『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第165話 最後の10人 ~リーダーの独白~

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 俺は、守るために剣を持ったはずだった。
 仲間を、未来を、そして——一葉を。

 でも、気づけばその剣は、仲間の血を吸い、信頼を断ち切る刃になっていた。

 あの人たちは、元探索者だった。
 俺たちに『夢』を語った。
「犠牲は美しい」「勝利は正義だ」って。

 俺は、それを信じた。
 信じたかった。
 だって、それがなければ、この地獄に足を踏み入れる理由がなかったから。

 だから、カルマを『爆弾』にすることも、正義だと思った。
 必要な犠牲だと、思い込んだ。

 でも、今思えば—— あれは『演出』だったんだ。
 俺たちが舞台に立つための、都合のいい脚本。

 カルマを爆弾にしたのは、俺じゃない?
 そう言い切れるか?

 サブリーダーを見捨てたのは、俺じゃない?
 そう言い切れるか?

 言い切れない。

 一葉だけは守りたかった。
 それが、俺の『正しさ』だった。
 でも、正しさってなんだ?

 誰かを守るために、誰かを犠牲にすることか?
 それは、選別だ。
 裁きだ。
 神の真似事だ。

 俺は、英雄になりたかった。
 でも今、俺は——舞台の上の悪役だ。

 カルマは、それを見抜いていた。
 俺は、ただ乗せられていただけだった。
 自分の意志だと信じていたものは、全部、誰かの台本だった。

 それでも、剣は握っている。
 それしか、俺には残っていない。

 剣を捨てたら、俺はもう、何者でもなくなるから。

 たとえ、この手がまた誰かを傷つけるとしても。
 たとえ、最後に残るのが俺一人だったとしても。

 俺は、剣を握る。
 それが、俺の罰だ。

 ◆回想:生徒指導室にて◆

 広くはない部屋。
 窓は曇りガラス。
 テーブルとイスがあるだけの、密談のために用意された空間。

 テーブルの向こうには、歴戦の戦士の風格を纏った二人の大人。
『元探索者』の教師たち。
 だが、その目は、戦場ではなく『舞台裏』を見ていた。

 教師A(微笑みながら):「君は、よく頑張ってるね。みんなをまとめて、責任を背負って……本当に立派だよ」

 リーダー:「でも……人を爆弾にするなんて……それは……」

 教師B(穏やかに):「君が決めることじゃないよ。これは、『全体最適』の判断なんだ。君の役割は、納得することだよ」

 教師A:「カルマくんも、きっとわかってる。彼は『支える側』の子だから。そういう役割の子は、必要なんだよ」

 教師B:「それに、彼の魔力は特別だ。君の剣が輝くために、彼の火種が必要なんだ。」

 リーダー:「…………」

 教師A(優しく肩に手を置いて):「君が決めたってことにしておこう。その方が、皆も君を信じる。『自分たちのリーダーが選んだ』って思えば、納得する」

 教師B(微笑みながら):「英雄って、そういうものだよ。誰かの痛みを『演出』に変えて、物語を進める人」

 教師A:「さあ、行こう。君の選択が、皆を救うんだ。『正義』は、後からついてくる」

 教師B:「そして、カルマは『名を残す者』になる。君の物語の礎としてね。美しいじゃないか?」

 リーダーは、黙っていた。
 何人かの顔が、脳裏をよぎった。

 笑いかけてくれた顔。
 ちょっと悲しそうな顔。
 怒って首を振った顔もある。

 でも——

 そのどれもが、もう戻ってこない未来の幻影のように思えた。

 英雄になる。
 それが、皆を救う唯一の道だと、信じ込もうとした。

 リーダー:「……わかりました。僕が……みんなに伝えます」

 その瞬間、部屋の空気が変わった。
 教師たちの目が、満足げに細められる。

 教師A(小声で):「……これで、舞台は整ったな」

 教師B(低く):「あとは、彼が『正義』を演じきるだけだ」

     ◇

 そうして『レイド』は始まった。
 うまくいってた。
 最初は、完璧だった。

 カルマのために、最高に泣ける演説原稿を何度も書き直した。
 言葉の順番。
 間の取り方。
 感情の込め方。
 嚙んだりしないように、鏡の前で何度も練習した。

『彼の死』が、みんなの心を一つにするように。
『彼の犠牲』が、俺たちの正義を照らす灯火になるように。

 きれいに終わらせられるはずだったんだ。

 ——でも。

 今、俺の手は血に濡れている。
 カルマの血じゃない。
 仲間の血だ。

 あの演説は、誰のためだった?
 カルマのため?
 皆のため?
 それとも——

 俺自身のためだったんじゃないのか?

 英雄になりたかった。
 称賛される存在に。
『正しい選択をした人間』として、誰かの記憶に残りたかった。

 でも、今の俺は?
 剣を振るうたびに、信頼が砕け、絆が裂けていく音がする。

 カルマは、笑っていた。
 あの時も、今も。
 全部、知っていたんじゃないか?

 俺が『演じていた』ことも。
 俺が『信じたフリ』をしていたことも。

 ああ、もうやめてくれ。

 頭の中で、あの演説がリフレインする。
「彼は、僕たちのために——」「彼の犠牲を、無駄にしないために——」

 誰のための言葉だった?

 俺は、誰を守った?
 俺は、誰を殺した?

 俺は、何者だった?

 それでも、剣は手放せない。
 それを捨てたら、俺は、ただの『加害者』になる。

 せめて、最後まで演じきろう。
 悪役としてでもいい。

 この舞台が終わるその時まで、俺は、剣を握り続ける。

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