悪役令嬢は廃墟農園で異世界婚活中!~離婚したら最強農業スキルで貴族たちが求婚してきますが、元夫が邪魔で困ってます~

黒崎隼人

文字の大きさ
13 / 17

第12話『離婚から始まる、新しい結婚の形』

しおりを挟む
 王国の改革が軌道に乗り、数年の歳月が流れた。エルンディア皇国は、大陸屈指の農業大国として、その名を轟かせるまでになっていた。
 私は『農業大臣』として、クロード様は国王陛下となった父君を補佐する摂政皇太子として、それぞれの日々を送っていた。

 そんなある日、クロード様が改まった様子で、私の執務室を訪れた。

「リネット、話がある」

「はい、何でしょう?」

 まさか、また何か問題でも起きたのかしら。私が身構えると、彼は意を決したように、まっすぐに私を見つめて言った。

「――復縁してくれ、リネット」

 それは、数年ぶりに聞く言葉だった。

「私と、もう一度、正式な夫婦になってほしい。今度こそ、君を必ず幸せにすると誓う」

 彼の瞳は、真剣そのものだった。
 私は、少しだけ黙って、窓の外に広がる王都の景色を眺めた。豊かになり、活気に満ちた街。私たちが二人で作り上げた景色だ。
 そして、ゆっくりと彼に向き直ると、にっこりと微笑んだ。

「お断りしますわ」

「なっ……!?」

 彼の顔が、絶望に染まる。またこのパターンだ。

「どうしてだ!? もはや、障害は何もないはずだ! 君は、まだ私のことが……」

「いいえ」

 私は、慌てる彼の言葉を遮った。

「クロード様、勘違いしないでくださいな。私は、あなたのことが、誰よりも大切です。愛していますわ」

「……え?」

 初めての、私からの愛の告白。彼は、雷に打たれたように固まった。

「じゃあ、なぜ……」

「だって、今の関係が、最高に気に入っているんですもの」

 私は彼のそばに行き、その手を取った。

「私たちは、夫と妻という形にはまらなくても、誰よりも強い絆で結ばれている。公の場では、国を動かす最高のパートナー。そして、プライベートでは……こうして、誰よりも互いを理解し合える、唯一無二の存在。これ以上、何を望むというのですか?」

 夫婦という制度は、時に人を縛る。私たちは一度、それで失敗した。だからこそ、今の自由で、対等な関係が、何よりも尊いのだ。

「それに……もし復縁したら、クロード様は皇太子妃である私を、きっと畑仕事から遠ざけようとするでしょう? それは絶対に嫌ですわ」

 私の言葉に、彼はぐっと詰まった。図星だったらしい。
 彼は、しばらく考え込んだ後、やがて大きなため息をつき、そして、ふっと笑った。

「……敵わないな、君には」

 彼は私の手を取り、その甲に、優しく口づけをした。

「わかった。復縁は、しない。だが、代わりに、一つ契約を結んでほしい」

「契約?」

 彼が差し出してきたのは、一枚の羊皮紙だった。そこには、こう書かれていた。

『農業生涯パートナーシップ契約書』
 第一条:リネット・フォン・シュバルツとクロード・エルンディアは、生涯にわたり、互いを農業発展における最高のパートナーと認める。
 第二条:クロードは、リネットが望む限り、彼女が農業に携わる自由を保障する。
 第三条:リネットは、クロードが農園を手伝うことを、週に三回まで許可する。

 ……最後の条項は、なんだか個人的な要望が混じっている気がする。

「これなら、どうだ?」

 悪戯っぽく笑う彼の顔を見て、私はたまらなく愛おしい気持ちになった。

「……ふふっ。ええ、喜んで。その契約、結びましょう」

 私たちは、国王と大臣の名ではなく、ただのリネットとクロードとして、その契約書にサインをした。
 それは、誰にも真似できない、私たちだけの『新しい結婚』の形だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

【完結】勇者に折られた魔王のツノは、幼児の庇護者になりました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
旧タイトル:膨大な魔力と知識ありのチートだけど、転生先がツノはないよね? 異世界転生、胸躍らせる夢の展開のはず。しかし目の前で繰り広げられる勇者vs魔王の激戦に、僕は飽きていた。だって王の頭上で、魔力を供給するだけのツノが僕だ。魔王が強いからツノがあるのではなく、ツノである僕がいるから彼が最強だった。 ずっと動けない。声は誰にも聞こえない。膨大な魔力も知識チートも披露できぬまま、魔王の頭上で朽ちるのか。諦めかけていた。 勇者の聖剣が僕を折るまでは……!  動けなかったツノは、折れたことで新たな仲間と出会う。チート無双はできないが、ツノなりに幸せを掴めるのか!? いつか自力で動ける日を夢見て、僕は彼と手を組んだ。 ※基本ほのぼの、時々残酷表現あり(予告なし) 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2021/11/17 完結

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【読切短編】転生したら辺境伯家の三男でした ~のんびり暮らしたいのに、なぜか領地が発展していく~

Lihito
ファンタジー
過労死したシステムエンジニアは、異世界の辺境伯家に転生した。 三男。継承権は遠い。期待もされない。 ——最高じゃないか。 「今度こそ、のんびり生きよう」 兄たちの継承争いに巻き込まれないよう、誰も欲しがらない荒れ地を引き受けた。 静かに暮らすつもりだった。 だが、彼には「構造把握」という能力があった。 物事の問題点が、図解のように見える力。 井戸が枯れた。見て見ぬふりができなかった。 作物が育たない。見て見ぬふりができなかった。 気づけば——領地が勝手に発展していた。 「俺ののんびりライフ、どこ行った……」 これは、静かに暮らしたかった男が、なぜか成り上がっていく物語。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

追放先の辺境で前世の農業知識を思い出した悪役令嬢、奇跡の果実で大逆転。いつの間にか世界経済の中心になっていました。

緋村ルナ
ファンタジー
「お前のような女は王妃にふさわしくない!」――才色兼備でありながら“冷酷な野心家”のレッテルを貼られ、無能な王太子から婚約破棄されたアメリア。国外追放の末にたどり着いたのは、痩せた土地が広がる辺境の村だった。しかし、そこで彼女が見つけた一つの奇妙な種が、運命を、そして世界を根底から覆す。 前世である農業研究員の知識を武器に、新種の果物「ヴェリーナ」を誕生させたアメリア。それは甘美な味だけでなく、世界経済を揺るがすほどの価値を秘めていた。 これは、一人の追放された令嬢が、たった一つの果実で自らの運命を切り開き、かつて自分を捨てた者たちに痛快なリベンジを果たし、やがて世界の覇権を握るまでの物語。「食」と「経済」で世界を変える、壮大な逆転ファンタジー、開幕!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

処理中です...