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第12話『離婚から始まる、新しい結婚の形』
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王国の改革が軌道に乗り、数年の歳月が流れた。エルンディア皇国は、大陸屈指の農業大国として、その名を轟かせるまでになっていた。
私は『農業大臣』として、クロード様は国王陛下となった父君を補佐する摂政皇太子として、それぞれの日々を送っていた。
そんなある日、クロード様が改まった様子で、私の執務室を訪れた。
「リネット、話がある」
「はい、何でしょう?」
まさか、また何か問題でも起きたのかしら。私が身構えると、彼は意を決したように、まっすぐに私を見つめて言った。
「――復縁してくれ、リネット」
それは、数年ぶりに聞く言葉だった。
「私と、もう一度、正式な夫婦になってほしい。今度こそ、君を必ず幸せにすると誓う」
彼の瞳は、真剣そのものだった。
私は、少しだけ黙って、窓の外に広がる王都の景色を眺めた。豊かになり、活気に満ちた街。私たちが二人で作り上げた景色だ。
そして、ゆっくりと彼に向き直ると、にっこりと微笑んだ。
「お断りしますわ」
「なっ……!?」
彼の顔が、絶望に染まる。またこのパターンだ。
「どうしてだ!? もはや、障害は何もないはずだ! 君は、まだ私のことが……」
「いいえ」
私は、慌てる彼の言葉を遮った。
「クロード様、勘違いしないでくださいな。私は、あなたのことが、誰よりも大切です。愛していますわ」
「……え?」
初めての、私からの愛の告白。彼は、雷に打たれたように固まった。
「じゃあ、なぜ……」
「だって、今の関係が、最高に気に入っているんですもの」
私は彼のそばに行き、その手を取った。
「私たちは、夫と妻という形にはまらなくても、誰よりも強い絆で結ばれている。公の場では、国を動かす最高のパートナー。そして、プライベートでは……こうして、誰よりも互いを理解し合える、唯一無二の存在。これ以上、何を望むというのですか?」
夫婦という制度は、時に人を縛る。私たちは一度、それで失敗した。だからこそ、今の自由で、対等な関係が、何よりも尊いのだ。
「それに……もし復縁したら、クロード様は皇太子妃である私を、きっと畑仕事から遠ざけようとするでしょう? それは絶対に嫌ですわ」
私の言葉に、彼はぐっと詰まった。図星だったらしい。
彼は、しばらく考え込んだ後、やがて大きなため息をつき、そして、ふっと笑った。
「……敵わないな、君には」
彼は私の手を取り、その甲に、優しく口づけをした。
「わかった。復縁は、しない。だが、代わりに、一つ契約を結んでほしい」
「契約?」
彼が差し出してきたのは、一枚の羊皮紙だった。そこには、こう書かれていた。
『農業生涯パートナーシップ契約書』
第一条:リネット・フォン・シュバルツとクロード・エルンディアは、生涯にわたり、互いを農業発展における最高のパートナーと認める。
第二条:クロードは、リネットが望む限り、彼女が農業に携わる自由を保障する。
第三条:リネットは、クロードが農園を手伝うことを、週に三回まで許可する。
……最後の条項は、なんだか個人的な要望が混じっている気がする。
「これなら、どうだ?」
悪戯っぽく笑う彼の顔を見て、私はたまらなく愛おしい気持ちになった。
「……ふふっ。ええ、喜んで。その契約、結びましょう」
私たちは、国王と大臣の名ではなく、ただのリネットとクロードとして、その契約書にサインをした。
それは、誰にも真似できない、私たちだけの『新しい結婚』の形だった。
私は『農業大臣』として、クロード様は国王陛下となった父君を補佐する摂政皇太子として、それぞれの日々を送っていた。
そんなある日、クロード様が改まった様子で、私の執務室を訪れた。
「リネット、話がある」
「はい、何でしょう?」
まさか、また何か問題でも起きたのかしら。私が身構えると、彼は意を決したように、まっすぐに私を見つめて言った。
「――復縁してくれ、リネット」
それは、数年ぶりに聞く言葉だった。
「私と、もう一度、正式な夫婦になってほしい。今度こそ、君を必ず幸せにすると誓う」
彼の瞳は、真剣そのものだった。
私は、少しだけ黙って、窓の外に広がる王都の景色を眺めた。豊かになり、活気に満ちた街。私たちが二人で作り上げた景色だ。
そして、ゆっくりと彼に向き直ると、にっこりと微笑んだ。
「お断りしますわ」
「なっ……!?」
彼の顔が、絶望に染まる。またこのパターンだ。
「どうしてだ!? もはや、障害は何もないはずだ! 君は、まだ私のことが……」
「いいえ」
私は、慌てる彼の言葉を遮った。
「クロード様、勘違いしないでくださいな。私は、あなたのことが、誰よりも大切です。愛していますわ」
「……え?」
初めての、私からの愛の告白。彼は、雷に打たれたように固まった。
「じゃあ、なぜ……」
「だって、今の関係が、最高に気に入っているんですもの」
私は彼のそばに行き、その手を取った。
「私たちは、夫と妻という形にはまらなくても、誰よりも強い絆で結ばれている。公の場では、国を動かす最高のパートナー。そして、プライベートでは……こうして、誰よりも互いを理解し合える、唯一無二の存在。これ以上、何を望むというのですか?」
夫婦という制度は、時に人を縛る。私たちは一度、それで失敗した。だからこそ、今の自由で、対等な関係が、何よりも尊いのだ。
「それに……もし復縁したら、クロード様は皇太子妃である私を、きっと畑仕事から遠ざけようとするでしょう? それは絶対に嫌ですわ」
私の言葉に、彼はぐっと詰まった。図星だったらしい。
彼は、しばらく考え込んだ後、やがて大きなため息をつき、そして、ふっと笑った。
「……敵わないな、君には」
彼は私の手を取り、その甲に、優しく口づけをした。
「わかった。復縁は、しない。だが、代わりに、一つ契約を結んでほしい」
「契約?」
彼が差し出してきたのは、一枚の羊皮紙だった。そこには、こう書かれていた。
『農業生涯パートナーシップ契約書』
第一条:リネット・フォン・シュバルツとクロード・エルンディアは、生涯にわたり、互いを農業発展における最高のパートナーと認める。
第二条:クロードは、リネットが望む限り、彼女が農業に携わる自由を保障する。
第三条:リネットは、クロードが農園を手伝うことを、週に三回まで許可する。
……最後の条項は、なんだか個人的な要望が混じっている気がする。
「これなら、どうだ?」
悪戯っぽく笑う彼の顔を見て、私はたまらなく愛おしい気持ちになった。
「……ふふっ。ええ、喜んで。その契約、結びましょう」
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