『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
125 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第8話 『ダンジョンマスター』 ~処刑の鐘~

しおりを挟む
 

『ダンジョンマスター就任を受けますか?』

 足元に魔法陣が浮かび上がる。
 頭の中に響く『システム』の声が、最終アンサーを求めていた。

 画面に「就任しますか?」の文字が浮かんだ瞬間、背後の空気が静かに震えた。
 迷宮が、オレを見ていた。
 その視線は、誰よりも優しく、誰よりも冷たかった。
 まるで、『おかえり』とでも言うように。

「引き受けます」

 しっかりと答えた。
 覚悟は、とうに決まっていた。

『ダンジョンマスターの引継ぎが行われます』

「・・・う、あっ」

 魔法陣が輝き、空気が震える。
 迷宮が、オレを見ていた。
 そして、静かに──頷いた気がした。

『ダンジョンを再構築・・・・・・失敗しました。再構築には『ダンジョンの再誕者』の称号が必要です。条件を満たしてから再度お試しください。また、異物の排除も併せて行ってください』

 条件? 異物?

 すぐに理解できた。
 異物──それは、『探索者』たちのことだ。

 数は265。
 目の前に展開された三次元モニターに、彼らの位置が映し出されている。
 誰一人、死んでいない。
 今はセーフティエリアで態勢を整えている最中らしい。

「システム、現状でオレにできることは?」

『配置モンスターの変更、ドロップアイテムの変更、トラップの変更、宝箱の変更、が可能です』

「変更の方法は?」

『ダンジョン内に蓄えた魔力を消費して行います』

 三次元ウィンドウが展開される。
 ダンジョンの全体像。
 モンスターの配置、トラップ、宝箱の位置。
 そして、ダンジョンのステータス。

【ダンジョンステータス】 ・レベル:1 ・階層数:64 ・系統:『蟲』 ・耐久度:5000 ・蓄積魔力:73000

「ふむ・・・わからない。けど、今は迷ってる暇はない」

 レベル1──マスターが変わったばかりだからだろう。
 階層64──再構築されていない証。
 系統『蟲』──出現モンスターの分類。

「えーと。耐久5000は最低値ってことで間違いないな?」

『その通りです』

「73000は高すぎないか?」

『レベルが下がったため、使用できなくなった構成要素を魔力変換した結果です。現在のレベルでは、毎時80の上昇しか見込めません』

 なるほど。
 変換されたものが少なかったのだろう。
 多くは、旧ダンジョンのまま残されている。

「その魔力を使って、各種変更ができるわけだな?」

『厳密には、魔力100につき1の『ダンジョンポイント』を得られます。これを消費して変更を行います』

「つまり、まずはマナポイントを集めて、ダンジョンポイントに変換。そののちに改造していく・・・でいいのか?」

『その通りです。また、ダンジョンポイントはレベルアップにも必要です』

「・・・逆に言えば、レベルが上がらないと強いモンスターは作れない?」

『はい。レベル1では、レベル1のモンスターしか作成できません』

「え? ちょ、待て!」

「じゃあ今このダンジョンには、レベル1のモンスターしかいないのか?」

『いいえ。現行のリポップ分は、旧仕様のままです。これから倒された分については、レベルに応じた再配置となります』

「ぐっ・・・」

 つまり、今の戦力が尽きる前に、レベルを上げなければ詰む。
 時間との勝負だ。

 カルマは、迷宮の主になった。
 でも、迷宮はまだ『彼のもの』ではない。

 これから、証明しなければならない。
 この迷宮が、カルマの意志で動くことを。

「出せるモンスターは『蟲』だけか?」

『その通りです。カタログをご覧になりますか?』

「見せてくれ」

 3Dウィンドウに、虫型モンスターの一覧が表示される。
 サイズ、能力、特性、すべてがカスタマイズ可能。

 表示されたのは、羽音、毒牙、群れ、擬態、孵化、寄生── どれも、静かに、確実に、侵食する者たち。

「・・・悪くない」

 派手さはない。
 だが、確実に蝕む。
 それは、オレのやり方に似ていた。

 だが、すべては『ポイント』次第。

「魔力上昇は毎時80ってことだけど、それ以外に手に入れる方法は?」

『異物が魔法を使用した際、余剰魔力を吸収できます。不発や外れた場合も同様です』

 ──なるほど。
 無駄撃ちを誘えば、こちらの糧になる。

「よし、方針は決まった」

 魔法を撃たせる。
 マナポイントを蓄える。
 ダンジョンを育てる。

「・・・いや、待てよ」

 73000のマナポイント。
 つまり、730ダンジョンポイント。

「レベルを上げるのに必要なポイント数は?」

『レベル5までは1レベルにつき30。5から10は50。10から20は100。以降は5刻みで、レベル数×50ずつ加算されます』

「よし。レベルを10まで上げてくれ」

 合計400ポイントを消費。
 残り330は、今後の布石に。

「さて・・・虫だけで、どうやって終わらせる?」

 主力とは戦えない。
 消耗するだけだ。
 新たな強敵も作れない。なら──

「主力は足止めする。絶対に。ここで時間を稼ぐ。彼らが『勝利』を信じている間に、『敗北』を仕込む」

 それが、唯一の勝ち筋。
 奴らが再突入するまでに、こちらが『未知』を作る。

「システム。64階層のモンスターに変更を加えてくれ」

『変更内容を提示してください』

「三段階に分ける。序盤は得意属性と弱点属性を入れ替え。中盤は現状維持。終盤は完全ランダム」

 モンスターそのものは変えられない。
 だが、ステータスの変更はコストなし。
 そこを突く。

『変更完了しました』

「よし。続いて──敵戦力を削る戦略を考えるぞ」

 主力を避け、他の者たちでポイントを稼ぐ。
 魔法を撃たせ、無駄撃ちを誘い、魔力を吸い上げる。

 ダンジョンは、もう『彼らの舞台』じゃない。
 ここは、オレの世界だ。

 そして、オレはもう──『ただの人間』じゃない。

   ◇

 朝が来た。
 それは、祝福ではない。
 ただ、処刑の鐘が鳴るまでの静寂だった。

 レイド本隊が、再び64階層へと突入していく。
 彼らは、勝利の余韻を引きずっていた。
 英雄譚の続きを、当然のように期待していた。
 だが──この迷宮は、もう彼らの知っている場所ではない。

 配置は変わった。
 属性は逆転した。
 罠は、彼らの記憶を裏切るように潜んでいる。

『知っている』という油断が、最も深い罠になる。

 本気の死闘。
 オレは、もう誰のためでもない。
 自分の意思で、この戦いを始める。

 その幕が、静かに──切って落とされた。

 あいつらが戻ってくる。
 オレを捨てたまま、勝利だけを拾いに。

「何人、たどり着けるかな?」

 オレは、待つだけでいい。
 この迷宮の主として。
 この世界の支配者として。

 迷宮は、静かに呼吸を始めた。 
 それは、カルマの鼓動と重なっていた。

 そして──その答えは、静かに、確実に刻まれていく。


 迎撃という反撃が始まる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...