『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
282 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第167話 最後の10人 ~終焉へ~

しおりを挟む
 

 リーダーは、その姿を見ていた。
 そして、悟った。

 自分の中の『演説』が、もう誰にも届かないことを。

 夢を、現実が塗りつぶしている。
 名前だけの『英雄』となるはずだったカルマは、生きていて、目の前にいる。

 何より、実質的な『英雄』として凱旋するはずだった自分は、打ちひしがれている。

 もう、何もかもが届かない。

(ああ、そうか。現実的じゃないから、あの原稿は書けなかったんだ)

 何度書き直しても、しっくりこなかった。
 頭を悩ませた夜が、思い出される。

 事実ではなく、虚言だったから。
 真実ではなく、ただの願望……野望だったから。

 元が歪んでいるものを、どうにかまっすぐにしようとしていた。

『徒労』とは、こういう時に使うのか。

 英雄になれると思っていた。
 犠牲の上に、雄々しく立ち上がる『英雄』。

 だけど——

 リーダーは、わずかに口を歪めた。
 思い出す。

『犠牲を出させない、傷だらけの英雄』。

 それこそが、真に彼が夢見ていた『英雄像』だった。

 夢を諦めた『大人』の言葉に、耳を傾けすぎたのだ。

 でも——

 それを認めるわけにはいかない。

 認めた瞬間、自分が『誰かの犠牲を選んだ人間』になるから。

 だから、剣を握る。
 だから、口を閉ざす。
 だから、まだ『英雄』を演じ続ける。

 ◇レイドの終焉◇

「お、おまえ! な、仲間を?!」

 殺したのか?!
 そう責めたいのだろう。
 けれど、その言葉に込められた怒りは、どこか空虚だった。

 ようやく、自我を取り戻したリーダーが、『再起動することにした』自分を奮い立たせるように、声を荒げた。

 だが——

「先に殺しにかかったのは、そっちだろ?」

 カルマは、静かに首を振った。
 その動きは、拒絶というより、呆れに近かった。

「人を爆弾として使っておいて、被害者ぶるのはやめてくれ」

「ふ、復讐だとでもいうつもりか?!」

「それ以外あるか?」

 カルマの声は、静かで、冷たい。
 だが、その奥には、燃え尽きた怒りの残り火が、確かに揺れていた。

『ダンジョンマスター』としての職務もある。
 だが、今ここに立つ彼の心を支えているのは、それ以上に、『復讐』という名の答えだった。

「た、多数の必要は……」

「少数の必要に勝る? その言葉、オレも好きだからよく知ってるけど——無断で切り捨てられる身としては、頷けないよね」

 カルマの瞳が、リーダーを射抜く。
 その視線は、一切の揺らぎを許さない。

「正直、他人の命なんて、いくつあっても気にならないよ。おまえらだって、そうだろ?」

 ——そう。
 カルマは、自分を捨てて、仲間のために働いてきた。
 罵倒されても、役立たずと呼ばれても、それでも、支えることを選んできた。

 その『礼』が、爆弾としての死。

 納得できるはずがない。

 もしかしたら、事前に説明されて、頭を下げられていたら——納得してしまえたかもしれない。

 でも、何の相談もなく、ただ『素材』として処理された。

 恨むなというほうが、無理だ。

 せめてあの時、魔力の返還に乗せて、誰か一人でいい。
「ごめんね」「ありがとう」「さようなら」
 どれか一言でも、言葉をくれていたら。

 ——そうすれば、カルマは『復讐』を選ばなかったかもしれない。

 ただの『ダンジョン経営者』として、誰の命も奪わず、追い返すだけの存在でいられたかもしれない。

 でも、その可能性を、彼ら自身が否定した。

『復讐』は、カルマが望んだものではない。
 彼らの選択が導いた、唯一の答えだった。

 あの時、誰かが名前を呼んでくれていたら——その可能性は、確かにあった。

 カルマの脳裏に、妖怪たちの姿が浮かぶ。
 彼女たちなら、たとえ素直な言葉でなくても、何かを伝えてくれたかもしれない。

 でも、彼女たちの選択は——『沈黙』だった。

 沈黙。

 あれは拒絶じゃないと、信じたかった。
 でも、信じる理由が、もうなかった。

 いや、それは——『終わってから』だ。

 カルマは、ふと目を伏せた。
 そして、静かに顔を上げる。

 リーダーたちを見据えるその瞳には、もう迷いはなかった。

 終わらせる覚悟。

 それだけが、彼の中に、確かに残っていた。

「クソがッ!!」

 議論は、もはや平行線。
 言葉は届かない。
 ならば——と、リーダーは剣を握り直した。
 怒りと後悔を刃に変えて、カルマへと躍りかかろうとする。

 だが——

「いいのかな? 一人にして?」

 カルマが、ふと一葉に視線を向けた。
 その声は、からかうようでいて、鋭く突き刺さる。

「?!」

 リーダーの足が止まる。
 反射的に振り返る。
 その視線が、一葉の瞳とぶつかる。

 一葉の瞳が、揺れていた。
 まるで、自分が『人質』になったことを、今、ようやく理解したかのように。

 そして——リーダーは、気づいた。

 一葉ににじり寄る影の存在に。

 おかしな仮面で顔を隠したその影。
 64階層で見た、ダンジョンの『サブマスター』。

 真梨華。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...