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4章 女装して路地裏から町を堕とした
54話 ダンジョンでルーシーちゃんを鍛えよう1
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「5人ですと、乗合馬車を利用しての日帰りでもぎりぎり採算が取れますわ!」
「3人でしたら数日かけてようやく……ですわね」
「宿代と食事代でおいしくはないですの。ドロップ品目当てですわね」
「け、けど、ぼく、ダンジョンなんて潜ったことも……」
がたがたがた。
狭い木でできたスペースの上を幌で包んだスペース。
ひどい揺れを、宿から貸してもらった枕でなんとか緩和するも……やっぱりおしりが痛くなるのが馬車。
ジュリオン様のおしりは大切なのにね。
「大丈夫ですわ! ユリア様のご厚意で、ギルドからの報酬は5等分とのこと! ……それに、誰だって駆け出しの時期はありますわ」
「こちらのユリア様でさえ初めてがございましたのよ?」
「まぁその初めてで魔族討伐を成し遂げましたけれども」
「さすユリですわ!」
気まずい馬車。
そこは女子の園だ。
しかもこの子たち、なぜか僕のことをとにかくヨイショしてくるし……や、なりゆきでそうなってるからしょうがないけども。
あと、やっぱ不思議な名前の百合の花……観賞用かな?……が流行っている様子。
前世でも流行ってのは女の子たちのあいだで爆発的になるものだったし、この世界でもそうなのかもね。
けども、僕はヨイショされるのはそんなに好きじゃない。
どうしても前世の平凡な感覚が抜けないんだよなぁ……覚えてないのに。
「……あまり褒められるのには慣れていないので、そのへんで……」
ジュリオン様ならヨイショされるほどに気持ちよくなれるけども、今は遠慮しておこう。
どうせヨイショの理由だって、たまたま助ける形になったのと僕の偉そうな貴族っぷりだろうし。
「まぁ! わたくしの家の派閥の属する貴族の方々でしたら何時間でも褒めちぎらないといけませんのに!」
「ユリア様はお生まれから違いますのよ」
「わぁ……すごいです……!」
ごめんなさい、将来のジュリオン様は褒めちぎらせてた方です。
今のところは前世の僕が目覚めてるからそんな気配はないけども、仮に息を吹き返して主導権完全に戻っちゃったら将来的にそうなって誰かに殺されるほど憎まれます。
それまでに、なんとかヘイトを緩和させられたらって思ってます。
……しかしこれ、女装をバラすタイミングどころか、バラすことすら難題になってきた気がするぞ……?
今でこそ好感度が高いみたいだけど、男だってバラしたら……ルーシーちゃんとは、その、事故みたいなものだから別枠としても。
◇
「わたくしたちですの? 前衛と後衛、補助のローテができますわ」
「ロ、ローテ……? ですか……?」
ダンジョン前でお買い物中。
ルーシーちゃんをこの先生き残らせるためには、やっぱり町中の依頼だけじゃ厳しいと思う。
かといって身寄りがなければマトモな仕事――丁稚みたいな最低限の扱い&大人になったらポイじゃないのなんて難しいだろうし。
そんなわけでルーシーちゃんを育てるためにモブ子ズのパーティー編成を聞いてみたわけだけど……ローテ?
いや、でも、まさか。
「……普通は1種類から3種類程度の攻撃手段、ないし魔法での攻撃や補助や回復しかないのでは?」
「さすユリ!」
「そうなのですが、わたくしたち、なぜかたまたまお互いの得意なそれらが完全に一致していましたの」
「具体的には軽い剣での前衛、弓矢を使っての後衛、それに疲労回復の魔法が使えますの、3人とも」
「……それはまた……」
なにそれすごい。
普通のモブなら1種類だけで、イベントキャラとかヒロインたちになってくると2種類3種類と増えるくらいなのに。
しかも3人がお互いのをぴったり交換できる組み合わせとか……たぶん3人1セットな、影は薄いけどあれば嬉しい的な数合わせでの設定から来たんだろうけども。
――こういうところもまた、ゲームみたいな設定なんだよね、この世界。
どう見たって聞いたって生きている人間なんだけど、こういうところはゲームのままっていう不思議な感覚。
ちなみに、このキャラクターごとの役割を決める適性は、主人公くんと数名のメインヒロインとかキャラクターだけには通用しない。
つまり――「全部に適性がある」。
そうでもないと、それぞれのルートでのボス――だいたいジュリオン様――を倒せないって理由でもあるんだけども。
だから、
「そういえばユリア様はどうなんですの?」
「そうですわね? すごい攻撃魔法を使われるのは存じていますが……」
「いえ、罠製作を教わったということですから補助魔法もでは?」
「ああ、全部です」
「「「……ですの?」」」
お、ハモってる。
「たぶん、おおよその適性があります。ただ、検証はしたことがありませんが」
おくちを「の」の状態からあんぐりと開けているモブ子ズ。
「……え? え? ぜ、ぜんぶ……?」
うん、非常識だよね……でもこの体ってば、ラスボスにもなれるジュリオン様のものだから。
「……やはり、ユリア様は完璧な淑女……」
「かのお方も……だったと言いますから……」
「さすユリでしかありませんわね……!」
まぁ本当かどうかは、これからダンジョンに潜っていろんな武器を使ってみないとなんだけどね。
ていうか僕のメイン攻撃手段は何にしようか。
なんにでも適性があるとしても、やっぱりメインを決めないと全部が中途半端になりがちだもんね。
実際、ゲームでも尖った性能ほど扱いやすかったし。
エロディーさんのときとかダンジョン案内のときは魔法で済ませちゃってたけど、男としてはやっぱり剣とか盾で戦いたいもんね。
よし、とりあえずなにかしら男らしい武器にしよう。
できればリーチが長い方が怪我もしにくいだろうし、なによりも武器も大きくなるからかっこよくなるし。
それに、ほら。
お嬢様キャラが無骨な大剣とか持ってるのって、かっこ良くない?
「3人でしたら数日かけてようやく……ですわね」
「宿代と食事代でおいしくはないですの。ドロップ品目当てですわね」
「け、けど、ぼく、ダンジョンなんて潜ったことも……」
がたがたがた。
狭い木でできたスペースの上を幌で包んだスペース。
ひどい揺れを、宿から貸してもらった枕でなんとか緩和するも……やっぱりおしりが痛くなるのが馬車。
ジュリオン様のおしりは大切なのにね。
「大丈夫ですわ! ユリア様のご厚意で、ギルドからの報酬は5等分とのこと! ……それに、誰だって駆け出しの時期はありますわ」
「こちらのユリア様でさえ初めてがございましたのよ?」
「まぁその初めてで魔族討伐を成し遂げましたけれども」
「さすユリですわ!」
気まずい馬車。
そこは女子の園だ。
しかもこの子たち、なぜか僕のことをとにかくヨイショしてくるし……や、なりゆきでそうなってるからしょうがないけども。
あと、やっぱ不思議な名前の百合の花……観賞用かな?……が流行っている様子。
前世でも流行ってのは女の子たちのあいだで爆発的になるものだったし、この世界でもそうなのかもね。
けども、僕はヨイショされるのはそんなに好きじゃない。
どうしても前世の平凡な感覚が抜けないんだよなぁ……覚えてないのに。
「……あまり褒められるのには慣れていないので、そのへんで……」
ジュリオン様ならヨイショされるほどに気持ちよくなれるけども、今は遠慮しておこう。
どうせヨイショの理由だって、たまたま助ける形になったのと僕の偉そうな貴族っぷりだろうし。
「まぁ! わたくしの家の派閥の属する貴族の方々でしたら何時間でも褒めちぎらないといけませんのに!」
「ユリア様はお生まれから違いますのよ」
「わぁ……すごいです……!」
ごめんなさい、将来のジュリオン様は褒めちぎらせてた方です。
今のところは前世の僕が目覚めてるからそんな気配はないけども、仮に息を吹き返して主導権完全に戻っちゃったら将来的にそうなって誰かに殺されるほど憎まれます。
それまでに、なんとかヘイトを緩和させられたらって思ってます。
……しかしこれ、女装をバラすタイミングどころか、バラすことすら難題になってきた気がするぞ……?
今でこそ好感度が高いみたいだけど、男だってバラしたら……ルーシーちゃんとは、その、事故みたいなものだから別枠としても。
◇
「わたくしたちですの? 前衛と後衛、補助のローテができますわ」
「ロ、ローテ……? ですか……?」
ダンジョン前でお買い物中。
ルーシーちゃんをこの先生き残らせるためには、やっぱり町中の依頼だけじゃ厳しいと思う。
かといって身寄りがなければマトモな仕事――丁稚みたいな最低限の扱い&大人になったらポイじゃないのなんて難しいだろうし。
そんなわけでルーシーちゃんを育てるためにモブ子ズのパーティー編成を聞いてみたわけだけど……ローテ?
いや、でも、まさか。
「……普通は1種類から3種類程度の攻撃手段、ないし魔法での攻撃や補助や回復しかないのでは?」
「さすユリ!」
「そうなのですが、わたくしたち、なぜかたまたまお互いの得意なそれらが完全に一致していましたの」
「具体的には軽い剣での前衛、弓矢を使っての後衛、それに疲労回復の魔法が使えますの、3人とも」
「……それはまた……」
なにそれすごい。
普通のモブなら1種類だけで、イベントキャラとかヒロインたちになってくると2種類3種類と増えるくらいなのに。
しかも3人がお互いのをぴったり交換できる組み合わせとか……たぶん3人1セットな、影は薄いけどあれば嬉しい的な数合わせでの設定から来たんだろうけども。
――こういうところもまた、ゲームみたいな設定なんだよね、この世界。
どう見たって聞いたって生きている人間なんだけど、こういうところはゲームのままっていう不思議な感覚。
ちなみに、このキャラクターごとの役割を決める適性は、主人公くんと数名のメインヒロインとかキャラクターだけには通用しない。
つまり――「全部に適性がある」。
そうでもないと、それぞれのルートでのボス――だいたいジュリオン様――を倒せないって理由でもあるんだけども。
だから、
「そういえばユリア様はどうなんですの?」
「そうですわね? すごい攻撃魔法を使われるのは存じていますが……」
「いえ、罠製作を教わったということですから補助魔法もでは?」
「ああ、全部です」
「「「……ですの?」」」
お、ハモってる。
「たぶん、おおよその適性があります。ただ、検証はしたことがありませんが」
おくちを「の」の状態からあんぐりと開けているモブ子ズ。
「……え? え? ぜ、ぜんぶ……?」
うん、非常識だよね……でもこの体ってば、ラスボスにもなれるジュリオン様のものだから。
「……やはり、ユリア様は完璧な淑女……」
「かのお方も……だったと言いますから……」
「さすユリでしかありませんわね……!」
まぁ本当かどうかは、これからダンジョンに潜っていろんな武器を使ってみないとなんだけどね。
ていうか僕のメイン攻撃手段は何にしようか。
なんにでも適性があるとしても、やっぱりメインを決めないと全部が中途半端になりがちだもんね。
実際、ゲームでも尖った性能ほど扱いやすかったし。
エロディーさんのときとかダンジョン案内のときは魔法で済ませちゃってたけど、男としてはやっぱり剣とか盾で戦いたいもんね。
よし、とりあえずなにかしら男らしい武器にしよう。
できればリーチが長い方が怪我もしにくいだろうし、なによりも武器も大きくなるからかっこよくなるし。
それに、ほら。
お嬢様キャラが無骨な大剣とか持ってるのって、かっこ良くない?
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