『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第7話 沈黙の返還 ~孤独な戴冠式~ ②

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 結果?
 もちろん、順当負け。

 二本の角で串刺し。
 からの、自爆。

『ダンジョンマスター』は消し飛んだ。
 見たわけじゃない。
 でも、足元に角が落ちていた。
 ドロップアイテムがあるなら、間違いない。

 で──

「さっすが、一葉ちゃんだね」
 ウンウン頷いたよ。

 最高位のヒーラーにして薬師。
 その彼女が持つアイテムってなーんだ?

 ヒント。
 高価できれいな薬瓶に入っています!

 ヒント2。
 オレがこうして生きています!
 服は着てないけど。

 答え。
『エリクサー』です!

 ダンジョン内限定の蘇生薬。
 身体が消滅していても、復活できる。
 一種のバックアップ。
 ダンジョンの『運営システム』が、記録を保存して復元する。

 ただでアイテム磨きなんてするわけない。
 こうなる気がしていたので、何本か掠め取ってました!

 ポシェット一個分の『マジックバック』。
 御守り袋サイズの巾着だから、誰も気づかなかった。

 大量の魔法道具を出す間に、こっそり取り出しておいた。
「巻き込まれないといいな!」は、見られないようにするための演出。

 誰もオレを助けてはくれなかった。
 でも、オレはオレを見捨てていない。

 ついでにもう一つ。
 レイド戦に参加中の彼等には、残念なお知らせがある。

 死ぬ直前、オレはレイドから降りていた。
 パーティも解除。
 完全ソロだった。

 どういうことか?
『ダンジョンマスター』討伐の経験値を──総取りした。

 当然だろう? 
 倒したのはオレだ。
 それも、オレの魔力で。

 レベルが上がる上がる。
 脳内では『レベルが上がりました』のシステムチャットがスクロールし続けている。

 これまで、経験値の分け前を貰えなかった。
 それが、一気に解消されていく。

『役立たず』が、最強になった瞬間。

 そんな中、個人チャットに通知が入った。 
 現在、チャット機能がフルになっているので、システムと併存している。

「なんだろ?」

 死んだはずの人間に、今さら何か用なのか?
 もしかして、一人くらいは心配してくれる人がいた?

 淡い期待を胸に、カルマは個人チャットのみに絞った。

『『ダンジョンマスター』の討伐おめでとうございます』

「って、システムじゃん!」

 無機質な声。
 中立の人工人格。
 世界中のダンジョンに存在する案内役。

 探索者の手続きと記録を司る存在。
『エリクサー』の復元も、彼らの仕事。

『『ダンジョンマスター』の討伐により、『首座簒奪者』の称号が与えられます。これにより当ダンジョンは無主となりました。『ダンジョンマスター』への就任依頼を受領しますか?』

「・・・はい?」

 意味は、わかる。
 でも、理解が追いつかない。

『討伐者に、支配者の資格がある』。
 それは、あまりにも静かで、あまりにも当然のように提示された。

 まるで、「お疲れさまでした。次はあなたの番です」とでも言うように。

「えっと。オレが『ダンジョンマスター』にならなかったら、どうなる?」

『『主無き迷宮の統治者』の称号へと変更されます。ダンジョンは無主のまま存在することになります』

「『ダンジョンマスター』になるのと、統治者になるのの違いは?」

『統治者の場合、モンスターから攻撃されることはなくなりますが、ダンジョンそのものへの変更は行えません』

 ──モンスターを治めるだけなら“統治者”。
 でも、『世界そのもの』を変えられるのは『マスター』だけ。

「『ダンジョンマスター』って、人間もなれるんだ?」

『もちろんです。討伐者に権利があります』

「それって、人間を辞めるってことでは?」

 一度死んだ。
 いまさら未練はない。
 でも、そこは確認しておきたい。

『種族変更は可能ではありますが、必要なものではありません』

 ──種族変更可能。
 つまり、『人間であること』にこだわる必要はない。
 それは、カルマにとって好都合だった。

 このまま地上に戻ったら、どうなるかはわかっている。
 英雄として迎えられることはない。
 むしろ、都合の悪い『証人』として排除されるだろう。

 生き残る算段はしていた。
 でも、その後の道は、どこにも繋がっていなかった。

 彼らがどう『計画』を実行するかも不明だった。
 場合によっては、エリクサーで生還して、別の学校へ編入するという『逃げ道』もあった。

 でも──ここまで蔑ろにされるとは、思っていなかった。

 ならば、『ダンジョンマスター』になるという選択は、もはや『好条件』ではなく、『必然』だった。

 拒否なんて、ありえない。

 オレは、もう人間じゃなくなるのかもしれない。でも──

 あの教室で、誰も来なかった三日間より、ずっと『生きてる』気がした。

 なら、もう悩むことはない。

「・・・受けるよ。就任依頼」

 静寂が、祝福のように降りてきた。
 誰もいないのに、拍手の音が聞こえた気がした。
 耳鳴りか、それとも──。

 誰もいない空間で、オレは初めて、自分の名を呼んだ。

「『ダンジョンマスター・カルマ』、か。悪くない」

 口にした瞬間、空気が変わった。
 ダンジョンが、オレを『主』として認識した。

 足元の石畳が、わずかに震える。
 天井の苔が、淡く光る。

 それは、誰にも祝われなかったオレへの、世界からの初めての返事だった。

 して、沈黙は返還された。
 今度は、オレの意志で。


 ここから、オレの反撃が始まる。
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