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6章 女装して辺境伯領を堕とした(10歳)
115話 世界の意思、それとも
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「貴方たち、良い子ねぇ……? こんなに魔力を集めてくれて……後でイ・イ・コ・トしてあげる……♥」
「「「ギャッギャッギャッ!」」」
マルテルさんが目を見開き――その、あいかわらずに紫の肌に白い髪の毛という奇抜すぎる、けれどもぼんきゅっぼんな肉体に、紐でしかない扇情的な格好をして――背中に羽を、額に角を生やした人外を見つめる。
エロディーさん――いや、エロディー。
特にジュリオン様ラスボスルートでは、悪の女幹部として、魔族としてなら良い面もたくさんあり――その言動と見た目とのギャップも相まって、でもやっぱりセンシティブ面での人気がすごかった魔族。
――ただ、それは「ゲームのキャラクター」だからこそ。
それは自分たちに何の害も及ぼさないからこそで、この世界に住む人類にとっては仇そのもの。
直接的に自分たちを殺しにかかってくる――しかもエグい手で――存在のことは、今となっては敵でしかない。
「ということは、ここ数ヶ月で急にこのダンジョンからモンスターが溢れてきたのは……」
ぼそぼそと、顔を青くしたマルテルさんが言う。
「ええ、魔王に従って行動する魔族――サキュバスの彼女が何かがあって復活し、彼女の得意とする人の精神を捕食する力で、ゴブリンやオークを……ということでしょう。数ヶ月前に、復活した」
――3年前に僕が倒したはずなのに、エロディーさんが、復活している。
なぜ?
あのとき――3年前のあのときに、確かに吹き飛ばしたはずだ。
それはもう、本来なら主人公パーティー以外では耐えられないはずの必殺技・ジャッジメントで――当時はまだ駆け出しすぎたから威力は控えめでも、それでも本来なら壊せないはずのダンジョンの壁を貫いてまで葬ったはずなのに。
――「世界の流れ」。
「ゲーム本来の歴史」。
それが、「本来ならあの場面では討伐されずに主人公たちに立ち塞がる強敵」として、因果関係をねじ曲げてでも復活という形になった?
――それとも、僕っていう「将来の魔王候補」が存在し、それがこのダンジョンへ降りて「くる」から「彼女が復活するという現象」が?
「………………………………」
つぅ、と、こめかみを汗が伝う。
そうだ――「彼女が存在しないと、主人公くんに意趣返しをされてふてくされていたはずのジュリオン様が、彼女に見初められて魔王になるラスボスルート」が出現しない。
彼女がサキュバスという種族属性の特徴として、他の魔族に比べると――厄介にも人間に対して好意的で理解のあるからこそ、人間のジュリオン様の素質を見初めるという条件が、存在しない。
だから、復活した。
サキュバスと同様に人間を糧とするオークやゴブリンたちが協力して。
――もちろん、この世界が本物であって、ゲームではないと知っている。
けども、この3年間ずっと考えてきた。
ゲームでの内容が、この世界の未来と近似するものであって――主人公ではない僕がどう行動するかにかかわらず、この世界で起きるべき未来は何があっても起きるんだっていう、SF的に言えば「世界線の収束」とでも表現できる事象が立ち塞がる可能性を。
「……ふぅん、中々に強いらしい女の子がいっぱぁい……あと男の子ねぇ。とりあえず私が女の子を味見するから絶対に手を出しちゃあダメよぉ? え? 男の子? あの怯えてるのはよっぽどかわいくない限りどうでも良いから、あんたたちが好きにして良いわぁ」
「ひっ……!?」
「兄ちゃん、しゃべっちゃダメだってば」
テオくんがおしりを抱えて地面にしゃがみ込んでいる。
……そりゃあ男として危機感しかないよね……遠くには最低でも10体以上のでっかいオーク――いや、あれは終盤にならないと登場しないはずのトロール?――が、エロディーさんにはべってるし。
今、彼が感じている恐怖は、ですの姉妹やマルテルさんたちが感じているのと変わらない。
――この世界では男も苗床にされる。
生命力、魔力が尽きるまで――可能な限りに長持ちさせられて、人間の敵を量産させられる。
つまり、この戦いに負けたら僕だってそういう運命をたどる。
「……撤退しましょう、ユリア。みんな、すぐに」
「ええ……あまりにもリスクが高すぎます。みなさん、静かに、けれど迅速に――――――」
警戒のためにエロディーさんから離さなかった目を離して、後ろを向いてみんなへ指示しようとした僕は、
「――――――みぃつけたぁ……♥」
――――――ぞわり。
肌が粟立ち、お腹が冷える感覚で振り向いた、その30センチ先。
僕の目線に合わせ、しゃがみ込んで――綺麗だけど恐ろしい、黒い白目の中に浮かぶ真っ白な目を僕に向けている――恐ろしいくらいに良い匂いを振りまいている、魔族が居た。
「あのときの、かわいい子……ずっとずっと、ずぅーっと、待っていたわぁ……♥」
身の毛がよだつほどの、整った顔。
その表情は、僕がこの世界で生まれて育った3年間で見たことがないほど――根源的な恐怖、そのものだった。
◆◆◆
定期のないない(治療)のため、次回の投稿は次週の金曜日です。
更新が止まるこの期間、ぜひ他の小説、またはプロフより他のコンテンツをお楽しみくださいませ。
「「「ギャッギャッギャッ!」」」
マルテルさんが目を見開き――その、あいかわらずに紫の肌に白い髪の毛という奇抜すぎる、けれどもぼんきゅっぼんな肉体に、紐でしかない扇情的な格好をして――背中に羽を、額に角を生やした人外を見つめる。
エロディーさん――いや、エロディー。
特にジュリオン様ラスボスルートでは、悪の女幹部として、魔族としてなら良い面もたくさんあり――その言動と見た目とのギャップも相まって、でもやっぱりセンシティブ面での人気がすごかった魔族。
――ただ、それは「ゲームのキャラクター」だからこそ。
それは自分たちに何の害も及ぼさないからこそで、この世界に住む人類にとっては仇そのもの。
直接的に自分たちを殺しにかかってくる――しかもエグい手で――存在のことは、今となっては敵でしかない。
「ということは、ここ数ヶ月で急にこのダンジョンからモンスターが溢れてきたのは……」
ぼそぼそと、顔を青くしたマルテルさんが言う。
「ええ、魔王に従って行動する魔族――サキュバスの彼女が何かがあって復活し、彼女の得意とする人の精神を捕食する力で、ゴブリンやオークを……ということでしょう。数ヶ月前に、復活した」
――3年前に僕が倒したはずなのに、エロディーさんが、復活している。
なぜ?
あのとき――3年前のあのときに、確かに吹き飛ばしたはずだ。
それはもう、本来なら主人公パーティー以外では耐えられないはずの必殺技・ジャッジメントで――当時はまだ駆け出しすぎたから威力は控えめでも、それでも本来なら壊せないはずのダンジョンの壁を貫いてまで葬ったはずなのに。
――「世界の流れ」。
「ゲーム本来の歴史」。
それが、「本来ならあの場面では討伐されずに主人公たちに立ち塞がる強敵」として、因果関係をねじ曲げてでも復活という形になった?
――それとも、僕っていう「将来の魔王候補」が存在し、それがこのダンジョンへ降りて「くる」から「彼女が復活するという現象」が?
「………………………………」
つぅ、と、こめかみを汗が伝う。
そうだ――「彼女が存在しないと、主人公くんに意趣返しをされてふてくされていたはずのジュリオン様が、彼女に見初められて魔王になるラスボスルート」が出現しない。
彼女がサキュバスという種族属性の特徴として、他の魔族に比べると――厄介にも人間に対して好意的で理解のあるからこそ、人間のジュリオン様の素質を見初めるという条件が、存在しない。
だから、復活した。
サキュバスと同様に人間を糧とするオークやゴブリンたちが協力して。
――もちろん、この世界が本物であって、ゲームではないと知っている。
けども、この3年間ずっと考えてきた。
ゲームでの内容が、この世界の未来と近似するものであって――主人公ではない僕がどう行動するかにかかわらず、この世界で起きるべき未来は何があっても起きるんだっていう、SF的に言えば「世界線の収束」とでも表現できる事象が立ち塞がる可能性を。
「……ふぅん、中々に強いらしい女の子がいっぱぁい……あと男の子ねぇ。とりあえず私が女の子を味見するから絶対に手を出しちゃあダメよぉ? え? 男の子? あの怯えてるのはよっぽどかわいくない限りどうでも良いから、あんたたちが好きにして良いわぁ」
「ひっ……!?」
「兄ちゃん、しゃべっちゃダメだってば」
テオくんがおしりを抱えて地面にしゃがみ込んでいる。
……そりゃあ男として危機感しかないよね……遠くには最低でも10体以上のでっかいオーク――いや、あれは終盤にならないと登場しないはずのトロール?――が、エロディーさんにはべってるし。
今、彼が感じている恐怖は、ですの姉妹やマルテルさんたちが感じているのと変わらない。
――この世界では男も苗床にされる。
生命力、魔力が尽きるまで――可能な限りに長持ちさせられて、人間の敵を量産させられる。
つまり、この戦いに負けたら僕だってそういう運命をたどる。
「……撤退しましょう、ユリア。みんな、すぐに」
「ええ……あまりにもリスクが高すぎます。みなさん、静かに、けれど迅速に――――――」
警戒のためにエロディーさんから離さなかった目を離して、後ろを向いてみんなへ指示しようとした僕は、
「――――――みぃつけたぁ……♥」
――――――ぞわり。
肌が粟立ち、お腹が冷える感覚で振り向いた、その30センチ先。
僕の目線に合わせ、しゃがみ込んで――綺麗だけど恐ろしい、黒い白目の中に浮かぶ真っ白な目を僕に向けている――恐ろしいくらいに良い匂いを振りまいている、魔族が居た。
「あのときの、かわいい子……ずっとずっと、ずぅーっと、待っていたわぁ……♥」
身の毛がよだつほどの、整った顔。
その表情は、僕がこの世界で生まれて育った3年間で見たことがないほど――根源的な恐怖、そのものだった。
◆◆◆
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