無能と追放された鑑定士、実は物の情報を書き換える神スキル【神の万年筆】の持ち主だったので、辺境で楽園国家を創ります!

黒崎隼人

文字の大きさ
13 / 14

番外編「陽だまりのスケッチ」

しおりを挟む
 私の名前はリーシャ。辺境の小さな村、カラン村で生まれた、ごく普通の村娘でした。
 私たちの村は、ずっと貧しくて、未来に希望なんてありませんでした。日照りは続き、畑は枯れ、村の命綱だった井戸までが、とうとう枯れてしまったあの日。私は、もう何もかも終わりだと思いました。みんなの顔から笑顔が消えて、ただ諦めだけが村を覆っていました。
 そんな絶望の真っ只中に、あの人が現れたんです。
 旅の青年、リアムさん。
 疲れ果てた様子で、どこか寂しげな瞳をした人。それが、彼の第一印象でした。
 彼が「この井戸を何とかできるかもしれない」と言った時、正直、誰も信じていませんでした。でも、彼は本当に奇跡を起こしてくれたんです。枯れた井戸から、清らかな水がこんこんと湧き出してきた光景を、私は一生忘れません。村中が歓声に包まれて、みんなが何年かぶりに心から笑っていました。あの時、私の目には、リアムさんが本物の救世主様みたいに映りました。
 それから、リアムさんは次々と奇跡を起こしていきました。
 石ころだらけだった畑を、触れただけで豊かな黒土に変えてしまったんです。彼と一緒に種をまいた畑から、見たこともないくらい大きくて甘いカブが穫れた時の喜びは、今でもはっきりと覚えています。
「すごいね、リアムさん!」「こんなの初めて!」
 私がはしゃぐと、彼はいつも、少し照れたように笑って「リーシャが喜んでくれるのが一番だよ」と言ってくれるんです。その優しい笑顔を見るたびに、私の胸はきゅっと締め付けられるように温かくなりました。
 村の人たちが、彼を「領主様」と呼ぶようになっても、リアムさんは少しも偉ぶったりしませんでした。いつも私たちと同じ目線で、村のために何が必要かを真剣に考えてくれました。ボロボロだった農具を伝説の道具に変えてくれたり、壊れかけた家を頑丈なものに作り変えてくれたり。彼の周りには、いつも感謝と笑顔が溢れていました。
 いつからでしょう。私がリアムさんのことを、ただの「救世主様」じゃなく、一人の男性として意識し始めたのは。
 きっと、彼が時折見せる、寂しげな横顔を見た時かもしれません。彼はあまり自分の過去を話しませんでしたが、きっと、何か辛いことがあったんだろうなって、私にもわかりました。だから、私がそばにいて、彼を笑顔にしてあげたい。彼の心の陽だまりに、私がなりたい。そう思うようになったんです。
 村が「エデン」という名前の立派な都市になって、リアムさんが「創生王」なんてすごい名前で呼ばれるようになっても、私への態度は何も変わりませんでした。忙しい仕事の合間を縫って、昔みたいに畑仕事を手伝ってくれたり、「無理していないか?」っていつも気遣ってくれたり。
 ある日、彼が小さな花束をくれました。それは、見たこともないくらい綺麗で、甘い香りのする花でした。
「これは『永遠に枯れない花』だよ。僕が、リーシャのために創ったんだ」
 そう言って渡された花は、本当に何日経っても、瑞々しい美しさを保っていました。私の宝物です。
 そして、あの丘の上で、プロポーズしてくれた日。
「これからもずっと、俺の隣で笑っていてほしい」
 彼の真剣な瞳と、少し震えた声。世界で一番幸せだと思いました。もちろん、答えは「はい」以外に考えられませんでした。
 今、私は彼の婚約者として、毎日を過ごしています。未来の王妃様なんて呼ばれることもあって、まだ少し恥ずかしいけれど、彼の隣にいられるなら、なんだって頑張れます。
 窓辺に飾った「永遠に枯れない花」が、陽の光を浴びてキラキラと輝いています。
 リアムさん。あなたのくれたこの花のように、私たちの未来も、永遠に輝き続けますように。
 あなたの心の陽だまりで、私はこれからも、ずっとあなたのために笑い続けます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

元悪役令嬢、偽聖女に婚約破棄され追放されたけど、前世の農業知識で辺境から成り上がって新しい国の母になりました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢ロゼリアは、王太子から「悪役令嬢」の汚名を着せられ、大勢の貴族の前で婚約を破棄される。だが彼女は動じない。前世の記憶を持つ彼女は、法的に完璧な「離婚届」を叩きつけ、自ら自由を選ぶ! 追放された先は、人々が希望を失った「灰色の谷」。しかし、そこは彼女にとって、前世の農業知識を活かせる最高の「研究室」だった。 土を耕し、水路を拓き、新たな作物を育てる彼女の姿に、心を閉ざしていた村人たちも、ぶっきらぼうな謎の青年カイも、次第に心を動かされていく。 やがて「辺境の女神」と呼ばれるようになった彼女の奇跡は、一つの領地を、そして傾きかけた王国全体の運命をも揺るがすことに。 これは、一人の気高き令嬢が、逆境を乗り越え、最高の仲間たちと新しい国を築き、かけがえのない愛を見つけるまでの、壮大な逆転成り上がりストーリー!

悪役令嬢は廃墟農園で異世界婚活中!~離婚したら最強農業スキルで貴族たちが求婚してきますが、元夫が邪魔で困ってます~

黒崎隼人
ファンタジー
「君との婚約を破棄し、離婚を宣言する!」 皇太子である夫から突きつけられた突然の別れ。 悪役令嬢の濡れ衣を着せられ追放された先は、誰も寄りつかない最果ての荒れ地だった。 ――最高の農業パラダイスじゃない! 前世の知識を活かし、リネットの農業革命が今、始まる! 美味しい作物で村を潤し、国を救い、気づけば各国の貴族から求婚の嵐!? なのに、なぜか私を捨てたはずの元夫が、いつも邪魔ばかりしてくるんですけど! 「離婚から始まる、最高に輝く人生!」 農業スキル全開で国を救い、不器用な元夫を振り回す、痛快!逆転ラブコメディ!

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

聖獣使い唯一の末裔である私は追放されたので、命の恩人の牧場に尽力します。~お願いですから帰ってきてください?はて?~

雪丸
恋愛
【あらすじ】 聖獣使い唯一の末裔としてキルベキア王国に従事していた主人公”アメリア・オルコット”は、聖獣に関する重大な事実を黙っていた裏切り者として国外追放と婚約破棄を言い渡された。 追放されたアメリアは、キルベキア王国と隣の大国ラルヴァクナ王国の間にある森を彷徨い、一度は死を覚悟した。 そんな中、ブランディという牧場経営者一家に拾われ、人の温かさに触れて、彼らのために尽力することを心の底から誓う。 「もう恋愛はいいや。私はブランディ牧場に骨を埋めるって決めたんだ。」 「羊もふもふ!猫吸いうはうは!楽しい!楽しい!」 「え?この国の王子なんて聞いてないです…。」 命の恩人の牧場に尽力すると決めた、アメリアの第二の人生の行く末はいかに? ◇◇◇ 小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 カクヨムにて先行公開中(敬称略)

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...