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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます
第121話 崩れゆく絆(リーダー——キリト視点)
しおりを挟む通知音が鳴った。
レイド準備の連絡かと思い、何気なく開いた。
……それが、すべての始まりだった。
画面に映っていたのは、サブリーダー——真梨華。
俺の恋人。
俺の信頼。
俺の、すべてだった。
けれど、その映像の中で彼女は、知らない男と密会していた。
顔は見えない。
でも、距離が近すぎる。
声は聞こえない。
でも、空気が甘すぎる。
俺の知らない彼女が、そこにいた。
「……なんだ、これ」
喉が詰まる。
言葉が出ない。
怒りか?
悲しみか?
感情が、追いついてこない。
ただ、心臓が痛い。
胸が、締め付けられる。
呼吸が早くなる。
映像は短い。
でも、十分だった。
彼女の笑顔。
彼女の仕草。
俺にだけ向けられていたはずのものが、そこにあった。
「……嘘だろ……」
誰が送ってきたのかもわからない。
匿名のアカウント。
ただ、「見ておいた方がいい」とだけ書かれていた。
罠かもしれない。
捏造かもしれない。
でも――映っているのは、確かに彼女だった。
俺が、愛した彼女だった。
怒りが、胸を焼く。
裏切られたという感情が、喉の奥で膨れ上がる。
でも、それ以上に――悲しみが、全身を蝕んでいく。
信じていた。
信じたかった。
信じていたからこそ、痛い。
信じていたからこそ、許せない。
「……なんで……」
問いは、誰にも届かない。
彼女にも、俺自身にも。
思い出す。
あの夜。
テントの裏で耳にした、彼女の笑い声。
冷たくて、残酷で、それでいて心から楽しそうな――あの笑い。
あれが、彼女の『本音』だったのか?
俺が知っていた彼女は、仮面だったのか?
「……いや、それより……」
もう一つの感情が、胸の奥から這い上がってくる。
恐怖。
この映像が出回っているなら、レイドに影響が出る。
チームが崩れる。
俺たちが築いてきたものが、壊れる。
「……落ち着け。今は、冷静になれ……」
自分に言い聞かせる。
でも、心は波打っている。
荒れ狂う海のように。
その中心に、彼女の笑顔が浮かんでいる。
あの甘く、残酷な笑顔が。
嫉妬が、胸を焼く。
疑惑が、喉を締める。
信頼が、崩れ落ちる音がする。
憎悪が、静かに芽を出す。
愛していた。
だからこそ、壊れる音が、こんなにも痛い。
◇
スマホを握る手が震えていた。
怒りでも、悲しみでもない。
ただ、どうしていいかわからない。
心が、空白になっていた。
「……リーダー、キリト?」
振り返ると、一葉がいた。
制服の襟を少し崩し、髪を揺らしながら近づいてくる。
その瞳は、潤んで見えた。
いや――そう見えるように、仕掛けられていた。
「私、今なら……あなたを男として見られるかも」
囁きは、甘く、柔らかく、耳に直接触れるようだった。
その言葉が、心の奥に沈んでいた怒りを、ほんの少しだけ引き上げる。
真梨華の映像が、脳裏にちらつく。
裏切り。
密会。
笑顔。
そして、今目の前にいる一葉の誘惑。
「……なんのつもりだ?」
声が掠れる。
問いかけたつもりだったが、感情が乗らない。
彼女の手が、そっと腕に触れる。
その仕草が、真梨華のそれと重なった。
「慰めてほしいのは、私の方かもしれないけど……」
言葉の意味が曖昧で、境界が揺れる。
彼女の吐息が、肌に触れる距離。
香りが、記憶を塗り替えていく。
キリトは、自分の中で何かが崩れていくのを感じていた。
信頼。絆。
そして――理性。
このまま流されるのか。
それとも、踏みとどまるのか。
選択の時は、もうすぐそこに迫っていた。
スマホを握りしめたまま、ある名前を検索しようとしていた。
それは、自分の理性を試す、最初の問いだった。
でも――指は動かない。
目は、彼女の唇に吸い寄せられる。
問いは、徒労で終わる。
欲望が、理性を押し倒す。
彼女の手が、もう一度触れる。
その瞬間、リキリトは悟った。
自分は、敗北した。
浅ましく。
情けなく。
それでも、抗えなかった。
欲望に敗北するということが、こんなにも静かで、こんなにも悲しいとは思わなかった。
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