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4章 女装して路地裏から町を堕とした
63話 追いついたけどやらかして革命秒読み
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「――――――――――」
世界が引き延ばされる。
そんな感覚。
たぶんゲーム的には肉体加速に集中、思考加速、索敵とかいろいろのバフをかけているはず。
ジュリオン様はボスとして主人公たちに立ち塞がることが多かったからか、普通の――モブ子ズが使ってた補助魔法とは違い、戦闘前に自分を強化することができる。
ただし、魔力を使う割にはどのくらいかってのが体感でしか分からない中途半端さ。
それでも、効力はさすがのようで。
「何だ!?」
「孤児たちが走り回ってる!?」
「おい、スリに気をつけろ! あいつらは――」
大通りを行き交う人々には、僕が通り過ぎてから認知されるくらいの速度は出せているらしい。
……これでも、スリのあの子に少しずつ追いつく程度だ。
一体どんなスキルとかを持ってるのか……いや、今は良いか。
ダンジョンでも使わなかった、全力でのバフと走り。
なかなかキツい……けど、もう少しだ。
周囲で驚く声のする中――あ、急いだからフード取れてるけどもうしょうがないや、どうせ路地に入るし――姿勢を低くし、子供としての重心の低さを使いながらさらに加速、前を逃げる盗人を追跡。
……すごいな、この状態。
歩く人たちの行動が完全に分かるし、空を舞ってる葉っぱとかが止まって見えるんだ。
そうして、なんだか異様に長く感じた追跡劇は――路地裏に入ってすぐに、相手の都合で終了する。
「お、リラ――ってお前!?」
「兄貴! やべぇ、トチッた!!」
ずいぶん前――かなり全速でも追いつくので精いっぱいだった彼女は、身内と思しき、おなじく孤児の子供と話すためにほんの一瞬だけ立ち止まる。
――これ以上の面倒は嫌だから、
「――――――止まりなさい。死にたいなら動きなさい」
あ、この10日間で染みついたしゃべり方になってる。
この子たち相手に猫かぶるっていうか女の子のフリする必要はないんだけども、
「は?」
「おい待て、返――――」
僕は手のひらを彼らに向け――――
「――――投げ・マイクロ極小ミジンコなめくじエビルジャッジメント」
ひゅっ――――――――――どごぉっ。
2人の周囲を囲むように、魔法で攻撃。
直撃はしないけども、振動だけで動きが相当にぶくなるはず。
「きゃあっ!?」
「ま、魔法攻撃!? って、瓦礫が……!」
……そう思ったけども……あ、やば。
魔法がいくつにも分裂して加速し――接触したレンガがことごとくに舞い上がり。
4つ5つが2人の周囲に着弾して地面をめくれ上がらせ、動きを完全に封じる。
逸れた魔法は2人を通り越して延々と建物を貫通していき――その先で上がる悲鳴に悲鳴、爆発音、上がる煙。
……あれ?
なんかとんでもないことになってる?
え、でも、ダンジョンじゃここまで――なってたわ。
全力のときはエロディーさんを消し炭にした上で、ダンジョンの構造物ごと吹き飛ばしてたわ……。
いや、でも、マイクロ極小ミジンコなめくじってくらいにしたつもりだったのに。
「何だ!?」
「敵襲か!?」
「……兄貴ぃ……」
「……手ぇ出しちゃいけねぇ相手だったんだ。頼み込んで、お前だけでも……」
座り込んで真っ青になり、抱き合う子供たち。
逃げる気配はない以前に、地面が1メートルくらい――2人の周囲をえぐってるから、思いっ切り飛ばないと逃げられもしないだろう。
それは、良い。
あの子から大切なものを返してもらえるだろうから。
それは、良いんだけども。
――もくもくと煙が上がるスラム街。
ようやく消えた魔法の先で、さらに何かが崩れる音。
悲鳴。
怒号。
「………………………………」
僕は、小さな手のひらを見つめる。
すっごく加減して――エミリーちゃんをいじめてたジュリオン様の感覚を思い出してたのに、それでもやっぱり必殺技は必殺技らしく、威力が桁違いだ。
……必殺技は、人に向けて撃たないようにしないと。
あと……この先のスラム街で人的被害出てたらどうしよう……?
まさか、このせいで革命とか……起きないよね?
ね?
◇
さて。
ようやく落ち着きを取り戻してきたスラム街。
表通りでの騒ぎはまだまだだから、場合によっては僕も逃げなきゃいけなくなるかもしれない。
――僕たちは、遠巻きに囲まれている。
この、スラム街の住人たちに。
見ただけで100人は超える数が、みっちりと裏路地に――けども、僕から10メートル以上は離れているから、彼らに襲われても何とかはなるだろう。
「あの子供が……?」
「馬鹿、指差すな!? どう見たってお貴族様の魔法だっただろうが!?」
「とうとう人攫いでは飽き足らずに、人殺しを……?」
「銀髪……まさか……いや、でも、あれは10年も前の……」
多くは子供から青年といった風貌で、みんな同じようにぼろを纏っていることくらいしか分からない。
というのも、彼らの話を必死に聞きとっていたから。
――でも、どうやら大ケガとか死んだとかは、今のところ聞こえてこない。
……ぎりぎりセーフだったか。
「また魔法を!?」
「今度やられたら半壊どころじゃ……!」
ほっと胸をなで下ろしたら、なんだかざわっと彼らが騒ぎ始める。
………………………………。
そこまで怯えなくても……あ、いや、町の人たちも言ってたじゃないか、「悪い貴族が人を攫ったりしてる」って。
――あれ?
僕、その悪い人の一味って思われてる?
「………………………………」
フードは取れていて。
今日帰る日だからいいやって、今日に限って砂をかけてない髪の毛は銀髪ってバレていて。
もちろん年格好どころか、大勢に顔すら見られていて。
……え?
これ、うまくしのがないと――貴族に対する革命の狼煙が上がっちゃう……?
世界が引き延ばされる。
そんな感覚。
たぶんゲーム的には肉体加速に集中、思考加速、索敵とかいろいろのバフをかけているはず。
ジュリオン様はボスとして主人公たちに立ち塞がることが多かったからか、普通の――モブ子ズが使ってた補助魔法とは違い、戦闘前に自分を強化することができる。
ただし、魔力を使う割にはどのくらいかってのが体感でしか分からない中途半端さ。
それでも、効力はさすがのようで。
「何だ!?」
「孤児たちが走り回ってる!?」
「おい、スリに気をつけろ! あいつらは――」
大通りを行き交う人々には、僕が通り過ぎてから認知されるくらいの速度は出せているらしい。
……これでも、スリのあの子に少しずつ追いつく程度だ。
一体どんなスキルとかを持ってるのか……いや、今は良いか。
ダンジョンでも使わなかった、全力でのバフと走り。
なかなかキツい……けど、もう少しだ。
周囲で驚く声のする中――あ、急いだからフード取れてるけどもうしょうがないや、どうせ路地に入るし――姿勢を低くし、子供としての重心の低さを使いながらさらに加速、前を逃げる盗人を追跡。
……すごいな、この状態。
歩く人たちの行動が完全に分かるし、空を舞ってる葉っぱとかが止まって見えるんだ。
そうして、なんだか異様に長く感じた追跡劇は――路地裏に入ってすぐに、相手の都合で終了する。
「お、リラ――ってお前!?」
「兄貴! やべぇ、トチッた!!」
ずいぶん前――かなり全速でも追いつくので精いっぱいだった彼女は、身内と思しき、おなじく孤児の子供と話すためにほんの一瞬だけ立ち止まる。
――これ以上の面倒は嫌だから、
「――――――止まりなさい。死にたいなら動きなさい」
あ、この10日間で染みついたしゃべり方になってる。
この子たち相手に猫かぶるっていうか女の子のフリする必要はないんだけども、
「は?」
「おい待て、返――――」
僕は手のひらを彼らに向け――――
「――――投げ・マイクロ極小ミジンコなめくじエビルジャッジメント」
ひゅっ――――――――――どごぉっ。
2人の周囲を囲むように、魔法で攻撃。
直撃はしないけども、振動だけで動きが相当にぶくなるはず。
「きゃあっ!?」
「ま、魔法攻撃!? って、瓦礫が……!」
……そう思ったけども……あ、やば。
魔法がいくつにも分裂して加速し――接触したレンガがことごとくに舞い上がり。
4つ5つが2人の周囲に着弾して地面をめくれ上がらせ、動きを完全に封じる。
逸れた魔法は2人を通り越して延々と建物を貫通していき――その先で上がる悲鳴に悲鳴、爆発音、上がる煙。
……あれ?
なんかとんでもないことになってる?
え、でも、ダンジョンじゃここまで――なってたわ。
全力のときはエロディーさんを消し炭にした上で、ダンジョンの構造物ごと吹き飛ばしてたわ……。
いや、でも、マイクロ極小ミジンコなめくじってくらいにしたつもりだったのに。
「何だ!?」
「敵襲か!?」
「……兄貴ぃ……」
「……手ぇ出しちゃいけねぇ相手だったんだ。頼み込んで、お前だけでも……」
座り込んで真っ青になり、抱き合う子供たち。
逃げる気配はない以前に、地面が1メートルくらい――2人の周囲をえぐってるから、思いっ切り飛ばないと逃げられもしないだろう。
それは、良い。
あの子から大切なものを返してもらえるだろうから。
それは、良いんだけども。
――もくもくと煙が上がるスラム街。
ようやく消えた魔法の先で、さらに何かが崩れる音。
悲鳴。
怒号。
「………………………………」
僕は、小さな手のひらを見つめる。
すっごく加減して――エミリーちゃんをいじめてたジュリオン様の感覚を思い出してたのに、それでもやっぱり必殺技は必殺技らしく、威力が桁違いだ。
……必殺技は、人に向けて撃たないようにしないと。
あと……この先のスラム街で人的被害出てたらどうしよう……?
まさか、このせいで革命とか……起きないよね?
ね?
◇
さて。
ようやく落ち着きを取り戻してきたスラム街。
表通りでの騒ぎはまだまだだから、場合によっては僕も逃げなきゃいけなくなるかもしれない。
――僕たちは、遠巻きに囲まれている。
この、スラム街の住人たちに。
見ただけで100人は超える数が、みっちりと裏路地に――けども、僕から10メートル以上は離れているから、彼らに襲われても何とかはなるだろう。
「あの子供が……?」
「馬鹿、指差すな!? どう見たってお貴族様の魔法だっただろうが!?」
「とうとう人攫いでは飽き足らずに、人殺しを……?」
「銀髪……まさか……いや、でも、あれは10年も前の……」
多くは子供から青年といった風貌で、みんな同じようにぼろを纏っていることくらいしか分からない。
というのも、彼らの話を必死に聞きとっていたから。
――でも、どうやら大ケガとか死んだとかは、今のところ聞こえてこない。
……ぎりぎりセーフだったか。
「また魔法を!?」
「今度やられたら半壊どころじゃ……!」
ほっと胸をなで下ろしたら、なんだかざわっと彼らが騒ぎ始める。
………………………………。
そこまで怯えなくても……あ、いや、町の人たちも言ってたじゃないか、「悪い貴族が人を攫ったりしてる」って。
――あれ?
僕、その悪い人の一味って思われてる?
「………………………………」
フードは取れていて。
今日帰る日だからいいやって、今日に限って砂をかけてない髪の毛は銀髪ってバレていて。
もちろん年格好どころか、大勢に顔すら見られていて。
……え?
これ、うまくしのがないと――貴族に対する革命の狼煙が上がっちゃう……?
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