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2章 女装してギルドを堕とした
25話 ギルドマスターが現れた!
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「……ご歓談の最中に申し訳ありません」
モブ子ズの謝罪攻撃がひと息ついたところに、男の声が降ってくる。
「ルシヨンの町を預かるギルド――その中でも最大規模を誇る、私、ジャンからも礼を述べさせていただけますでしょうか、殿――ユリア様」
お?
僕たちの会話の絶妙な間に入ってきたのは――あ、これ、絶対頭良い人だ。
そんな第一印象の――ていうか普通に離れてたらギルドの事務員にしか見えなかった――七三分けに眼鏡の、線は細いけど鍛えてるのが分かる、20代くらいの男だった。
……あれ、この人ギルドマスターじゃない?
多分だけど……だってこの人が良い感じにダンディーになった立ち絵、あったし。
記憶は確かじゃないし名前も覚えてないけど、この人――13年後に魔王ルートとかで主人公くんたちがこの町に攻め入るときに立ち塞がる中ボスじゃん……。
え、なんで僕、転生2日目までにラスボスの起爆剤と最強ルートの中ボスに会ってるの……?
◇
「……なるほど。ご実家の方針により、そのお歳で旅を……」
「はい。貴族たるもの、己の目で世界を見てこいとのことで」
そんな感じのストーリー。
それっぽいし、おじいちゃんもそれっぽいことふがふが言ってた気がするから僕的にはウソじゃない気がしてきた。
実に都合が良いベルトランおじいちゃん。
なんかおみやげ買ってってあげよっと。
あと、この状況はそこのモブ子たちと――少なくとも外見上は大差ないし、違和感はないはず。
「そして……その、魔族については」
「――あれは、高位魔族ではありませんでした」
「え? いえ、しかし……」
僕は、きりりとすまし顔で彼の眼鏡アイを見つめる。
「低位の魔族――貴族の出とはいえたかが7歳の、駆け出しの子供に討ち取られる程度の実力しか持ち合わせていませんでした」
「いえ、しかし……」
「――『そういうこと』に、してくださりませんか?」
「!!」
そもそも昨日ばったりと会ったのですら、ただの偶然。
僕はなんにも――ただたまたまでそこに居合わせたに過ぎない。
そしてあのえっちなお姉さんは、ちょっとばかり早い目覚まし時計で起きちゃったからそもそも弱体化していた。
たとえ僕が居なかったとしても――モブ子ズは残念ながら薄い本な目に遭わされただろうけども、じきに異変を察知したギルドや衛兵、おじいちゃんに頼まれての兵士が駆けつけて討伐していただろう。
そうだ、いくらおじいちゃんが大切に磨いていた岩を壊せたからといって、いくらジュリオン様が才能だけは最強でも、不意打ちで倒せた程度だったんだ。
本来なら主人公くんがたくさんの仲間を揃えて、その上でレベルが25とかないと負けるくらい強かったはずだもん、あのサキュバス。
だからこそ人気だったんだよなぁ……もう吹き飛ばしちゃったけど。
なのに、エミリーちゃん相手しかしてないジュリオン様7歳ボディで一撃だったんだよ?
たぶん、普通に討伐できる。
きっとそう、たぶんそう。
で、たとえ僕が不在、かつモブ子ズがピンチにはなったとしても、モブ子ズが無事な状態でゲームに出てきていた以上、あの子たちは薄い本展開の前に救出され、エロディーさんは倒される。
……倒される前に逃げて10年間隠れながら力を蓄えてたって考えると、魔王ルートとかで強敵として出てきたって辻褄も合うな。
「ええ、魔王という存在は魔族全ての知る存在……きっと低位のくせになにかしらの功績を挙げ、将来に復活すると言われている魔王に取り入ろうとしただけの雑魚。――ね?」
うんうん、しゃべってるだけでいい具合の言い訳が浮かぶ。
さすがはジュリオン様だ。
その若さでギルドマスターになったんですから、僕の気持ち、分かるでしょ?
めんどくさいのは嫌いなんだって。
あと、そういうことにしといた方が町の人も「なんだ、雑魚か」って安心できるって。
「――承知しました。しかしそれでも、礼としては……」
「でしたら」
腕をびしりと突き出し――そうになり、心持ち優雅な手つきで彼の言葉を塞ぐ。
僕は知っているんだ。
こういう頭の切れるタイプは好き勝手にしゃべらせちゃいけないって。
「将来、なにかひとつだけ私のお願いを聞いてくださるということで」
「……『お願い』――ですか」
低位だとしても、魔族の討伐。
普通なら、それだけでランクが2は上がるだろう功績。
でもそれは困る。
僕は、初心者から1歩ずつ進めたいんだ。
この町のことを知るにも、冒険者としての生活を知るにも――将来の起爆剤がどこにあるのかを知り尽くすにも、やはり最低ランクから地道に上げる必要がある。
下手に幼いながら高いランクとかだと、それだけで警戒される場面も出てくるかもだし?
あとさ――ゲームとかは、最初のちまちまやりくりしてる段階が楽しいじゃん?
「――というわけで、ギルドの方が感謝してくださるというのでしたら……それを報酬ということでよろしいでしょうか?」
まぁ数日もしたら忘れられるだろう「お願い」。
ほら、「今度おごる代わりにこれやってよ」とか「一生のお願いだから!」とか言われてしぶしぶやったあとって、だいたい「は? んなことあったっけ?」って忘れられるものでしょ?
今の僕はおじいちゃんのおこづかいもあるし、初心者用ダンジョン潜ればその日暮らしはできるし、ジュリオン様ボディでざくざく稼げるしでお金には困らないはずだし。
なによりも……目立ちたくない。
だからやりとりは最小限にしてさっさと忘れられたいんだ。
モブ子ズの謝罪攻撃がひと息ついたところに、男の声が降ってくる。
「ルシヨンの町を預かるギルド――その中でも最大規模を誇る、私、ジャンからも礼を述べさせていただけますでしょうか、殿――ユリア様」
お?
僕たちの会話の絶妙な間に入ってきたのは――あ、これ、絶対頭良い人だ。
そんな第一印象の――ていうか普通に離れてたらギルドの事務員にしか見えなかった――七三分けに眼鏡の、線は細いけど鍛えてるのが分かる、20代くらいの男だった。
……あれ、この人ギルドマスターじゃない?
多分だけど……だってこの人が良い感じにダンディーになった立ち絵、あったし。
記憶は確かじゃないし名前も覚えてないけど、この人――13年後に魔王ルートとかで主人公くんたちがこの町に攻め入るときに立ち塞がる中ボスじゃん……。
え、なんで僕、転生2日目までにラスボスの起爆剤と最強ルートの中ボスに会ってるの……?
◇
「……なるほど。ご実家の方針により、そのお歳で旅を……」
「はい。貴族たるもの、己の目で世界を見てこいとのことで」
そんな感じのストーリー。
それっぽいし、おじいちゃんもそれっぽいことふがふが言ってた気がするから僕的にはウソじゃない気がしてきた。
実に都合が良いベルトランおじいちゃん。
なんかおみやげ買ってってあげよっと。
あと、この状況はそこのモブ子たちと――少なくとも外見上は大差ないし、違和感はないはず。
「そして……その、魔族については」
「――あれは、高位魔族ではありませんでした」
「え? いえ、しかし……」
僕は、きりりとすまし顔で彼の眼鏡アイを見つめる。
「低位の魔族――貴族の出とはいえたかが7歳の、駆け出しの子供に討ち取られる程度の実力しか持ち合わせていませんでした」
「いえ、しかし……」
「――『そういうこと』に、してくださりませんか?」
「!!」
そもそも昨日ばったりと会ったのですら、ただの偶然。
僕はなんにも――ただたまたまでそこに居合わせたに過ぎない。
そしてあのえっちなお姉さんは、ちょっとばかり早い目覚まし時計で起きちゃったからそもそも弱体化していた。
たとえ僕が居なかったとしても――モブ子ズは残念ながら薄い本な目に遭わされただろうけども、じきに異変を察知したギルドや衛兵、おじいちゃんに頼まれての兵士が駆けつけて討伐していただろう。
そうだ、いくらおじいちゃんが大切に磨いていた岩を壊せたからといって、いくらジュリオン様が才能だけは最強でも、不意打ちで倒せた程度だったんだ。
本来なら主人公くんがたくさんの仲間を揃えて、その上でレベルが25とかないと負けるくらい強かったはずだもん、あのサキュバス。
だからこそ人気だったんだよなぁ……もう吹き飛ばしちゃったけど。
なのに、エミリーちゃん相手しかしてないジュリオン様7歳ボディで一撃だったんだよ?
たぶん、普通に討伐できる。
きっとそう、たぶんそう。
で、たとえ僕が不在、かつモブ子ズがピンチにはなったとしても、モブ子ズが無事な状態でゲームに出てきていた以上、あの子たちは薄い本展開の前に救出され、エロディーさんは倒される。
……倒される前に逃げて10年間隠れながら力を蓄えてたって考えると、魔王ルートとかで強敵として出てきたって辻褄も合うな。
「ええ、魔王という存在は魔族全ての知る存在……きっと低位のくせになにかしらの功績を挙げ、将来に復活すると言われている魔王に取り入ろうとしただけの雑魚。――ね?」
うんうん、しゃべってるだけでいい具合の言い訳が浮かぶ。
さすがはジュリオン様だ。
その若さでギルドマスターになったんですから、僕の気持ち、分かるでしょ?
めんどくさいのは嫌いなんだって。
あと、そういうことにしといた方が町の人も「なんだ、雑魚か」って安心できるって。
「――承知しました。しかしそれでも、礼としては……」
「でしたら」
腕をびしりと突き出し――そうになり、心持ち優雅な手つきで彼の言葉を塞ぐ。
僕は知っているんだ。
こういう頭の切れるタイプは好き勝手にしゃべらせちゃいけないって。
「将来、なにかひとつだけ私のお願いを聞いてくださるということで」
「……『お願い』――ですか」
低位だとしても、魔族の討伐。
普通なら、それだけでランクが2は上がるだろう功績。
でもそれは困る。
僕は、初心者から1歩ずつ進めたいんだ。
この町のことを知るにも、冒険者としての生活を知るにも――将来の起爆剤がどこにあるのかを知り尽くすにも、やはり最低ランクから地道に上げる必要がある。
下手に幼いながら高いランクとかだと、それだけで警戒される場面も出てくるかもだし?
あとさ――ゲームとかは、最初のちまちまやりくりしてる段階が楽しいじゃん?
「――というわけで、ギルドの方が感謝してくださるというのでしたら……それを報酬ということでよろしいでしょうか?」
まぁ数日もしたら忘れられるだろう「お願い」。
ほら、「今度おごる代わりにこれやってよ」とか「一生のお願いだから!」とか言われてしぶしぶやったあとって、だいたい「は? んなことあったっけ?」って忘れられるものでしょ?
今の僕はおじいちゃんのおこづかいもあるし、初心者用ダンジョン潜ればその日暮らしはできるし、ジュリオン様ボディでざくざく稼げるしでお金には困らないはずだし。
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