『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第168話 最後の10人 ~そして、終焉~

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「させるかぁっ!!」

 リーダーは、全力で駆け戻った。
 剣を振るい、氷の床を裂きながら、ただ一葉のもとへと。

 ——間に合った。

 一葉は、無事だった。
 その代わりに、倒れ伏したのは——

「『真梨華』?!」

 仮面が外れ、露わになったその顔。
 それは、『レイド』のサブリーダー。
 かつて、共に戦い、共に夢を語った仲間。

「……あーあ。昔の女を殺して、新しい女に乗り換えか? ヒドイな」

 カルマの声が、毒のように甘く、冷たい。

「お、おまえぇぇ! おまえが仕組んだのか?!」

「まぁ、そうだな。でも——本人の希望でもあるよ?」

 カルマは、肩をすくめた。
 全体の段取りは、彼が書いた。
 だが、一葉を狙う役を買って出たのは、真梨華自身だった。

「一葉、大丈夫か?!」

 リーダーが、一葉を抱きしめるようにして支える。
 その華奢な体が、震えていた。

「え、ええ。平気よ……」

 言葉は返った。
 だが、その声は、どこか遠く、空虚だった。

 守られたはずなのに、なぜ、こんなにも痛いのだろう。

 私が壊したのは、誰だったんだろう。

 カルマ?
 沙羅?
 真梨華?
 それとも——

 リーダー?

 ふと、視線が真梨華に向いた。

「ッ?!」

 視線が、合った。
 その瞬間、心の奥で何かが砕けた。

『支え』が、破壊された。

「——裏切者」

 真梨華が、血に濡れた片手剣を握りしめ、地に伏しながらも、なおリーダーを睨みつけていた。

 その目は、怒りでも憎しみでもない。
 ただ、真実を突きつける者の目。

 彼女が見ていたのは—— 『自分を見捨てた男』だった。

      ◆

【「一葉をどうしたかったの?」 「とりあえず、八つ裂きかな?」 「!? ……そう。なら、それは私にやらせてちょうだい。チャンスを作ってくれれば、私がっ……」】

 ——殺す。

 触れられそうなほどの殺気が、空気を裂いた。

「わかった。一葉を殺す役は君にあげるよ」

 契約が、成立した。

 その時、カルマはこう続けていた。

「チャンスは二度ある。君の体には、傷を修復してくれる存在を仕込んである。リーダーなり一葉なりにやられても、すぐに死ぬことはない」

 それは——『妖霊虫』。

『再生虫』の妖怪版。
 死体となっても、魂を体にとどめ、『死後の一撃』を可能にする、禁忌の存在。

 もちろん、妖怪化まではしない。
 それには、カルマとシステムの協力が必要だ。
 だが、それでも—— 『一度死んだくらいでは死なない』身体が、そこにあった。

 さらに、真梨華は人間のまま『ダンジョンのサブマスター』に指名されていた。
『マスター』に人間がなれるのなら、『サブマスター』に制限はない。

 その階級に合わせて、いくつかの称号とスキルも付与されていた。
 心臓が止まっていても、そこからさらに動く。
 それが、カルマの用意した『舞台装置』だった。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 真梨華が、狂乱の叫びをあげて襲いかかる。

 その動きは、もはや人間ではなかった。
 死を超えた執念が、肉体を突き動かしていた。

 リーダーが剣を構える暇もなかった。
 一葉が悲鳴を上げる間もなかった。

 刃が閃き、血が舞い、命が散った。

 サブリーダーも、リーダーも、一葉も。
 誰一人として、生き残ることはなかった。

 残り、0人。



「そして、誰もいなくなった、と」

 カルマが、静かに呟いた。
 その声には、達成感も、喜びもなかった。

 ただ、一つの物語が終わったことを告げる声。

『全校生参加の最下層攻略レイド』は、ここに——

 完全に、失敗した。


「終わり、ね」
 悠が、平坦な声を落とした。

「そうなることは、わかっていたけど…」
 友梨が、静かに息を吐く。

 妖怪たちは複雑な顔で顔を見合わせていた。

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