『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第18話 末路② ~声なき襲撃者~   

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 「そういう、コトね。私たちは、その辺りを駆け下りてきたから、知らずに罠を回避できていたんだわ」
 戦士が、そう話をまとめた。

 いくつもの階層を初見で踏破して、駆け下りてきた自分たちを思い起こす。
 『ダンジョン』の観察を入念に行ったとはとても言い難い。
 気付かないうちに見過ごしたギミックが他にもありそうだ。

 そこで思い起こす。
 他の階層ボスは?
 『なにもいない』ボス部屋はあといくつあった?

 57、59、61。
 計算上は、あと三つあるはず。
 そう考えたとき、理由はわからないが全員同時に姿勢を変えた。

 本能だっただろうか?
 鍛えられた『探索者』の聴覚が何かを聞き取った?
 勘?

 ともかく、一点に6対の視線が向けられた。
 黒い地面が広がっている。

 焦げている?
 違う。

 炎の魔術は別の場所。
 しかも、まだ燃えている。
 
 「な、なに、あれ?」
 黒い地面から目を逸らせないまま、誰かが呟いた。
 声が掠れて震えも帯びている。

 疑問符をつけてはみたものの、すでに答えは知っていた。
 認める勇気が出なかっただけだ。

 黒い地面は、揺れていた。
 それは、風でも、魔力でもない。

 無数の脚が、同時に動いていた。

 一匹一匹は、ただのG。
 だが、集まれば──それは『意思を持った黒い波』だった。
 そして、『カサッ』という小さな音とともに移動を開始した。

 カサ……カサカサ……サワ……サワサワ……。

 乾いた音が、地面を這う。
 壁を這う。
 空気を這う。

 ザワリ。

 6人の周囲で、空気が泡立つ。

 パチ……パチパチ……。

 何かがぶつかっている音。
 何かが跳ねている音。
 何かが、『こちらへ向かっている』音。

 Gだった。
 一匹いてもパニックは避けきれないGがいる。
 黒いじゅうたんを形作るほど大量に!

 カサカサカサカサカサカサカサカサ……!

 波となって迫ってくる。
 その音は、足音ではなかった。
『脚音』だった。

「う、うわぅぁぁぁぁぁぁ!!」
 悲鳴を上げつつも戦士職の条件反射。
 前に出て剣を抜いた戦士。

 一歩踏み出す直前、戦士は小さく息を吸い込んだ。
 その音が、最後の覚悟のように響いた。
 その姿が、一瞬で黒いモノの集団に吞み込まれる。

「ひっひぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 服の中に入ったのだろう。
 布の内側から、何かが這う音がした。

 シャリ……シャリ……サワ……サワ……。

 それは、布と肌の間を滑る音。
 無数の脚が、同時に動く音。

 喉も裂けよとばかりに叫び続ける戦士の服が、不自然に膨らみ、波打った。
 まるで、中に別の生き物が棲みついているかのように。

「やめてっ、やめてやめてやめてやめてやめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 叫びは、懇願だった。
 だが、誰にも止められなかった。

 服の隙間から、黒い影が一匹、二匹と這い出してくる。
 口の端から、耳の穴から、指の隙間から。

 それでも、戦士の体は動いていた。
 痙攣のように、跳ね、震え、のたうつ。

 それは、『自分の皮膚の下で何かが動いている』という感覚に、 脳が耐えきれなくなった証だった。

「に、逃げるぞ!」
 正視に堪えない現実。

 剣士が声を上げた。
 誰も異議は唱えなかった。

 剣士を先頭にダンジョン通路へと逃げ込む。
 戦士は・・・捨て置かれた。

 誰も、振り返らなかった。
 振り返れなかった。

 だが──
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