『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第193話 呪い ~呪われた少女~ 前編

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「結局、呪われていたのは誰?」

 その問いの答えを知っていたのは、たった二人。

 一人は追跡者。
 呪いの痕跡を追う、女教師の呪術師。
 もう一人は逃亡者。
 呪われている『当人』。

「だって、しょうがないじゃない・・・!」

 その言葉は、誰にも届かない。
 届いてほしくなかった。
 でも、自分の中では何度も繰り返していた。
 まるで呪文のように。
 それを唱えなければ、心が崩れてしまいそうだった。

 あの瞬間、目の前にあったのは“死”だった。
 胸に矢を受けた少女の、無表情な顔。
 冷たい目が、自分を見ていた。
 狙っていた。

 怖かった。
 本当に、怖かった。
 だから、反射的に動いた。
 隣にいた仲間を——押した。
 盾にした。

 仲間が倒れた。
 そして、目が合った。

 死の間際、仲間は自分を見ていた。
 責めるでもなく、叫ぶでもなく。
 ただ、見ていた。
 その目が、焼き付いて離れない。

「しょうがなかったんだよ・・・」

 そう言いながら、心の奥ではわかっていた。
『自分の命』を守るために、『誰かの命』を差し出した。
 それが、事実だった。

 誰にも言えない。
 誰にも見られたくない。
 でも、自分だけは知っている。
 あの目が、今も心の奥で、じっと見ている。

「なんで・・・?」

 誰かが呟いた。
 その声は、誰に向けたものでもなく、ただ空気に溶けていった。

 何度撒いても、追手がついてくる。
 通路を曲がり、魔法で痕跡を消し、足音を散らしても——それでも、教師たちは正確に追ってくる。

「・・・呪いが、まだあるんじゃ?」

 魔術師の少女が、青ざめた顔で言った。
 その言葉に、皆が黙り込む。

 呪い持ちだと思って、盾の少女を置いてきた。
 彼女の足に黒い染みがあったから。
 呪いの『印』だと思ったから。

 でも——それでも、追ってくる。

「まさか・・・」

 誰かが言いかけて、口をつぐむ。
 その続きを、誰も言えなかった。

『呪い』を持っているのは、ほかにいたのではないか——?

 その疑念が、仲間たちの間に静かに広がっていく。
 誰かが、そっと距離を取る。
 誰かが、他人の背中をじっと見つめる。

「・・・誰か、呪われてる?」

「いや、そんなはず・・・」

「でも、じゃあなんで・・・」

 言葉が、疑いの種になる。
 目線が、刃になる。
 沈黙が、呪いになる。

 誰もが、自分の中に問いを抱えながら、仲間の顔を見ていた。
 その瞳には、信頼も、安心も、もうなかった。

 ただ、見えない『印』を探していた。
 誰かの背中に、誰かの手に、誰かの瞳に——呪いの痕跡を。

 そして、誰かが気づく。

「・・・あの時、あの子、何か・・・」

 その言葉に、空気が揺れる。
 誰かが、そっと一歩下がる。
 誰かが、剣の塚に手を置く。

 疑心暗鬼は、もう止まらない。
 呪いは、誰かの中にある。
 でも、それが誰なのか——誰も、確かめる勇気を持っていなかった。

 通路の奥から、足音が響く。
 教師たちが、近づいてくる。

「・・・どうする?」

 誰かが問う。
 でも、その問いに答える者は、いなかった。

 ただ、誰もが——誰かを見ていた。

「・・・確認、するべきだよね」

 誰かが言った。
 でも、その声は誰にも届かなかった。
 いや、届いたけれど——誰も応えられなかった。

『呪い』が誰に宿っているのか。
 それを確かめる方法は、ある。
 呪術師の女教師が使っていた『痕跡探知』の魔法。
 簡易版なら、呪術師でなくても扱える。
 魔力の流れを見れば、わかるかもしれない。

 でも——誰も、それを使おうとしなかった。

「・・・呪いって、どんな形なんだろうね」

 魔術師の少女が、ぽつりと呟く。
 誰も答えない。
 それは、誰にもわからないから。

 目に見える傷?
 黒い染み?
 心の中の罪?
 それとも——誰かの視線?

 確認したい。
 でも、確認した瞬間、自分が『それ』だったらどうする?

 その恐怖が、皆の足を止めていた。

「・・・私じゃないよね?」

 誰かが言った。
 でも、その言葉に誰も頷けなかった。
 誰もが、自分の中に『それ』があるかもしれないと思っていた。

 あの時、逃げた。
 あの時、見捨てた。
 あの時、見て見ぬふりをした。

 その『記憶』が、呪いの形をしているのなら——誰もが、呪われている。

 呪いって、誰かにかけられるものじゃない。
 自分で、自分にかけるものなんだ。

 だから、誰も確認しようとしなかった。
 誰かを疑うことは、自分を疑うことだったから。

 通路の空気が、重く沈む。
 誰も動かない。
 誰も、目を合わせない。

 ただ、静かに——自分の影を見つめていた。
 その影が、呪いの形をしていないことを祈りながら。

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