『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第131話 主力の到達 ~ようこそ、三途の川中学校へ~ 後編

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「チッ! 増えてやがる」

 サブマスを追った先、下へと続く通路が口を開けていた。

 65階層――新たな領域。

「どうせ数階だろ! 追い詰めんぞ!」

 終わりは、見えている。
 見えている『はず』だ。

 その確信を胸に、通路を――駆け下りた。

 だが、彼らはまだ知らない。

 その先に待つのは、『終わり』ではなく、『始まり』だったことを。

    ◇

「な、なによ? これ?」

 通路を抜けると、そこは――

「……校門?」

 学校の入り口と思しき場所だった。

 これまで通りの土の通路から、突然『広間』へと出る。

 その広間には、奥へ繋がる通路。
 左右には、石柱が立っていた。

 そこには、こう記されていた。

『三□川中学校』

「三川中学校?」

「よく見なさい! 『三』と『川』の間に隙間があって…… 薄れててよく見えないけど。たぶん……『ず?』があるわ」

「……なら、『みかわ』ではなく――『さんずがわ』中学校、か?」

「……それ、まさか。『三途の川』なんじゃ?」

「…………」

 沈黙。
 空気が、ひときわ冷たくなる。

「と、とにかく進むぞ!」

 校門を抜けて、通路を進む。

 再び開けた場所に出た。
 そこは――


「昇降口?」
 靴箱がずらりと並んでいる様は、まさに学校の昇降口だ。

「写真で見たことあるわね。古臭い木造校舎だわ、コレ」
「ああ。廃校なら見たことある。今はレストランになっていたな。確かに雰囲気は似てる」
「田舎臭くてきらーい」
「コンクリートってのも味気ないと思うけど」
 口々にそんなことを言いつつも、ゆっくりと踏み込んでいく。

 木の廊下が続いていた。
 歩くたび、ギシギシと軋む音が、妙にリアルだ。

「この雰囲気って、アレに似てない?」
「アレってなによ?」
「お化け屋敷『学校の怪談』」
 あー、確かに。
 全員が頷く。

「管理者がサブマスになって、『属性』が変わったんじゃねぇか?」
「それだ!」
 納得して、探索が始まった。


 昭和初期かと言いたくなるような。
 モノクロの写真でしか知らない校舎の中を、本隊の残りは24人が歩いていく。

 人のいる気配がない木造の校舎。
 いたるところに『学園祭』の準備でもしているのかという飾り付けがされていた。

 昇降口に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。

 古びた木の匂い。  
 湿気を含んだ埃の香りが、鼻の奥をくすぐる。  
 床は艶のない板張りで、踏むたびにギシギシと軋む音が響く。

 左右の壁には、年季の入った下駄箱がずらりと並んでいた。  
 木製の扉はところどころ歪み、塗装は剥げ、角が丸くなっている。  
 誰かが落書きしたような跡もあるが、文字はすでに読めない。

 天井は低く、梁がむき出しになっている。  
 その梁には、古い釘や紙片が残っていて、かつて何かが掲げられていたことを思わせる。

 窓は曇りガラス。  
 外の光がぼんやりと差し込むだけで、空間全体が灰色に沈んでいる。

 傘立てには、誰のものとも知れない傘が数本、無造作に突っ込まれていた。  
 靴箱には、サイズも形もバラバラな靴が並んでいる。  
 まるで、誰かが今もここに通っているかのように。

 だが、気配はない。  
 静かすぎる。  
 音が吸い込まれていくような、異様な静寂が支配していた。

「逆に、キモチワルイ!」
「ただでさえ、木造ってコワいのに!」
 女子からブーイングが飛んでいた。

 舞台は、昇降口。
 お出迎えするのは――傘と靴。

 ありふれた、でも見慣れないものたち。
 その『静けさ』が、逆に不気味だった。

 傘立てには、色褪せたビニール傘が無造作に突っ込まれている。
 靴箱には、サイズも形もバラバラな靴が並んでいた。
 どれも、今にも誰かが履いて出てきそうなほど、整然としている。

 その時だった。

 ギィ……

 靴箱の奥で、一足の靴が、ゆっくりと向きを変えた。

 まるで――誰かが、そこに立っていて、履こうとしているかのように。

 誰もいないはずの空間で、『誰か』の存在が、確かに動いた。

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