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1章 女装して屋敷を堕とした(7歳スタート・すでに手遅れっぽいけど)
13話 すてきなセレスティーヌさま(by エミリー)1
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――わたしは、ばかでどじです。
おかあさまにもおとうさまにもしようにんの人たちにもそう言われ続けて、気がついたらばしゃに乗っていました。
「……ねぇ、エミリー様ってやっぱり……」
「大丈夫よ。私たち平民とは違って魔力もあるんだし――なにより器量が良いもの」
「良いわよねぇ、私たち平民がこんな頭だったら良くて商人の……」
「ちょっと、聞こえているわよ」
「大丈夫。どうせ分かってないから」
「それもそうね」
――わたしは、がんばってます。
がんばって聞きとろうとしています。
でも、だめなんです。
だって、しゅうちゅうしてりかいしようとすると――『【ドジっ子スキル】が発動しました』――ってよく分からない声がするんです。
それを言っても、だれも「うそをつくな」ってたたくんです。
……うそじゃないのに。
◇
「ほう……この娘が」
「はい! ちょうど弟君のジュリオン様と同い年の娘です! ……少し頭は……アレですが、もう少し育てば掃除くらいは」
「そうです、この子の母親――奥様はこのお写真の通りにお綺麗ですし殿方好みのお体ですから、大きくなられたジュリオン様のお手つきにと――」
――こわいひと。
それが、わたしがお屋敷に連れてこられたときの、初めての記憶。
「――――――――――黙れ」
「「!?」」
わたしは、ぎゅっと頭を抱えました。
だって、いつもおかあさまがわたしをぶつときはこういう声をするから。
なのに――
「……わぷっ?」
その人は――そのお方、セレスティーヌさまは――わたしを、優しく抱きかかえて。
わたしの顔は、大きなおっぱいで包まれました。
それが、あんまりにも柔らかくて、あんまりにもあったかくて。
――「お母様みたいにお胸のある人に抱きかかえてもらうと、こんなにも柔らかくてあったかくて嬉しいんだ」って、なぜか涙が出てきて。
「痴れ者め。貴様らはこの世界の理を知らぬ愚か者……そうだな、愚者ほど他人を馬鹿にする。いつどの時代、どの世界でも同じよ」
「な、何か私どもに不手際が……」
「お詫びいたしますゆえ、何卒……」
――いつもはわたしをばかにしてきていたしようにんの人たちが、いつものわたしみたいに怯えていました。
でも、わたしは――怖い声がまうえから来ているのに、こわくなくって。
だって――お庭でこの前に見た、おかあさん猫が子供たちに近づいたわたしに向かっておこってきたみたいな、あの感じがしたから。
わたしを、ぎゅっと抱きしめてくれているから。
――おかあさまも、してくれなかったことを。
「――良い。我がデュクロワ家第二子のジュリオンの側室候補として――いや、『側室』として正式にと伝えよ。以降、この娘への一切の関わりを持たないことを条件に――」
――そうなんですね。
おかあさんっていうのは、こわいけどやさしい人なんですね。
わたしは、セレスティーヌさまに子供として受け入れてもらって――初めて、それを知りました。
◇
「お前が今日から付き人か。よろしく頼む」
「は、はひぃ……!」
「……怯えさせるつもりはないのだけどな」
――当時のわたしから見ても、同じ4歳とは思えない。
それが、ジュリオンさまでした。
お母様譲りの、綺麗な紫の入った銀髪をわたしと同じくらいに伸ばしていて、お母様とおんなじ宝石のような真っ赤な瞳が、ちょっと怖くて。
「……ジュリオン。この子は……大きくなるまで、粗相ばかりする。要はドジっ子だ」
「ドジっ子……?」
「己の意思とは無関係に、どれほど気をつけてもドジをする。だが、それがあろうとも魅力的な娘になるということだ」
「はい、分かりました」
「良いか、ドジっ子は貴重だ。どんなことがあろうとも――どれだけ怒りを覚えたとしても、絶対に肌を傷つけるな。必要以上の痛みを与えるな。……この子は、周囲から傷つけられてきた。ゆえに、それが母からの唯一の言いつけだ」
「はい、分かりました。絶対に、傷つけません」
そのときのわたしは、おふたりの会話をよく理解できませんでした。
でも――そのうちに、知ったのです。
◇
「きゃあっ!?」
ぱりん。
◇
「みゃあああ!?」
ばしゃっ。
◇
「あ゛ーっ……」
「……見て、またあの子よ……」
「まったく、仕事を増やして……」
「一応はお貴族様だし、将来は仕えるお方だから我慢するんだ」
「だけどねぇ……あ、来ちゃったわよ」
――やっぱりわたしはドジでバカで間抜けで。
その日も廊下で――その日は確か、他の使用人の方とぶつかって、午前のお掃除を全部台無しにしてしまい。
「――おい。何故エミリーが泣いている」
そこへいらっしゃったのが――あのセレスティーヌさまを魔王軍との戦いで喪い、悲しまれ――セレスティーヌさまを、お母さまを喪ったばかりの、ジュリオンさまでした。
おかあさまにもおとうさまにもしようにんの人たちにもそう言われ続けて、気がついたらばしゃに乗っていました。
「……ねぇ、エミリー様ってやっぱり……」
「大丈夫よ。私たち平民とは違って魔力もあるんだし――なにより器量が良いもの」
「良いわよねぇ、私たち平民がこんな頭だったら良くて商人の……」
「ちょっと、聞こえているわよ」
「大丈夫。どうせ分かってないから」
「それもそうね」
――わたしは、がんばってます。
がんばって聞きとろうとしています。
でも、だめなんです。
だって、しゅうちゅうしてりかいしようとすると――『【ドジっ子スキル】が発動しました』――ってよく分からない声がするんです。
それを言っても、だれも「うそをつくな」ってたたくんです。
……うそじゃないのに。
◇
「ほう……この娘が」
「はい! ちょうど弟君のジュリオン様と同い年の娘です! ……少し頭は……アレですが、もう少し育てば掃除くらいは」
「そうです、この子の母親――奥様はこのお写真の通りにお綺麗ですし殿方好みのお体ですから、大きくなられたジュリオン様のお手つきにと――」
――こわいひと。
それが、わたしがお屋敷に連れてこられたときの、初めての記憶。
「――――――――――黙れ」
「「!?」」
わたしは、ぎゅっと頭を抱えました。
だって、いつもおかあさまがわたしをぶつときはこういう声をするから。
なのに――
「……わぷっ?」
その人は――そのお方、セレスティーヌさまは――わたしを、優しく抱きかかえて。
わたしの顔は、大きなおっぱいで包まれました。
それが、あんまりにも柔らかくて、あんまりにもあったかくて。
――「お母様みたいにお胸のある人に抱きかかえてもらうと、こんなにも柔らかくてあったかくて嬉しいんだ」って、なぜか涙が出てきて。
「痴れ者め。貴様らはこの世界の理を知らぬ愚か者……そうだな、愚者ほど他人を馬鹿にする。いつどの時代、どの世界でも同じよ」
「な、何か私どもに不手際が……」
「お詫びいたしますゆえ、何卒……」
――いつもはわたしをばかにしてきていたしようにんの人たちが、いつものわたしみたいに怯えていました。
でも、わたしは――怖い声がまうえから来ているのに、こわくなくって。
だって――お庭でこの前に見た、おかあさん猫が子供たちに近づいたわたしに向かっておこってきたみたいな、あの感じがしたから。
わたしを、ぎゅっと抱きしめてくれているから。
――おかあさまも、してくれなかったことを。
「――良い。我がデュクロワ家第二子のジュリオンの側室候補として――いや、『側室』として正式にと伝えよ。以降、この娘への一切の関わりを持たないことを条件に――」
――そうなんですね。
おかあさんっていうのは、こわいけどやさしい人なんですね。
わたしは、セレスティーヌさまに子供として受け入れてもらって――初めて、それを知りました。
◇
「お前が今日から付き人か。よろしく頼む」
「は、はひぃ……!」
「……怯えさせるつもりはないのだけどな」
――当時のわたしから見ても、同じ4歳とは思えない。
それが、ジュリオンさまでした。
お母様譲りの、綺麗な紫の入った銀髪をわたしと同じくらいに伸ばしていて、お母様とおんなじ宝石のような真っ赤な瞳が、ちょっと怖くて。
「……ジュリオン。この子は……大きくなるまで、粗相ばかりする。要はドジっ子だ」
「ドジっ子……?」
「己の意思とは無関係に、どれほど気をつけてもドジをする。だが、それがあろうとも魅力的な娘になるということだ」
「はい、分かりました」
「良いか、ドジっ子は貴重だ。どんなことがあろうとも――どれだけ怒りを覚えたとしても、絶対に肌を傷つけるな。必要以上の痛みを与えるな。……この子は、周囲から傷つけられてきた。ゆえに、それが母からの唯一の言いつけだ」
「はい、分かりました。絶対に、傷つけません」
そのときのわたしは、おふたりの会話をよく理解できませんでした。
でも――そのうちに、知ったのです。
◇
「きゃあっ!?」
ぱりん。
◇
「みゃあああ!?」
ばしゃっ。
◇
「あ゛ーっ……」
「……見て、またあの子よ……」
「まったく、仕事を増やして……」
「一応はお貴族様だし、将来は仕えるお方だから我慢するんだ」
「だけどねぇ……あ、来ちゃったわよ」
――やっぱりわたしはドジでバカで間抜けで。
その日も廊下で――その日は確か、他の使用人の方とぶつかって、午前のお掃除を全部台無しにしてしまい。
「――おい。何故エミリーが泣いている」
そこへいらっしゃったのが――あのセレスティーヌさまを魔王軍との戦いで喪い、悲しまれ――セレスティーヌさまを、お母さまを喪ったばかりの、ジュリオンさまでした。
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