無能と追放された鑑定士、実は物の情報を書き換える神スキル【神の万年筆】の持ち主だったので、辺境で楽園国家を創ります!

黒崎隼人

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第5話「辺境の救世主、その名は」

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 俺がカラン村に来てから、半年が過ぎた。
 あの寂れ果てた村の面影は、もはやどこにもない。村はずれまで広がる畑には、巨大なカブや黄金色の小麦が豊かに実り、村人たちが建て直した家々は、まるで王都の高級住宅街のように立派で整然と並んでいる。
 枯れていた井戸は「奇跡の泉」として、その尽きることのない清水で村の全てを潤していた。俺の力は、もはや村の生活に不可欠なものとなっていた。
 そして、俺自身にも大きな変化があった。
「リアム様、本日の収穫報告です!」
「うむ、ご苦労」
 俺はいつの間にか、村の指導者的な立場になっていた。いや、村人たちがそう望んだのだ。「あなたこそ、我らが領主様です」と。最初は固辞したものの、彼らの熱意に押される形で、俺はこの村の長になった。
 最初は戸惑いもあったが、今はその責任を心地よく感じている。みんなの生活を豊かにし、笑顔を守ることが、俺の使命であり、喜びなのだから。
 そんなある日、村の入り口がにわかに騒がしくなった。
「どうしたんだ?」
 様子を見に行くと、村の見張りをしていた若者が、興奮した様子で駆け寄ってきた。
「リアム様! 商人です! 旅の商人が、この村に!」
 辺境の、地図にも載っていないようなこの村に商人が来るなど、何十年ぶりのことらしい。村中が大騒ぎになった。
 現れたのは、一人の体格のいい男が引く、荷馬車だった。彼は村の変貌ぶりに目を丸くし、言葉を失っている。
「こ、ここは本当にカラン村ですかい? 私が数年前に来た時は、今にも滅びそうなゴーストタウンでしたが…」
「ああ、少しばかり村おこしをしたんだ」
 俺がそう言うと、商人は信じられないという顔で、改めて村を見渡した。そして、村人たちが振る舞った巨大なカブのスープを一口飲み、そのあまりの美味さに天を仰いだ。
「こ、こんな美味いカブは生まれて初めてだ! なんという甘みとコク…! それに、この水も! まるで高級なポーションのように、体に活力がみなぎってくる!」
 商人は、俺たちが当たり前のように享受している奇跡の産物に、商魂を激しく揺さぶられたようだった。
「旦那! いや、領主様! どうか、このカブと水を私に売っていただけませんか! 王都に持っていけば、とんでもない高値で売れること間違いなしです!」
 商人の申し出は、俺たちにとっても願ってもないことだった。村の産物を売れば、現金収入が得られる。そうすれば、塩や香辛料など、村では手に入らないものを買うことができる。
 俺は村人たちと相談し、商人との取引を承諾した。
 商人は、山のようなカブと、樽いっぱいの「奇跡の泉」の水を、破格の値段で買い取ってくれた。彼は満面の笑みで王都へと帰っていく。
 この出来事が、俺たちの運命を大きく変える転機となった。
 数週間後、例の商人が、今度は何台もの荷馬車を引き連れて戻ってきた。王都で俺たちの村の産物が、爆発的な評判を呼んだのだ。
「奇跡のカブ」は貴族たちの間で大流行し、「命の水」と名付けられた泉の水は、最高級のポーションを遥かに凌ぐ効果があるとして、引く手あまたになったという。
 噂は噂を呼び、カラン村には次々と商人や、豊かさを求める人々が訪れるようになった。
 俺たちは、彼らを受け入れるために村を拡張した。俺の【神の万年筆】で生み出した「神樹の木材」と「ドラゴンの鱗より硬い石材」で、あっという間に新しい家々や商店が建ち並ぶ。
 さらに、俺は鉄くずを【鑑定】し、「魔力を帯びたアダマンタイト鋼」に書き換えて、鍛冶屋に武具や防具を作らせた。出来上がったそれは、王国の騎士団が使うどんな装備よりも高性能で、冒険者たちの羨望の的となった。
 もはや、ここは「村」と呼べる規模ではなかった。城壁を築き、ギルドを設立し、法を整備する。俺はリーシャや村の長老たちに支えられながら、無我夢中で統治を行った。
 そして一年後。
 かつてカラン村と呼ばれた場所は、大陸でも有数の豊かさを誇る新興都市国家として、その名を轟かせることになった。
 人々は、この奇跡の都市をこう呼んだ。
 ――創生都市「エデン」、と。
 そして、その都市をゼロから創り上げた俺のことを、畏敬の念を込めて「創生王」リアム、と。
 俺は、エデンの中心に建てられた領主の館のバルコニーから、活気に満ちた街並みを見下ろしていた。隣には、変わらぬ優しい笑顔で俺を支えてくれるリーシャがいる。
「すごいね、リアムさん。一年前には、こんな未来、誰も想像できなかった」
「ああ…。俺もだよ」
 だが、この平和が永遠に続くとは思っていなかった。俺たちが築き上げたこの豊かさは、あまりにも目立ちすぎた。特に、かつて俺を追放した、あの王国にとっては。
 いずれ、彼らは来るだろう。俺が創り出したこの楽園を、奪うために。
 その時に備えなければならない。俺は、眼下に広がる愛すべき民と街並みを守るため、静かに闘志を燃やしていた。
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