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3章 女装して捨て子を堕とした
34話 灰被りのアクヤクレイジョウ
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ばさっ。
ばさばさっ。
「けほっ、けほっ」
うーむ。
砂遊びなんて前世ぶりだから、思ったよりけむいぞこれ……!
「な、ななななにを……!?」
「……ふぅ。ああ、もうこちらを向いて良いですよ」
「は、はいっ。――――――!?」
ばさばさ。
横髪を持ち上げて日光にかざしてみる。
うん、僕の――透き通りすぎて、ロウソクの光でさえ反射してた銀髪が、今や目立たない白髪――灰色になっている。
うん、これなら髪の毛と目のカラーリングが豊富なこの世界でも違和感はないね。
意外と砂だけでもなんとかなるもんだ。
これでダメならどっかの暖炉から灰を拝借しなきゃいけなかったからね。
「………………………………」
あー、やっぱフードは暑かった。
あと、すっっごく周囲が――特に上が見えなかった。
そのせいで狭い通りだともうなんにも見えなかったから……これからは毎日砂をかぶろう。
白髪っぽいこれなら、顔もまぁそこそこかわいい小学生程度で通用するんじゃないかな?
「……きれい……」
「ルーシー?」
「……はっ! じゃ、じゃなくて、なんでさっきの綺麗な髪の毛を……!?」
律儀にこっち見ないでくれてたルーシーくんが、フードを完全に取った僕に食い入っている。
顔を真っ赤にして。
……いくらかわいくしてるとはいっても僕は男だからね?
男同士は非生産的だからね?
ジュリオン様はおしりが弱点だからね?
冗談はさておき、君にはさっき安心させるためにフード取って見せてたから、僕が銀髪だって知られてるよね。
うーん、この奇行の釈明をしとかないと……まーた屋敷でのあれみたいにおもしれー女だったらしいママンと同一視されかねない。
「……私――いえ、僕は、よくあるように、世界を知るために町に出入りしている貴族の子女です」
「はぇ? ぼ、ぼく……? 貴族……?」
そうそう、男。
男同士仲良くやろうね。
「貴族ではあっても、今はただの子供――あなたと変わらない、ただのユリアです。ですから、先ほどまでと同じように接してくださいね」
「は……はいっ!」
「あと、事情があり目立ちたくないので……普段の髪色は、内緒でお願いしますね」
「はいっ! はいっ!」
ぶんぶんと首が折れそうなくらいにうなずいてるせいか、ますます顔が赤くなっていくピュアな少年。
うん、たぶんこれよく分かってない。
けど、分かってないからこそ怖がったりはしていないみたいでなにより。
「では、大通りに引き返しましょう」
「ユリアさまがそういうのでしたら!」
僕の後ろを――なるべく汚くなさそうな砂をふりかけてるあいだに持たせてた依頼の束を抱えながらついてくるわんこルーシーくん。
「……本当に、居たんだぁ……吟遊詩人が歌ってた、綺麗過ぎるのを隠すために……」
下を向きながらなにかをぶつぶつ言ってるけども、口調的に僕への不満とか闇討ちとか反乱とか革命とかな雰囲気はないからほっとこう。
ひとり言ってのは精神安定に役立つんだ。
ある程度大きくなると、僕みたいに頭の中だけで考えられるようになるけども、子供とか――1日中しゃべってる系統の女性とかはずっと声に出して考えるもの。
しゃべりたいんならしゃべらせてあげておけばいいよね。
大丈夫、エミリーちゃんの相手するよりも楽だから。
まぁエミリーちゃんはほっといてもひとりでぴーちくぱーちくしてるけども。
………………………………。
でも。
……こんな子供が、こんな歳で、なにも知らないで、たったの1人で生きないといけない世界。
――僕が家督を握るようになったら、せめて。
せめて、デュクロワ領内だけでも、良くしよう。
公営の孤児院くらい、あったって良いじゃんか。
どうせミスったら死ぬ悪役なんだから、それくらいしたって……ね。
「……灰被りのアクヤクレイジョウ……ぼくが産まれるちょっと前のお話って、もしかしたら本当の……」
◇
「とにかく基本は大通りを選ぶこと。それぞれの広場の特徴を覚えましょう」
「はい!」
中世欧風の町とあって、みんな石造りの数階建ての家がくっついてできている道が続き――途中で合流して分岐して、分岐して合流して。
その境目には必ずと言って良いほどに広場がある造りだ。
「路地裏は、ストリートチルドレン――孤児の縄張りです。……あなたも、冒険者として今日教えます仕事を覚えられなければ、彼らの仲間入りをするでしょう。そうでない状態で路地裏に近づけば、持ち物を知らぬ間に盗まれたりカツアゲされても文句は言えませんよ」
「町……町って怖い……」
「ですが、身寄りがない……も同然の貴方にとっては、最後のセーフティネット――砦です。その日の食べるものにも困るようになることがあれば、彼らを頼りなさい」
そうはさせないために、今日は一緒に依頼を回るんだけどね。
「はいぃ……」
ああ、わんこの尻尾が垂れている。
「大丈夫。今のように、なるべく身なりの良い市民のそばを歩いていれば積極的には狙われません。……依頼先が狭い通りだったりしたら警戒はしないといけませんね」
「は、はいぃ……」
大通りでさえ、ところどころで座り込んで寝てたりお金をせびってる人が居る。
――路地裏への角には、大通りをじろじろと見ている、数人単位でたむろしている子供が居る。
それこそ、初日に見たみたいなすばしっこい大胆なスリも居るかもしれない。
警戒はしておかないとね。
「……ルーシー。数日は行動を共にしてもらいますよ」
「え? あ、はい……ユリアさまがそう言うのなら……」
よし、言質は取った。
……これ、最低限の自衛が出来る程度のレベルは必要だわ。
今日1日だけじゃ無理で、もっとしばらく一緒に居ないと危なっかしい。
ルーシーくんみたいな、よわよわそうな子供じゃあ。
今この瞬間に孤児たちに引き渡せば孤児仲間として保護され、守るべきかよわいいきものとして大切にはされるだろうけども……孤児は孤児、その先がないからなぁ。
そういうのもなんとかしたいところだけども――今の僕にできることは、ない。
目の前の町を覚えて、人を覚えて……地道に暮らしを知っていくしかないんだ。
大丈夫、モブ子ズも言っていた――魔力がない平民でも、真面目に働けばなんとかなる程度は稼げるのが冒険者だって。
そのうちあのチンピラさんたちみたいに、昼間にお酒呑んで夜に働くっていう、健康には悪くても効率は良いお仕事もできるんだもんね。
ばさばさっ。
「けほっ、けほっ」
うーむ。
砂遊びなんて前世ぶりだから、思ったよりけむいぞこれ……!
「な、ななななにを……!?」
「……ふぅ。ああ、もうこちらを向いて良いですよ」
「は、はいっ。――――――!?」
ばさばさ。
横髪を持ち上げて日光にかざしてみる。
うん、僕の――透き通りすぎて、ロウソクの光でさえ反射してた銀髪が、今や目立たない白髪――灰色になっている。
うん、これなら髪の毛と目のカラーリングが豊富なこの世界でも違和感はないね。
意外と砂だけでもなんとかなるもんだ。
これでダメならどっかの暖炉から灰を拝借しなきゃいけなかったからね。
「………………………………」
あー、やっぱフードは暑かった。
あと、すっっごく周囲が――特に上が見えなかった。
そのせいで狭い通りだともうなんにも見えなかったから……これからは毎日砂をかぶろう。
白髪っぽいこれなら、顔もまぁそこそこかわいい小学生程度で通用するんじゃないかな?
「……きれい……」
「ルーシー?」
「……はっ! じゃ、じゃなくて、なんでさっきの綺麗な髪の毛を……!?」
律儀にこっち見ないでくれてたルーシーくんが、フードを完全に取った僕に食い入っている。
顔を真っ赤にして。
……いくらかわいくしてるとはいっても僕は男だからね?
男同士は非生産的だからね?
ジュリオン様はおしりが弱点だからね?
冗談はさておき、君にはさっき安心させるためにフード取って見せてたから、僕が銀髪だって知られてるよね。
うーん、この奇行の釈明をしとかないと……まーた屋敷でのあれみたいにおもしれー女だったらしいママンと同一視されかねない。
「……私――いえ、僕は、よくあるように、世界を知るために町に出入りしている貴族の子女です」
「はぇ? ぼ、ぼく……? 貴族……?」
そうそう、男。
男同士仲良くやろうね。
「貴族ではあっても、今はただの子供――あなたと変わらない、ただのユリアです。ですから、先ほどまでと同じように接してくださいね」
「は……はいっ!」
「あと、事情があり目立ちたくないので……普段の髪色は、内緒でお願いしますね」
「はいっ! はいっ!」
ぶんぶんと首が折れそうなくらいにうなずいてるせいか、ますます顔が赤くなっていくピュアな少年。
うん、たぶんこれよく分かってない。
けど、分かってないからこそ怖がったりはしていないみたいでなにより。
「では、大通りに引き返しましょう」
「ユリアさまがそういうのでしたら!」
僕の後ろを――なるべく汚くなさそうな砂をふりかけてるあいだに持たせてた依頼の束を抱えながらついてくるわんこルーシーくん。
「……本当に、居たんだぁ……吟遊詩人が歌ってた、綺麗過ぎるのを隠すために……」
下を向きながらなにかをぶつぶつ言ってるけども、口調的に僕への不満とか闇討ちとか反乱とか革命とかな雰囲気はないからほっとこう。
ひとり言ってのは精神安定に役立つんだ。
ある程度大きくなると、僕みたいに頭の中だけで考えられるようになるけども、子供とか――1日中しゃべってる系統の女性とかはずっと声に出して考えるもの。
しゃべりたいんならしゃべらせてあげておけばいいよね。
大丈夫、エミリーちゃんの相手するよりも楽だから。
まぁエミリーちゃんはほっといてもひとりでぴーちくぱーちくしてるけども。
………………………………。
でも。
……こんな子供が、こんな歳で、なにも知らないで、たったの1人で生きないといけない世界。
――僕が家督を握るようになったら、せめて。
せめて、デュクロワ領内だけでも、良くしよう。
公営の孤児院くらい、あったって良いじゃんか。
どうせミスったら死ぬ悪役なんだから、それくらいしたって……ね。
「……灰被りのアクヤクレイジョウ……ぼくが産まれるちょっと前のお話って、もしかしたら本当の……」
◇
「とにかく基本は大通りを選ぶこと。それぞれの広場の特徴を覚えましょう」
「はい!」
中世欧風の町とあって、みんな石造りの数階建ての家がくっついてできている道が続き――途中で合流して分岐して、分岐して合流して。
その境目には必ずと言って良いほどに広場がある造りだ。
「路地裏は、ストリートチルドレン――孤児の縄張りです。……あなたも、冒険者として今日教えます仕事を覚えられなければ、彼らの仲間入りをするでしょう。そうでない状態で路地裏に近づけば、持ち物を知らぬ間に盗まれたりカツアゲされても文句は言えませんよ」
「町……町って怖い……」
「ですが、身寄りがない……も同然の貴方にとっては、最後のセーフティネット――砦です。その日の食べるものにも困るようになることがあれば、彼らを頼りなさい」
そうはさせないために、今日は一緒に依頼を回るんだけどね。
「はいぃ……」
ああ、わんこの尻尾が垂れている。
「大丈夫。今のように、なるべく身なりの良い市民のそばを歩いていれば積極的には狙われません。……依頼先が狭い通りだったりしたら警戒はしないといけませんね」
「は、はいぃ……」
大通りでさえ、ところどころで座り込んで寝てたりお金をせびってる人が居る。
――路地裏への角には、大通りをじろじろと見ている、数人単位でたむろしている子供が居る。
それこそ、初日に見たみたいなすばしっこい大胆なスリも居るかもしれない。
警戒はしておかないとね。
「……ルーシー。数日は行動を共にしてもらいますよ」
「え? あ、はい……ユリアさまがそう言うのなら……」
よし、言質は取った。
……これ、最低限の自衛が出来る程度のレベルは必要だわ。
今日1日だけじゃ無理で、もっとしばらく一緒に居ないと危なっかしい。
ルーシーくんみたいな、よわよわそうな子供じゃあ。
今この瞬間に孤児たちに引き渡せば孤児仲間として保護され、守るべきかよわいいきものとして大切にはされるだろうけども……孤児は孤児、その先がないからなぁ。
そういうのもなんとかしたいところだけども――今の僕にできることは、ない。
目の前の町を覚えて、人を覚えて……地道に暮らしを知っていくしかないんだ。
大丈夫、モブ子ズも言っていた――魔力がない平民でも、真面目に働けばなんとかなる程度は稼げるのが冒険者だって。
そのうちあのチンピラさんたちみたいに、昼間にお酒呑んで夜に働くっていう、健康には悪くても効率は良いお仕事もできるんだもんね。
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