『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

『爆発は制御できない』

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「アハハハハ・・・悪く思わないでよね」

 その声は、乾いた空気に溶けていった。
 笑いの形をしているだけの、感情の死骸。
 誰かが発したはずなのに、誰の声だったか思い出せない。
 それほどに、全員が同じ顔に見えた。

「ダンジョン攻略では人死にも出るって、承知でしょ? あなた一人の犠牲で、みんな幸せになるんだから。安いものよね?」

 言葉の温度は、氷点下。
 だが、その奥には確かに熱があった。
 他人の絶望を踏みつけることに、快感を覚える者の熱。

「大丈夫だって。クククッ・・・保険も入れてやったし、慰労金も出る。ハハッ・・・ダンジョン年金だって、ちゃんとあるぞ?」

 笑い声が、空間の隅々に染み込んでいく。
 血の匂いがしないだけで、これは処刑場だ。
 誰もが、オレの死を前提に話している。
 生きて帰る未来など、最初から存在しない。

「ふふっ・・・ありがたーい制度よね、お国の。私たちの懐は痛まないし──気にしなくていいのよっ! アハハ!」

 誰かが笑い、別の誰かが続く。
 その笑いは、感情のない儀式音。
 まるで、壊れた人形が順番に口を開けて、録音された音声を再生しているようだった。

「そういうわけだから。アハ! 静かに眠るといいぞ!」

『仲間』たちから飛んでくる『励まし』は、死刑執行前の形式的な手順にすぎなかった。 
 そこにあるのは、同情でも、悲しみでもない。
 ただ、処理対象に向けた『最後の手間』。

 カルマは、立ち尽くしていた。
 背中に括りつけられた『爆弾』の存在が、皮膚の下で脈打っている。
 いや、これは比喩ではない。
 オレは、実際に『爆弾』にされている。

 彼らは、笑いながら人を殺す。
 その目に、血の色は映らない。
 命を『コスト』としか見ていない。
 誰かが死ねば、自分が生き残れる。
 それが、彼らの『倫理』だった。


『仲間』──そう思っていたのは、オレだけだった。
 彼らにとって、オレはただの使い捨ての盾。
 壊れる前に、壊してしまえばいい。
 その方が、都合がいい。

 喉の奥が焼けるように熱い。
 けれど、指先は氷のように冷たい。
 視界の端が滲み、誰かの顔が歪んで見える。
 笑い声が、耳の奥で金属を引っ掻くように響く。
 吐き気が込み上げる。
 でも、吐くものなんて、もう残っていなかった。

 諦めが、心の底から浮かび上がる。
 その下で、濁った泥のような悪意が、静かに渦を巻いていた。

 名前:削除 関係性:無効化 感情リンク:切断 タグ付け:処理対象A、処理対象B、処理対象C・・・・・・

 オレの中の何かが、冷徹に整理を始めていた。
 まるで、戦闘用AIが起動したかのように。

 胸の奥で、何かが『点火』された。
 それは怒りではない。
 悲しみでもない。
 もっと冷たく、もっと静かで、もっと残酷なもの。
 氷の芯に、黒い火が灯るような感覚だった。

 カルマは、ゆっくりと息を吐いた。
 その吐息は、刃のように鋭く、冷たかった。

 ・・・ターゲット、確認。処理、開始。

 ククッ・・・喉の奥で、笑いがこぼれた。
 それは乾いた音だった。
 自分のものとは思えない、ひび割れた笑い声。
 まるで、壊れた機械が最後に鳴らす警告音のようだった。

 胸の奥で、何かが静かに崩れた。
 それは怒りでも、悲しみでもない。
 ただ、壊れた心の隙間から、黒い液体のような感情が滲み出していく。
 それは、長く封じ込めていた『本音』だった。

 指先が冷たくなる。
 視界が妙に澄んでいく。
 仲間——いや、『人間』と呼ばれていたものたちの顔が、まるで的の中心に浮かび上がるように、はっきりと見えた。

「ああ・・・そうか。そういうことか」

 ぽつりと呟いた声に、誰も気づかない。
 彼らはまだ、笑っている。
 何も知らずに。
 自分たちが、今まさに『処理対象』に変わったことに気づかないまま。

 カルマの口元が、ゆっくりと吊り上がる。
 それは、喜びでも、怒りでもない。
 ただ、壊れた歯車が空回りするような、無音の笑みだった。

「オレは、『これ』を待っていたのか・・・」

 ずっと耐えてきた。
 ずっと、我慢してきた。
 ずっと、『人間』でいようとしてきた。
 でも、もうその必要はない。

 解放。

 その言葉が、脳の奥で何度も反響する。
 解放。解放。解放。

 指先が、勝手に動き出す。
 それは命令ではない。
 本能。

 背筋が震える。
 それは恐怖ではない。
 快感。

 胸の奥に溜まっていた黒い泥が、今、鋭利な刃となって形を成していく。

 カルマは、ゆっくりと一歩を踏み出した。
 その足音は、誰にも聞こえなかった。
 けれど、空気が震えた。
『処理』が始まったのだ。


 まずは、事の始まり。
 すべての『前提』を明かすとしようか―――
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