Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶

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第1章

第三話 ~冒険者を引退した俺の自宅では旧知のギルドマスターが待ち構えていた~

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 第三話





「表から出るとリーファとスフィア王女に鉢合わせそうだから、裏口から出るよ」
「あはは。わかりました。二人には僕から話をしておきますね」

 必要書類にサインを終え、小切手を受け取った俺はエリックにそう話をしておいた。

「お疲れ様でした、師匠。王様にも話はしてますのでもしかしたら呼び出しがあるかもしれませんがその時はよろしくお願いします」
「ははは。まぁ、年金の受け取りに毎月15日には王都に顔を出す予定だよ」

 俺はそう言うと、エリックの肩に手を置いた。

「何かどうしようもないことがあったら連絡してくれて構わない。別に縁を切った訳じゃないからな。俺に出来る範囲でなら手を貸すさ」
「そう言って貰えると助かります」

 エリックはそう言うと頭を下げた。

「師匠の新しい門出に幸せがあるように祈ってます」
「ありがとう。エリックも頑張れよ」

 俺はそう言って、裏口から冒険者ギルドを後にした。



 そして、ひっそりと裏道から自宅の方へと歩いて行く。

 スーツと革靴なんて装いはさっさと脱ぎ捨てて、楽な格好をしたいよな。

 そう思っていると、頭の中に『女性の声』が響いてきた。

『冒険者家業二十年間お疲れ様でした。ベルフォード』
『ははは。労ってくれてありがとう、ツキ』

 女性の声に心の中で言葉を返す。
 声の主は俺の愛刀の『月光(げっこう)』だ。

 伝説級武器(レジェンドウエポン)と呼ばれる月光は、意思のある刀だ。

 固有能力は『永遠不滅(エンゲージ)』
 決して折れず、曲がらず、刃こぼれもしない。
 だが『彼女』に認められなければ鞘から抜くことすら出来ない。

 彼女との出会いは十五年ほど前だな。
 リーファとミソラと俺の三人パーティでダンジョンを攻略している時に、宝箱の中から見つけた。

 ちなみに『ツキ』という名前は俺がつけた。
 彼女の声は俺にしか聞こえないようで、他の人間にはこの刀を抜くことすら出来ない。
 心の声を口に出してしまって危ない人に見られてしまうことも昔はあった。

 そして、彼女は非常に『ヤキモチ妬きで寂しがり屋』な性格をしてる。
 彼女以外の武器を手にするのは言語道断。
 ある時は帯刀しないで出かけると帰ってきたら拗ねてしまってることもあった。

 そんな可愛い俺の愛刀だ。

『冒険者は引退したけど俺はお前を手放すつもりは微塵もないから安心してくれ』
『はい。私もベルフォード以外の人間に身体を許すことはありませんので』

 ツキの言葉に少しだけ微笑ましさを感じていると、彼女から少しだけ『冷たい声』が聞こえてきた。

『ですがベルフォード。私の耳には貴方が『婚活』をする。と言う話が聞こえましたが本気ですか?』
『……君の耳にも聞こえていたのか。まぁそうだね。俺もいい歳だからね。そろそろ結婚を……』
『ダメです!!!!』

「……っ!!!???」

 頭の中に響いたツキの大きな声に、俺は思わず声を漏らして表情を歪めてしまう。

『え、えと……ツキさん?何でダメなのかな?』

 心の中で彼女に問返すと、すごく不機嫌そうな声が返ってきた。

『ベルフォードは私という者が居るのに結婚をしようと言うのですか?浮気ですか?』
『う、浮気って……ツキは……ねぇ?』
『永遠不滅を誓った仲では無いですか!!酷いです……』
『……でもさ、ツキは刀だしな』

 俺が思わずそう言葉を返すと、何やら思案したツキが俺に問い掛けてきた。

『……刀でなければ良いのですね?』
『……え?』
『人としての身体があれば良いのですね?』

 つ、ツキは一体何を言ってるんだろうか……
 と、とりあえず良く分からないけど……あまりダメダメ言ってると拗ねてしまうからな、ここら辺で了承を出しておこうかな。

『そ、そうだね……俺としてはそれなら構わないと思ってるよ』
『言質取りました。ではベルフォード。私は『準備』に入ります。覚悟しておいて下さいね?』

 ツキはそう言うと、その後は一言も喋ることは無くなった。

「か、彼女は一体何をしようと言うんだろうな……」

 伝説級武器の考えてる事はちょっと良く分からないよな。

 そんなことを考えていると、自宅の前までやって来ていた。

 そして、俺の目には一人の『旧知の元パーティメンバー』が写っていた。

「待ってたわよ、ベル。でも意外と早かったじゃない?」
「そうだな。優秀なギルド職員のお陰でスムーズに手続きが出来たからな」

 俺がそう答えると、彼女はニコリと笑った。

「ふふふ。貴方がそう言ってたと伝えてあげれば、リルムちゃんも喜ぶと思うわよ」
「こんなおっさんに褒められても嬉しくないだろ?それに立ち話もなんだから家の中に入れよミソラ」
「そうね。お茶の一杯くらいは出してもらおうかしらね?」

 俺の言葉をミソラは軽く笑いながら言葉を返す。
 彼女の名前はミソラ。
 俺とリーファのパーティにすぐに加わった旧知の間柄だ。

 五年ほど前から冒険者を引退してギルド職員になった。
 冒険者時代の知識や人脈を利用して業務改革を行い、去年からギルドマスターとしての地位に着いた女性だ。

「ちょうど先週に良い茶葉を手に入れたんだ。ご馳走するよ」

 俺はそう言って扉の鍵を開けてミソラと一緒に部屋の中に足を踏み入れた。
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