『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第129話 疑惑から、分断へ② 後編

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「……せいぜい、痛い目に遭うがいいわ」

 誰にも聞かれないように、吐き捨てるように呟いた。
 レイド本隊が遠ざかっていく背中を見送りながら、B班リーダーは拳を握りしめる。

「信じられるものなんて、最初からなかったんだ――ッ!?」

 そのときだった。
 背後に、気配。

「……誰だ?」

 振り返る。
 そこに立っていたのは――死んだはずの人物だった。

「やあ、昨日ぶり」

 その声は、あまりにも自然で、あまりにも明るかった。
 まるで、何事もなかったかのように。

 だが、その瞳。
 闇色に染まった瞳が、すべてを否定していた。

「……お前、死んだはず……」

「うん、死んだよ」

 にこやかに、まるで冗談のように言う。
 その笑顔が、異様だった。

 温度がない。
 感情がない。
 ただ、形だけの『笑顔』。

「でもね、君たちが『見捨てた』おかげで、こうして戻ってこれたんだ」

「……何を言って……」

「だから、礼を言いに来たんだよ。『痛い目』って、どんなのがいいと思う? 君が望むなら、特別に見せてあげるよ」

 その瞬間、空気が変わった。

 冷たい。
 重い。
 まるで、深海に引きずり込まれるような圧。

 B班リーダーは、言葉を失った。
 目の前の『それ』は、もう人ではなかった。

 かつての仲間の姿をしているだけの、何かだった。

「さあ、始めようか。君の『痛み』から」

 笑顔のまま、影が一歩、近づいた。

 その足音は、静かで――でも、確実に『終わり』を告げていた。

      ◇

「さあ、始めようか。君の『痛み』から」

 その言葉に、空気が凍った。
 笑顔のまま近づく『影』に、B班リーダーは身を強張らせる。

 だが――

「なんてね」

 その声は、あまりにも軽かった。
 まるで、冗談のように。
 だが、頬に触れた指先は、冷たくて――生々しかった。

『影』は一歩、距離を置いた。
 そして、静かに言った。

「今回のレイドは明らかな失敗だ。企画した大人たちには、責任を取ってもらう。地上に戻ったら、学校ごと訴えよう」

 その言葉に、B班メンバーたちは息を呑んだ。

 驚愕。
 混乱。
 そして――納得。

「……確かに、限界だった」
「誰も守ってくれなかった」
「命を預けるには、あまりにも危うかった」

 一人、また一人と頷いていく。
 その表情には、怒りよりも疲れが滲んでいた。
 でも、その疲れの奥に――静かな炎が灯っていた。

「証言は揃ってる」
『影』が言う。

「記録もある。通信履歴も、映像も、全部残ってる」

「……本当に、訴えるのか?」

 B班リーダーが問う。
『影』は、にこりと笑った。

「もちろん。これは『復讐』じゃない。『清算』だよ」

 その言葉に、誰も反論しなかった。

 なぜなら、誰もが心のどこかで、この結末を――望んでいたのかもしれなかったからだ。

 ◇

「命を奪うだけが復讐ではないさ。あ、命『も』貰うけどね。ふふっ」

 63階層の『拠点』に戻ったカルマが、誰に言うでもなく、呟いた。

 死ねばそれで許される時代は、終わった。
 未来永劫、不名誉を背負うがいい。

 歴史が彼らを記憶する。
 歴史が彼らを断罪し続ける。
 それが、本当の復讐だ。

「それにしても、みんな『役者』だね」

 それぞれが、自分で自分に役を割り振って演じていた。

 ヒーロー。
 犠牲者。
 正義。
 裏切り者。
 誰もが、自分の台本だけを信じていた。

 彼ら、彼女らは気付くべきだった。
『自分たち以外』の敵意がある可能性を。

 そうしていれば、団結できた。
 絆を強められた。
 少なくとも、失うことはなかったはずだ。

 カルマに言いように踊らされることは、なかったはずだ。

 なのに――結果として、戦力を分断した。

 266人を数えたレイド遂行人員は、今や本隊24人だけとなったのだ。

 それは、カルマの『演出』が完璧だった証。

 そして、舞台はまだ終わらない。
 次の幕が、静かに上がろうとしていた。

    ◇

「で、ついに来たわけだ」

 『時』が来ていた。

 「新たな劇場、仕掛け満載の舞台、多様な舞台装置。新時代の幕開けだ!」
 主力の分断に勤しんでいる間に、悠や友梨先輩が頑張ってくれて、『マナポイント』が溜まっていたので、『ダンジョンポイント』に変換。
 レベルアップした。

『『ダンジョンレベル』が70となりました。レベル70までのモンスターを作成可能です。このレベル帯のモンスターの配置位置を変更できます。また、新たに65階層から70階層までを作成可能となります』
「おお。追加できるんだ?」

『可能です。『ダンジョンポイント』を消費しての作成が可能です』
「あー、ポイントかぁ」
 と、カルマは苦笑した。

「いくら?」
『一階層に50000ポイントです』

 少な!
 レベル上げと比べるとすごい少ない。
 高レベルモンスター並みと言っていい。

 「それなら気楽に作れるな」
 レベルを上げるのに百万ポイント越えだったからな。

 『ソウルポイント』もいらない。
 『マナポイント』は常時増加中。
 気楽に作っていけそうだ。

 『テーマ』は『学園祭』、『属性』は『妖怪』。ダンジョンの内装は『学校』。
 
「感情が転がる廊下、記憶の保存された教室、在りもしない思い出の欠片たち。廃坑になった木造校舎で行ってみよう!」
 とりあえず、5階層分を丸々学校にしてしまおうじゃないか。
 
「在りし日の激情、忘れ去ったはずの記憶、紡がれなかった思い出。掘り起こし、暴いて、生み出そう」
 カルマはノリノリで設計に入るのだった。

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