『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第50話 妖怪制作① ~雪女~ 前編

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 ペーストするデータは決定した。
 どんな妖怪を作るのか?

「とりあえず、山形って言うか雪国で『妖怪』と言えば決まってるよな?」
 絶対に外せないトップランナーがいる。

『雪女』。
 妖怪のことなんて知らない、興味ない。
 そんな人でも知らないとは言わないだろう。

 必要なのは当然だけど冷気を扱う能力。
 氷系の魔法が得意な魔職がいいだろう。
 当然に女生徒だ。

 百合根友梨先輩である。
 実際、悪口の部類だったけど『雪女』という二つ名を貰っていたし。

 場所は『指揮所』。
 彼女のものらしい血痕が乾き始めている。

「どれ、まずは肉体の取り込み。そして、人格の強調と能力抽出だ」
 ポチッとな。

 記憶の解析をスタートした。
 彼女の最期の記憶が流れ始める。

 氷のように冷たい記憶が、指先から流れ込んでくる。
 最後の瞬間、彼女は誰かの名前を呼ぼうとして、声を失った。
 その声は、今も指揮所の空気に凍りついている。

  ◆百合根友梨視点◆

 上から見下ろしている。
 頑張ったよね。
 でも、もう生きる気力がない。

 彼氏がクラスメイトの女子と抱き合って、あまつさえキスをしていた。
 戦闘のさなかだ。
 気持ちが盛り上がっていたのだろう。

 嫉妬心。
 きっとそうなんだろうと思う。

 何も考えないまま指揮所を飛び降りた。
 なにをしたかったのかはもうわからない。

 自分が何かをするより早く、彼氏はいなくなった。
 カマキリに胸を斜めに切り裂かれていた。
 そして、もう一人も腰から輪切りにされている。

 助けるつもりだったのかどうなのか。
 私は傷口を凍らせていた。

 そのおかげ?
 いや、そのせいで彼女は死ななかった。
 少なくとも数分は。

 私は見ていた。
 内臓をはみ出させて引き摺りながら這う彼女を。

 ムゴイシーンだ。
 なのに、私の顔には冷たい笑みが浮いていた。
 自覚できていた。

 心が冷たく凍てついていく。
 嫉妬に駆られて裏切った彼に詰め寄ることも、人の彼氏に色目を使った女をなじることもできていない。

 だから——。
 笑っていた。
 自分でもわかるくらい、冷たい笑みだった。

 でも、止められなかった。
 唇が凍って、動かなくなったわけじゃない。
 心が、もう、動いていなかった。

 傷口を凍らせた。
 それが延命だったのか、ただの延長だったのかはわからない。

 でも、彼女が這っていた時間、私はずっと見ていた。
 目を逸らさず、ただ、見ていた。

 そのとき、胸の奥が、少しだけ、あたたかくなった気がした。
 それが、罪だったのか、快感だったのか。
 もう、わからない。

 茫然と突っ立っていたところを襲われた。
 何もできないまま肩を噛み砕かれた。
 脚先の爪が肌に食い込んでいる。

 逃げるのはもう無理だ。
 でも、もういいか。

 生きて帰る理由、なくなっちゃった。
 地上の惨劇を無感動に眺めて、目を閉じた。

 肩を噛み砕かれた痛みが、遠くなっていく。

 でも、冷たさだけは、ずっと残っていた。

 その冷たさが、私の中に根を張っていく。

 まるで、雪が降り積もるように。

 そうして私は、

 ——『人間』をやめた。

   ◆

 「いいね!」
 お誂え向きの記憶。

 しかも新鮮だ。
 これを使おう。

 そして、もう一つ。
 まだ存在している『虫』のカタログから、一匹の虫を出す。
 
『雪虫』。
 雪国では雪の到来を告げる虫。
 ・・・まぁ、有名なのは北海道だけど。
 彼女、百合根友梨ちゃんの彼氏の魂を入れて作成。
 
 もちろん入れるだけ、行動は『雪虫』が支配する。
 人としての記憶も感情もあるのに、『虫』の中の牢獄に捕らわれている状態。
 苦痛と絶望で魂を削るがいいさ。

 生前、女生徒を少なくとも二人。
 弄んでリア充を楽しんだんだろ?

 せいぜい苦しむがいいよ。
 昔の自分の悔しさを、少しだけ込めてみた。
 オレ以外には充分に素敵な女性だった。
 それなのに、他の子に目移りするとか許されない!

 ふわふわの白い蝋に包まれて、まるで空から舞い降りた雪の精霊みたい。
 なんてことを言っていた女子もいる。
 生物の授業中にね。

 中に男子の魂が入ってると知ったら、なんていうのかね?
 聞いてみたい気もするが、まぁいいさ。

 さぁ、この虫とセットで作り出そう。
 心を凍らせた雪女を。


 「完成だ」
 目の前に立ち上がった『雪女』を眺めて満足の吐息を吐く。
 部屋の空気が、ほんの少しだけ冷えた気がした。
 まるで彼女の吐息が、空間に染み込んだように。

 空気が一瞬で凍りつく。
 彼女の姿が、白い霧の中から現れる。
 制服の裾が風もないのに揺れ、足元には霜の花が咲く。
 目を開けた彼女は、何も言わず、ただ静かに一礼した。

 素晴らしい出来だった。
 外観には『百合根友梨』ちゃんが残っている。

 だけど、本人では決してない。
 中身はモンス(モンスター)だ。


 名前(: 氷室 しらゆき(ひむろ・しらゆき)
 冷気を閉じ込める『氷室』と、雪の純粋さを象徴する『しらゆき』。
 それは、彼女の凍った心にふさわしい名だった

 衣装:学校指定のブレザー制服(リボンは赤)+氷の結晶模様が刺繍されたスカート。
 腰にはストラップの振りをした白いふさふさ、『雪虫』がくっついている。

 ただし、これは平時。
 ダンジョン配置中はオーソドックスな『雪女』スタイル。

 衣装:白い着物に霜の模様、そして手から放たれる氷の結晶。
 まさに雪女の覚醒!

 髪は銀白色で、毛先が霧のように揺れる。
 瞳は淡い水色で、見る者の心を凍らせるような静けさを醸し出す。

 うんうん。
 睨まれたら『ゾクッ』てくるに違いない雰囲気がある。

 この子、静かな恐怖と美しさを持ってて、ダンジョンの『静寂の教室』とかに配置したらめちゃくちゃ雰囲気出るよね!

 ——『静寂の教室』のコンセプトがいまいち湧かないけれど・・・。
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