『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
294 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第178話 歌劇への招待 ~それは演目~ 前編

しおりを挟む
 

 生徒たちは、走る。
 足音が響く。
 魔力が揺れる。
 誰かが振り返り、誰かが前を見据える。

「こっちだ! 通路が開けてる!」

「援護する! 魔法、展開!」

 若さと瞬発力。
 それは、今この瞬間にしか発揮できない——『生きる力』だった。

 魔力が迸る。
 風が巻き、光が走る。
 仲間の背を押すように、魔法が道を拓いていく。

 一方、教師たちも動く。
 かつて探索者だった者たち。
 だが、今は教壇に立つ者。

 十年のブランクは、体にも心にも重くのしかかっていた。

「止めろ! 逃がすな!」
「魔術障壁、展開……っ、くそ、遅れた!」

 経験はある。
 だが、体が追いつかない。
 魔力の流れが鈍い。
 足がもつれる。
 判断が一瞬、遅れる。

 その一瞬が、生死を分ける世界で。

 それでも、彼らは動く。
 守るためではない。
 逃げるためでもない。

 ただ、自分たちの『立場』を守るために。

 名誉。
 地位。
 報酬。
 責任逃れ。

 それらを守るために、命を狩る。

「前、塞がれた!」
「別ルートに回る! ついてきて!」

 生徒たちは、迷宮の構造を読み、即興で道を選び、走る。

「後ろ、来てる! 早く!」

 誰かが振り返り、誰かが仲間を引っ張る。
 誰かが、傷を負った者を背負う。

 それでも、走る。

「生きる」ために。

 教師たちは、追う。
 だが、息が上がる。
 視界が揺れる。
 魔力の制御が乱れる。

「くそ……若い奴らが……!」

 焦りが、判断を鈍らせる。
 怒りが、視界を曇らせる。

 彼らは、もう『探索者』ではなかった。

 それでも、追う。
 自分たちの過ちを、『証拠ごと』消すために。

 迷宮の空気が、熱を帯びる。
 魔力の残滓が、壁を焼き、床を焦がす。
 逃げる者と、追う者。

 その差は、『何のために走るか』だった。

 ◇観察者(カルマ)◇

 予想はしてた。
 だけど——

「躊躇なしか」

 カルマは、首を振った。
 まさか、いきなり殺しにかかるとは。

 懐柔策や、脅し。
 あるいは、責任の押し付け合い。
 その程度の『醜さ』なら、想定内だった。

 だが、いきなり暗殺。
 それは、『教育者』の仮面すら脱ぎ捨てた行動だった。

「困ったな」

 まったく困っていない顔で、カルマは、呟いた。

 その目は、冷たく笑っていた。
 まるで、『これでようやく始められる』とでも言うように。

    ◇

 生徒たちは、命を守るために戦う。
 教師たちは、過去を守るために戦う。

 数は拮抗していた。
 質も、互いに一長一短。
 だからこそ、戦場は混沌とした。

 魔法が飛ぶ。
 剣が交わる。
 叫びが響く。
 誰かが倒れ、誰かが立ち上がる。

 血が、床を染める。
 涙が、煙に溶ける。

 それでも、誰も止まらない。
 止まれない。
 ここは、もう『教室』ではないから。

 その中で、少年は前に出る。
 少女の背中を追ったその足で、今度は、仲間の盾となる。

「来いよ、先生。俺たち、もう『生徒』じゃないんだ」

 その言葉に、教師の一人が足を止めた。
 迷いが、戦場に生まれた。

 そう。
 戦場だ。
 モンスター相手ではない。

 人と人。
 教える者と、教えられた者。

 その関係が、血と怒りと誓いの中で、崩れ去っていく。

 迷宮が、静かに息を潜める。
 まるで、見守るように。

 今、幕が上がるのは——人と人の、命を懸けた舞台。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...