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第10話「後悔の涙は乾いた大地に染みる」
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勇者パーティーが、辺境の都市に現れた元鑑定士に、赤子の手をひねるように惨敗した――。
その衝撃的なニュースは、エデンを訪れていた商人たちによって、瞬く間に王国全土へと広まった。
最初は誰もが半信半疑だった。あの王国最強の勇者アルスが、負けるはずがないと。しかし、ボロボロの姿で王都に逃げ帰ってきた彼らの姿を見て、噂が真実であることを悟った。
王都は、大騒ぎになった。
「聞いたか? 勇者様、たった一人に負けたらしいぜ」
「しかも相手は、自分たちが追い出した元仲間だっていうじゃないか」
「なんてこった。今まで英雄だって信じてたのによ」
民衆からの賞賛は、一夜にして軽蔑と嘲笑に変わった。彼らが街を歩けば、後ろ指をさされ、ひそひそと笑われる。かつて英雄と讃えられた彼らは、今や国中の笑い者だった。
この事態に、最も激怒したのは国王だった。
「恥を知れ! 貴様らは、我が王国の顔に泥を塗ったのだぞ!」
玉座の間で、国王の怒声が響き渡る。アルスたちは、その前にひざまずき、頭を垂れることしかできない。
「勇者アルスの称号を剥奪する! パーティーも本日をもって解散を命じる! 貴様らのような者たちに、国の威信を預けることはできん!」
非情な宣告だった。彼らは、これまで築き上げてきた全てのものを、この瞬間に失った。地位も、名誉も、潤沢な報酬も。
パーティーのメンバーは、皆アルスを責め、責任をなすりつけ合いながら、散り散りになっていった。黄金の鎧を剥ぎ取られ、ただの人となったアルスには、もはや誰もついてこなかった。
そして、セリアもまた、全てを失った一人だった。
聖女の称号こそ剥奪されなかったものの、勇者の庇護を失った彼女は、神殿での居場所をなくし、周囲から冷たい視線を浴びる日々を送っていた。
彼女の頭の中では、後悔の念が渦巻いていた。
『どうして、こうなったの…? 私の人生は、もっと輝かしいものになるはずだったのに…』
そして、行き着く先はいつも同じ結論だった。
『リアム…。もし、あの時、私が彼を裏切らなければ…。彼のそばにいれば、私は今頃、奇跡の都市の王妃として、世界中から羨望の眼差しを浴びていたはず…』
自分の選択が、全て間違いだった。彼女は、目の前にぶら下がっていた最高の栄光を、自らの手でドブに捨ててしまったのだ。
その事実に耐えられなくなったセリアは、最後の望みをかけ、みすぼらしい平民の服をまとって、再びエデンを訪れた。
衛兵に門前払いされながらも、何日も粘り、ようやくリアムとの面会が許された。
通されたのは、領主の館の執務室だった。豪華だが、嫌味のない調度品に囲まれ、書類に目を通すリアムの姿は、王者の風格に満ち溢れていた。
「…何の用だ」
俺は、顔も上げずに冷たく問いかけた。
セリアは、その場に崩れるようにひざまずき、嗚咽を漏らし始めた。
「リアムさん…! ごめんなさい! 私が、私が全て間違っていました!」
彼女は床に額をこすりつけ、涙ながらに謝罪の言葉を並べる。
「あなたを裏切ったこと、本当に後悔しています! アルス様にそそのかされて…どうか、どうかもう一度だけチャンスをください! 私、生まれ変わります! あなたのために、一生をかけて尽くしますから! お願いです、もう一度、私のことを…!」
その姿は、憐れではあった。だが、俺の心は一ミリも動かなかった。
俺は静かに立ち上がると、彼女の前に歩み寄り、冷たく見下ろした。
「チャンス? お前は、自分の犯した罪の重さを理解していないらしいな」
「え…」
「俺がお前たちに何をされたか、忘れたとは言わせない。お前は、俺の心を殺したんだ。希望も、未来も、全て踏みにじって、笑っていた。そんなお前に、許される資格などない」
俺は、窓の外に広がるエデンの街並みに目をやった。そこには、俺が愛する民の笑顔が溢れている。
「それに、俺にはもう、リーシャがいる。彼女は、俺がどん底にいた時に、何も求めず、ただ優しく寄り添ってくれた。お前のように、俺の力や地位に群がってくるような女とは違う」
俺は再びセリアに視線を戻し、最後の宣告をした。
「よく聞いておけ、セリア。お前が捨てたのは、道端の石ころなんかじゃなかったんだ。そして、今のお前に、俺の隣に立つ価値はない。二度と俺の前に現れるな。…消えろ」
その言葉は、セリアの心を完全に打ち砕いた。彼女の瞳から光が消え、まるで魂が抜けた人形のように、その場にへたり込んだ。
衛兵に引きずられていく彼女の後ろ姿を見送りながら、俺は小さくつぶやいた。
「お前の流す後悔の涙は、もう乾ききった大地に染み込むことすらない」
過去は、完全に葬り去られた。俺の心は、未来へと向かっている。愛する人々と、俺が創り上げたこの楽園の、輝かしい未来へ。
その衝撃的なニュースは、エデンを訪れていた商人たちによって、瞬く間に王国全土へと広まった。
最初は誰もが半信半疑だった。あの王国最強の勇者アルスが、負けるはずがないと。しかし、ボロボロの姿で王都に逃げ帰ってきた彼らの姿を見て、噂が真実であることを悟った。
王都は、大騒ぎになった。
「聞いたか? 勇者様、たった一人に負けたらしいぜ」
「しかも相手は、自分たちが追い出した元仲間だっていうじゃないか」
「なんてこった。今まで英雄だって信じてたのによ」
民衆からの賞賛は、一夜にして軽蔑と嘲笑に変わった。彼らが街を歩けば、後ろ指をさされ、ひそひそと笑われる。かつて英雄と讃えられた彼らは、今や国中の笑い者だった。
この事態に、最も激怒したのは国王だった。
「恥を知れ! 貴様らは、我が王国の顔に泥を塗ったのだぞ!」
玉座の間で、国王の怒声が響き渡る。アルスたちは、その前にひざまずき、頭を垂れることしかできない。
「勇者アルスの称号を剥奪する! パーティーも本日をもって解散を命じる! 貴様らのような者たちに、国の威信を預けることはできん!」
非情な宣告だった。彼らは、これまで築き上げてきた全てのものを、この瞬間に失った。地位も、名誉も、潤沢な報酬も。
パーティーのメンバーは、皆アルスを責め、責任をなすりつけ合いながら、散り散りになっていった。黄金の鎧を剥ぎ取られ、ただの人となったアルスには、もはや誰もついてこなかった。
そして、セリアもまた、全てを失った一人だった。
聖女の称号こそ剥奪されなかったものの、勇者の庇護を失った彼女は、神殿での居場所をなくし、周囲から冷たい視線を浴びる日々を送っていた。
彼女の頭の中では、後悔の念が渦巻いていた。
『どうして、こうなったの…? 私の人生は、もっと輝かしいものになるはずだったのに…』
そして、行き着く先はいつも同じ結論だった。
『リアム…。もし、あの時、私が彼を裏切らなければ…。彼のそばにいれば、私は今頃、奇跡の都市の王妃として、世界中から羨望の眼差しを浴びていたはず…』
自分の選択が、全て間違いだった。彼女は、目の前にぶら下がっていた最高の栄光を、自らの手でドブに捨ててしまったのだ。
その事実に耐えられなくなったセリアは、最後の望みをかけ、みすぼらしい平民の服をまとって、再びエデンを訪れた。
衛兵に門前払いされながらも、何日も粘り、ようやくリアムとの面会が許された。
通されたのは、領主の館の執務室だった。豪華だが、嫌味のない調度品に囲まれ、書類に目を通すリアムの姿は、王者の風格に満ち溢れていた。
「…何の用だ」
俺は、顔も上げずに冷たく問いかけた。
セリアは、その場に崩れるようにひざまずき、嗚咽を漏らし始めた。
「リアムさん…! ごめんなさい! 私が、私が全て間違っていました!」
彼女は床に額をこすりつけ、涙ながらに謝罪の言葉を並べる。
「あなたを裏切ったこと、本当に後悔しています! アルス様にそそのかされて…どうか、どうかもう一度だけチャンスをください! 私、生まれ変わります! あなたのために、一生をかけて尽くしますから! お願いです、もう一度、私のことを…!」
その姿は、憐れではあった。だが、俺の心は一ミリも動かなかった。
俺は静かに立ち上がると、彼女の前に歩み寄り、冷たく見下ろした。
「チャンス? お前は、自分の犯した罪の重さを理解していないらしいな」
「え…」
「俺がお前たちに何をされたか、忘れたとは言わせない。お前は、俺の心を殺したんだ。希望も、未来も、全て踏みにじって、笑っていた。そんなお前に、許される資格などない」
俺は、窓の外に広がるエデンの街並みに目をやった。そこには、俺が愛する民の笑顔が溢れている。
「それに、俺にはもう、リーシャがいる。彼女は、俺がどん底にいた時に、何も求めず、ただ優しく寄り添ってくれた。お前のように、俺の力や地位に群がってくるような女とは違う」
俺は再びセリアに視線を戻し、最後の宣告をした。
「よく聞いておけ、セリア。お前が捨てたのは、道端の石ころなんかじゃなかったんだ。そして、今のお前に、俺の隣に立つ価値はない。二度と俺の前に現れるな。…消えろ」
その言葉は、セリアの心を完全に打ち砕いた。彼女の瞳から光が消え、まるで魂が抜けた人形のように、その場にへたり込んだ。
衛兵に引きずられていく彼女の後ろ姿を見送りながら、俺は小さくつぶやいた。
「お前の流す後悔の涙は、もう乾ききった大地に染み込むことすらない」
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