違いだろう」
「しかし、間違いありません! ギルドに人をやって、確認させました! 赤髪の剣士とエルフの魔術師を率いて、次々と難関依頼を達成していると……」
 バルドは苦々しい表情で黙り込んだ。
 司を追放した後、彼が目をかけていた平民のレオとアンナは、案の定、伸び悩んでいた。
 バルドたちは、彼らの才能を信じず、以前と同じように貴族の生徒たちのための当て馬として扱い続けた。結果、二人は自信を失い、その才能の輝きは、日ごとに失われていっていた。
 貴族出身の魔術師たちも、順調に成長しているとは言い難かった。彼らは皆、ある程度のレベルに達すると、ぴたりと成長が止まってしまったのだ。いわゆる、「才能の壁」というやつだ。
 才能ある平民を育てず、才能のない貴族ばかりを優遇した結果、魔術師団は深刻な人材不足と質の低下に陥っていた。
 そこに飛び込んできた、司の活躍のニュース。
 バルドの心中は、嫉妬と焦りで黒く渦巻いていた。
「あり得ん……! あの無能が、なぜ……! 俺が、俺たちが見抜けなかった才能を、あいつが発掘し、育てているとでも言うのか!?」
 それは、自らの鑑定眼のなさと、育成能力の欠如を、まざまざと突きつけられているのと同じだった。
「……ゲルド」
 バルドは、低い声で命じた。
「その『原石の輝き』とかいうパーティーを、徹底的に調べ上げろ。奴らが使っている魔法、戦術、金の流れ、全てだ。必ず、何か不正をしているはずだ。あの無能が、正攻法で成り上がれるわけがない」
「は、はい!」
 ゲルドは慌てて部屋を飛び出していった。
 一人残されたバルドは、窓の外に広がる王都の景色を眺めながら、ギリ、と歯ぎしりをした。
「認めん……断じて認めるものか。鑑定士ごときが、この私を、由緒正しき貴族を出し抜くなど……!」
 彼の知らないところで、司の存在は、確実に大きなうねりとなり始めていた。
 そして、そのうねりはやがて、腐敗した王宮の体制そのものを、根底から揺るがす激流へと変わっていく。
 バルドはまだ、そのことに気づいていなかった。ただ、得体の知れない不安と屈辱に、身を震わせるばかりだった。
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