148 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます
第30話 往路から末路へ ◇とある四人パーティの話◇ ③ 後編
しおりを挟む◇観察者2(カルマ視点)◇
「お、起動確認。魔力生成、良好。反応速度、問題なし。うん、いいね。『一号』は優秀だ」
機嫌よくモニターに頷いたカルマだが、ふと首を傾げた。
「作ってけしかけてはみたものの、人間に寄生させるって、精神的ダメージ以外に意味あるのかな?」
『異物の魔力を利用できるため、追加コストなしでモンスターを生成可能です。ステータスも高めになります』
「・・・なるほど」
カルマは静かに頷いた。
「それなら、積極的に利用したくなるよね」
『コストパフォーマンス的には優秀です』
「よし、その方向で進めよう。あ、それとシステムの『異物』って呼び方、変えてくれる?」
『名称変更は可能です。どう呼びますか?』
「魔力をくれて、ポイントもくれて、モンスターまで育ててくれる――『お客様』が妥当じゃない?」
『了承。今後、『異物』は『お客様』と呼称します』
「そうして。では、『お客様』のためにもう少し演出に凝ってみようか。満足のいく舞台にしないとね。『観客』としても「役者」としても、そして・・・『小道具』としても。かな?」
◇数時間後◇男子B——イケダ視点◇
「【ヒール】」
乾いた声が聞こえる。
自分の声なのに、遠くから響いてくるようだった。
手足は治っている。
高級ポーションと回復魔法で、自分でくっつけた。
目の前には、ウノとアイコ。
二人とも、不要なものを処理され、巨大な虫に体を押さえられていた。
『蚊』と『ウスバカゲロウ』らしい。
人間並みの大きさ。
なにより――
「痒いっ、痒いっ、痒いんだよっ!」
「掻いて、掻いて、お願い!」
ウノとアイコは、半狂乱で叫んでいた。
体を押さえつける巨大な虫の脚が、皮膚を押しつぶすたびに、その下で『何か』が蠢く感覚が走る。
皮膚の内側。
筋肉のすぐ下。
そこを這い回る、細くてぬるりとした感触。
「う、うごいてる・・・! 中で、動いてるの・・・!」
意識と記憶の変化だけでは無視できない感覚的な刺激。
掻こうとしても、届かない。
掻けば掻くほど、奥へ逃げていく。
まるで、わざと『痒み』を操っているかのように。
魔力の乱れが、皮膚の下で波打っていた。
その波は、一定のリズムで移動し、 神経を撫でるように刺激してくる。
「やめて・・・やめてよ・・・! もう、やだ・・・!」
アイコの目は涙で濡れ、ウノは歯を食いしばっていた。
だが、どちらも逃げられない。
『痒み』は、彼らの中にある。
そして、それは成長していた。
痒みが、熱に変わり、熱が、圧迫感に変わり、圧迫感が、やがて“何か『生まれる』予感に変わっていく。
そんなわけで、ものすごく痒がっていた。
そりゃそうだろうな。
無感動に考える。
最初は頼まれるまま、彼らの体を掻きむしった。
爪が皮膚を裂き、赤く腫れた線が浮かび上がる。
服の上からでは効果が薄く、仕方ないからほぼ全裸の状態だ。
肌という肌に、蚯蚓腫れが縦横に走っていた。
まるで、体の中から何かが這い出ようとしているようだった。
それは、魔力の乱れによって生じた『痕跡』あるいは『呪い』。
だが実際には、『何か』が皮膚の下を這い回っていた。
暗く湿った場所で発生した魔力の塊が、体内を移動している。
その動きが、神経を撫で、引っかき、耐えがたい痒みを引き起こしていた。
「掻いて、掻いて、お願い・・・! 動いてるの、わかるの・・・!」
でも、大丈夫。 痒みはもうじき収まる。
魔力が形を変え、外へと放出されるから。
中にいた『何か』が、外に出るから。
そこまでが役目だから。
『ふたりをいやせ』
地面に、普通サイズのハエが並んだ。
俺への指示だ。
「【ヒール】」
俺の役目は、彼らの魔力の乱れをリセットすること。
『痒み』が収まるのは、魔力の塊が『成長しきって』体外に出た証拠。
癒された体は、再び『利用可能な存在』として機能する。
つまり、次の『痒み』を受け入れる準備が整ったということだ。
「お願い・・・もう、終わらせて・・・」
「ひと思いに・・・」
二人の声は、涙と絶望に濡れていた。
初めは、『道具』のように大人しかったのに。
痒みで半狂乱になってからは、ずっとこの調子だ。
でも、俺には選択肢がなかった。
地面に並ぶ蠅が、文字のように並びを変える。
まるで迷宮の筆記体。
俺の運命は、そこに書かれていた。
『ふたりがいなくなれば、おまえも不要』
俺は、リセットするためだけに存在していた。
癒すだけ。整えるだけ。
それが終われば、俺も『整えられる側』になる。
「は、ハハッ・・・『リセット』か。『リセット』って、なんだっけ?」
『癒す』なら、かろうじて覚えている。
誰かの痒みを消す。
誰かの魔力を整える。
それが『癒し』なら、俺はそれをしてきた。
でも、『リセット』って何だろう?
元に戻す? 戻した先に、何かが変わるのか?
「戻ったって、同じ場所に立ってるだけじゃないか・・・」
わからない。
わからなくていい。
知る意味なんてない。
わかっているのは、この『仕事』をしていれば、俺は俺でいられる。
『俺』って、なんだっけ?
まぁ、いいや。
だって――
「俺は痒くなんてない」
そう言い聞かせながら、目を逸らす。
痒みがないのは、何も動いていない証。
何も育っていない証。
何も『生きていない』証。
命を失えば、痒みもない。
彼も、彼女も痒いのは、生きているからだ。
俺は、そのためにいる。
「頑張れ。心の底から応援してる」
平坦な声で、エールを送り続けた。
それは、かつて誰かに言われた言葉だった。
でも今は――誰のために言っているのかも、わからない。
ただ、その言葉だけが、俺の中で生きていた。
言葉だけが、俺の『痒み』だった。
◇観察者3(カルマ視点)◇
「いいね。『マナポイント』も『ソウルポイント』も、ガンガン溜まってるよ!」
カルマは満足げに手を叩いた。
その瞳は、冷たく澄んでいた。
まるで、あの教室の窓から見た雨のように――静かで、濡れて、誰にも気づかれないまま流れていく。
その横顔を、カエル座りでじっと見つめる女の子がいた。
声は出さない。
動きもしない。
ただ、目だけが、カルマの『奥』を見ていた。
「・・・磨くべき? 濁らせるべき? どっちがいいんだろう?」
その言葉は、誰にも届かなかった。
でも、迷宮の空気が、わずかに揺れた気がした。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる