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6章 女装して辺境伯領を堕とした(10歳)
114話 ダンジョンボスは、エロディーさん(復活済み)
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「ユリア。あなたは、なんでもできる。私たちとパーティーを組んでくれているのも、あなたが優しすぎるからだものね。私よりも、ずっとずっと強いもの」
「……人は、たったの1人では何もできませんよ」
「そういうことにしておくわ」
マルテルさんは、なぜか自己評価が低い。
まず間違いなく真っ当な教育を受けて――貴族としては破格の柔軟な価値観を持っているのに。
普通に何でも――恐らくは実家での礼儀作法や勉強もできて、さらに冒険者としてのイロハも最初からかなりできていて、パーティーを組んで3年経った今となっては僕の背中を預けられるほどになっているのに。
……謙虚――とはまた違う気がする。
あと、ときどきこんな感じになるのが僕相手にだけっぽいってのもまた不思議。
この子にもなんかあるっぽいんだけどなぁ……うーん。
でも、主人公くんが攻略しなきゃいけないはずのメインヒロインたちに比べたら、ごくごく真っ当でそこまでこじれてない理由のはず。
いっそのこと町へ帰還したあとの祝勝会でワインをこれでもかと押しつけ、口が軽くなったタイミングで聞き出すのも手かもしれない。
悩みってのは、時間が経つほどに――精神的な成長で解決するものならともかく、それ以外のものは基本的にややこしくこんがらがるものだ。
せっかく良い子と知り合ったんだ、できるならこの子の心配事へ――友人として力になりたいから。
そんな僕の思いも知らず、特に落ち込んだりしているわけでもない彼女は、じっと自身の足元を見つめている。
今のは僕を落ち着かせるためだけに話しかけたらしく、特段に結論を求めず会話を終える様子。
けれど――彼女は、ふいに顔を上げて何かを告げようと。
「……ユリア? あの、私――……」
していたのに。
――どすどすどすどす。
奥の方から、これまでより重い足音。
……もう、この子が何か言いかけてたのに。
こういう本心を滅多に伝えない子のそれは貴重なのに、モンスターのやつらは。
「――では、ダンジョンボスを倒した後に」
「ええ、任せなさい」
協力――そう、協力が大切なんだ。
こうして「物語では語られることのなかった」「一般人」たちが、それでも精いっぱいに協力して押し返す協力が。
それが、きっと――多くてもたったの数人しか味方が居なくなる魔王ジュリオン様と、女の子ばっかりだけど何十人も味方が傍に居る勇者主人公くんとの差。
世界の都合で無理やりに僕の味方が居なくなる可能性もあるけども、そうなるまでは1人でも多くの人と、手を繋ぎたい。
なにしろ僕は中身一般人なんだ、メンタル的にも誰かには居てほしいもんね。
それに、
「――――――っ」
――――――ぞわっ。
僕は「それ」を感じた直後に、全ての思考を停止。
……まさか。
いや、そんな。
でも、もしかしたら。
そんな思考の逡巡を、無理やりに打ち切り――マルテルさんの前に駆け出し、左右へ腕を広げてみんなを押し止める。
「……――皆様、予定を変更します。私の、後ろへ。静かにです」
僕の遮る腕に一瞬戸惑ったらしい一行は――その先を認識したらしく、口をつぐむ。
「万が一のときの合図は覚えていますね?」
「え、ええ……けれど、あれは一体……」
僕自身の精神の安寧のためって理由でここへ連れてきたんだ、何かがあれば僕がしんがりを務めなければならない。
それは、この女の敵ばっかり登場するダンジョンの中で僕が本当は男だからってのも、大きな理由としてあって。
「み、みなさん、どうしたんですかぁ……?」
――がくがくがくがく。
「――ダ、ダメですわ……!」
「あの姿……あの声……!」
「具合が悪いときは、あのときのことを夢に見てしまうのですの……!」
ルーシーちゃんが声をかけるも、恐怖を伝える声。
元気で呑気なですのっ娘たちが、怯えている。
「それ」を認識してしまった3人娘は――真っ青になり、歯の根が合わなくなっている。
恐怖。
それは、生物の根源的な感情であり、反応。
「……あれが、まさか」
「え、でも兄ちゃん、それは姉御がやっつけたはずじゃ? だって、そう言ってて――」
「――――――静かに」
静まりかえる、みんな。
――これで、不意打ちだけは避けられるけども。
「――うふふ♥ 未だ復活されぬ魔王様のため……このエロディーが、魔王様の右腕となる存在が、根性で復活して参りましたわぁ……♥」
ダンジョン、最下層。
――その直前の階段の、最後の段を降りる前に気がつけて良かった。
だって、その先には――ダンジョンという空間のお決まりごととして「そのダンジョンボスは最下層に降り立たないとこちらに気がつかない」――その仕様のおかげで、まだ気づかれていないけども。
「……あんなところに人間――いえ、あり得ないとしたら、魔族……!?」
「ええ。私が討伐した、はずの存在が。3年前、消し炭にしたはずの魔族――強敵です」
僕は、恐怖した。
――「木っ端みじんにしたはずの彼女が、たったの3年でこれほどの魔力を放ちながら復活している」という事実に。
「……人は、たったの1人では何もできませんよ」
「そういうことにしておくわ」
マルテルさんは、なぜか自己評価が低い。
まず間違いなく真っ当な教育を受けて――貴族としては破格の柔軟な価値観を持っているのに。
普通に何でも――恐らくは実家での礼儀作法や勉強もできて、さらに冒険者としてのイロハも最初からかなりできていて、パーティーを組んで3年経った今となっては僕の背中を預けられるほどになっているのに。
……謙虚――とはまた違う気がする。
あと、ときどきこんな感じになるのが僕相手にだけっぽいってのもまた不思議。
この子にもなんかあるっぽいんだけどなぁ……うーん。
でも、主人公くんが攻略しなきゃいけないはずのメインヒロインたちに比べたら、ごくごく真っ当でそこまでこじれてない理由のはず。
いっそのこと町へ帰還したあとの祝勝会でワインをこれでもかと押しつけ、口が軽くなったタイミングで聞き出すのも手かもしれない。
悩みってのは、時間が経つほどに――精神的な成長で解決するものならともかく、それ以外のものは基本的にややこしくこんがらがるものだ。
せっかく良い子と知り合ったんだ、できるならこの子の心配事へ――友人として力になりたいから。
そんな僕の思いも知らず、特に落ち込んだりしているわけでもない彼女は、じっと自身の足元を見つめている。
今のは僕を落ち着かせるためだけに話しかけたらしく、特段に結論を求めず会話を終える様子。
けれど――彼女は、ふいに顔を上げて何かを告げようと。
「……ユリア? あの、私――……」
していたのに。
――どすどすどすどす。
奥の方から、これまでより重い足音。
……もう、この子が何か言いかけてたのに。
こういう本心を滅多に伝えない子のそれは貴重なのに、モンスターのやつらは。
「――では、ダンジョンボスを倒した後に」
「ええ、任せなさい」
協力――そう、協力が大切なんだ。
こうして「物語では語られることのなかった」「一般人」たちが、それでも精いっぱいに協力して押し返す協力が。
それが、きっと――多くてもたったの数人しか味方が居なくなる魔王ジュリオン様と、女の子ばっかりだけど何十人も味方が傍に居る勇者主人公くんとの差。
世界の都合で無理やりに僕の味方が居なくなる可能性もあるけども、そうなるまでは1人でも多くの人と、手を繋ぎたい。
なにしろ僕は中身一般人なんだ、メンタル的にも誰かには居てほしいもんね。
それに、
「――――――っ」
――――――ぞわっ。
僕は「それ」を感じた直後に、全ての思考を停止。
……まさか。
いや、そんな。
でも、もしかしたら。
そんな思考の逡巡を、無理やりに打ち切り――マルテルさんの前に駆け出し、左右へ腕を広げてみんなを押し止める。
「……――皆様、予定を変更します。私の、後ろへ。静かにです」
僕の遮る腕に一瞬戸惑ったらしい一行は――その先を認識したらしく、口をつぐむ。
「万が一のときの合図は覚えていますね?」
「え、ええ……けれど、あれは一体……」
僕自身の精神の安寧のためって理由でここへ連れてきたんだ、何かがあれば僕がしんがりを務めなければならない。
それは、この女の敵ばっかり登場するダンジョンの中で僕が本当は男だからってのも、大きな理由としてあって。
「み、みなさん、どうしたんですかぁ……?」
――がくがくがくがく。
「――ダ、ダメですわ……!」
「あの姿……あの声……!」
「具合が悪いときは、あのときのことを夢に見てしまうのですの……!」
ルーシーちゃんが声をかけるも、恐怖を伝える声。
元気で呑気なですのっ娘たちが、怯えている。
「それ」を認識してしまった3人娘は――真っ青になり、歯の根が合わなくなっている。
恐怖。
それは、生物の根源的な感情であり、反応。
「……あれが、まさか」
「え、でも兄ちゃん、それは姉御がやっつけたはずじゃ? だって、そう言ってて――」
「――――――静かに」
静まりかえる、みんな。
――これで、不意打ちだけは避けられるけども。
「――うふふ♥ 未だ復活されぬ魔王様のため……このエロディーが、魔王様の右腕となる存在が、根性で復活して参りましたわぁ……♥」
ダンジョン、最下層。
――その直前の階段の、最後の段を降りる前に気がつけて良かった。
だって、その先には――ダンジョンという空間のお決まりごととして「そのダンジョンボスは最下層に降り立たないとこちらに気がつかない」――その仕様のおかげで、まだ気づかれていないけども。
「……あんなところに人間――いえ、あり得ないとしたら、魔族……!?」
「ええ。私が討伐した、はずの存在が。3年前、消し炭にしたはずの魔族――強敵です」
僕は、恐怖した。
――「木っ端みじんにしたはずの彼女が、たったの3年でこれほどの魔力を放ちながら復活している」という事実に。
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