17 / 30
幼少期編
猛アプローチ
しおりを挟む
あの日、俺の指に跡をつけると満足そうに笑ったレオンは、俺に「絶対、僕を求めさせてやる」と。そんな宣戦布告めいた発言をした。
その日から、文字通りレオンの猛攻が始まったのだ。
前と変わらず、一緒に学校に通うのは同じだが、隙を見つける度に接触を増やしてきたのだ。
授業中、大学の講義室のような教室で、隣に座ったレオンの足が俺の足に触れる。
ベンチ型の座席なのでそんなに近かっただろうかと思っていたが、すぐにそれは意思を持って俺の足をなぞり始めたので思わず固まった。
ちらりと隣のレオンに視線を向けると、顔は前に向けたまま。クッと口の端だけを上げて笑ったのだ。
「レオン……ッ」
小声で抗議をすると、ようやく足が離れていく。
ちょっと待ってほしい。まさかとは思うが、こんなアプローチがこれから先ずっと続くのか!?
またある時、カフェテリアで可愛い女の子を見かけて、つい癖のように「可愛い」と口にした瞬間。レオンは、誰にも見られないように机の下で俺の手をもてあそんだ。
まだ子どもだからか、節のない柔らかな指が、手の甲をなぞる。
触れるか触れないかのフェザータッチから、するりと指を絡ませ、気づけばいわゆる恋人つなぎになっていた。
授業中とは違って、ここは全校の視線が集まるカフェテリア。
優良株のアルファとして注目されている以上、下手に動くこともできない。
そんな俺の手を、レオンがキュッと一度だけ強く握って気を引いた。
思わず顔を上げると、レオンはその澄んだアイスブルーの瞳に、はっきりと嫉妬を宿して俺を見ていた。
「僕とどっちが可愛い?」
「レオン」
考える間もなく口をついた答えに、レオンは満足そうに微笑んだ。
……こんなんされたら、誰だって性癖歪むだろ。。
と、まぁ。このように日々レオンからもうアプローチがかけられているわけなんだが。
もう、ね……。これでも健康な男児なわけですよ、俺も。
悶々とするものの、レオンをそういう欲の対象としてみようとすれば、言い様のない罪悪感と自己嫌悪の気持ちが湧いてくる。
だけど、レオンの気持ち自体は嫌なわけではない。むしろそれを嬉しいとさえ思ってしまうから困るのだ。
どうするべきかなんて、考える余裕もない。
学校が終われば、レオンは当然のように俺の部屋へとやってくる。
そして、ふわりとフェロモンを俺に向けてくるのだ。
ベルガモットやレモンのように爽やかな香り。
そして、覚えろと言わんばかりに、俺の体を噛むのだ。
「カイル、俺を見て」
「ン……ッ」
首筋を噛まれ濡れた首筋にレオンの吐息が当たり、ピクリと体を跳ねさせる。
その反応に気をよくしたレオンはさらに歯を立てた。
頭の中に、ずっと同じフレーズがリフレインする。
『レオンは親友でなければならない』
そうでなければ、レオンと一緒にいられない。
そんな気持ちだけが沸き上がるのだ。
もうあと少しで幼年学校も卒業する。
そして、学園に入るまでの間の二年で将来就く職業の適性を見るための訓練期に入る。
俺は武官だが、レオンは文官だ。どうやったって、しばらく離れることになる。
今、こんなにもレオンにドキドキするのは、きっと混乱しているんだ。親友が急にアプローチをかけてきたから。
そのはずだ。そうでなければならない。
きっと、訓練期で距離を置けばまた元の関係に戻れるはずだ。
それなのに。
……バカか、俺は。
なぜ、胸の奥がズキズキと痛むんだ。
――――――――――
思った以上にカイルが頑固だ。
もはや日課のようになっているカイルへのアプローチ。
カイルの部屋で、二人掛けのソファにカイルを押し倒し、体を噛む。
あぁ、やっぱり僕はアルファなんだ。
この、自分よりも強いアルファを組み敷いていることにどうしようもないくらい気分が高揚するのだから。
威圧する時と比べると弱いフェロモン。しかし、オメガの発情を促すには十分なそれ。
今僕の下にいるのはオメガではないのに、その状態でカイルに歯を立てる度に充足感を覚える。
「れ、おん……ッ、もういいだろ」
カイルの体からも、ふわりとフェロモンが発せられる。
僕の、どちらかと言うと爽やかな匂いとは違い、スパイシーでウッディな香り。
そこに、カイルの汗の臭いが混じってたまらなくなる。
「まだ……。僕を覚えて、ちゃんと」
幼年学校を卒業したら、僕は一度宰相である父のいる政務省傘下の部署に入る。
カイルは、きっと王都の警備をする王都騎士団傘下の訓練騎士団に入るのだろう。
十五歳になって聖ミレニア学園に入学すれば、また寮生活が始まり一緒に過ごせる。
でもそれまでは、今のように会うことはできない。
「カイル……っ。僕をその身に刻んで、心の一番深いところに住まわしてくれ」
カイルのギラギラと煌めく金の目には、確かな欲が浮かんでいるのに。
僕の、こんな身勝手な求愛を拒否しないでいるのに……。
アルファならば、他のアルファにマウントを取られるような行為を嫌う。
でも、カイルは僕にそれを許している。それが何よりの証拠だろう。
それなのに、必ず最後には恐怖の色が滲むのだ。
カイルの目に滲むその恐怖が、僕を遠ざけている。
……まるで、自分自身の中にある何かを恐れているような、そんな目だ。
あぁ、もう。本当に。
我が幼馴染ながら、頑固で理性的で面倒くさい男だ。
あれこれ考えずに、ただ心のままに僕を求めてくれればいいものを。
いったいお前は何を見ているんだ?
僕はこんなにもお前ただ一人を求めていると言うのに……。
「カイル……、僕を見てくれ」
その日から、文字通りレオンの猛攻が始まったのだ。
前と変わらず、一緒に学校に通うのは同じだが、隙を見つける度に接触を増やしてきたのだ。
授業中、大学の講義室のような教室で、隣に座ったレオンの足が俺の足に触れる。
ベンチ型の座席なのでそんなに近かっただろうかと思っていたが、すぐにそれは意思を持って俺の足をなぞり始めたので思わず固まった。
ちらりと隣のレオンに視線を向けると、顔は前に向けたまま。クッと口の端だけを上げて笑ったのだ。
「レオン……ッ」
小声で抗議をすると、ようやく足が離れていく。
ちょっと待ってほしい。まさかとは思うが、こんなアプローチがこれから先ずっと続くのか!?
またある時、カフェテリアで可愛い女の子を見かけて、つい癖のように「可愛い」と口にした瞬間。レオンは、誰にも見られないように机の下で俺の手をもてあそんだ。
まだ子どもだからか、節のない柔らかな指が、手の甲をなぞる。
触れるか触れないかのフェザータッチから、するりと指を絡ませ、気づけばいわゆる恋人つなぎになっていた。
授業中とは違って、ここは全校の視線が集まるカフェテリア。
優良株のアルファとして注目されている以上、下手に動くこともできない。
そんな俺の手を、レオンがキュッと一度だけ強く握って気を引いた。
思わず顔を上げると、レオンはその澄んだアイスブルーの瞳に、はっきりと嫉妬を宿して俺を見ていた。
「僕とどっちが可愛い?」
「レオン」
考える間もなく口をついた答えに、レオンは満足そうに微笑んだ。
……こんなんされたら、誰だって性癖歪むだろ。。
と、まぁ。このように日々レオンからもうアプローチがかけられているわけなんだが。
もう、ね……。これでも健康な男児なわけですよ、俺も。
悶々とするものの、レオンをそういう欲の対象としてみようとすれば、言い様のない罪悪感と自己嫌悪の気持ちが湧いてくる。
だけど、レオンの気持ち自体は嫌なわけではない。むしろそれを嬉しいとさえ思ってしまうから困るのだ。
どうするべきかなんて、考える余裕もない。
学校が終われば、レオンは当然のように俺の部屋へとやってくる。
そして、ふわりとフェロモンを俺に向けてくるのだ。
ベルガモットやレモンのように爽やかな香り。
そして、覚えろと言わんばかりに、俺の体を噛むのだ。
「カイル、俺を見て」
「ン……ッ」
首筋を噛まれ濡れた首筋にレオンの吐息が当たり、ピクリと体を跳ねさせる。
その反応に気をよくしたレオンはさらに歯を立てた。
頭の中に、ずっと同じフレーズがリフレインする。
『レオンは親友でなければならない』
そうでなければ、レオンと一緒にいられない。
そんな気持ちだけが沸き上がるのだ。
もうあと少しで幼年学校も卒業する。
そして、学園に入るまでの間の二年で将来就く職業の適性を見るための訓練期に入る。
俺は武官だが、レオンは文官だ。どうやったって、しばらく離れることになる。
今、こんなにもレオンにドキドキするのは、きっと混乱しているんだ。親友が急にアプローチをかけてきたから。
そのはずだ。そうでなければならない。
きっと、訓練期で距離を置けばまた元の関係に戻れるはずだ。
それなのに。
……バカか、俺は。
なぜ、胸の奥がズキズキと痛むんだ。
――――――――――
思った以上にカイルが頑固だ。
もはや日課のようになっているカイルへのアプローチ。
カイルの部屋で、二人掛けのソファにカイルを押し倒し、体を噛む。
あぁ、やっぱり僕はアルファなんだ。
この、自分よりも強いアルファを組み敷いていることにどうしようもないくらい気分が高揚するのだから。
威圧する時と比べると弱いフェロモン。しかし、オメガの発情を促すには十分なそれ。
今僕の下にいるのはオメガではないのに、その状態でカイルに歯を立てる度に充足感を覚える。
「れ、おん……ッ、もういいだろ」
カイルの体からも、ふわりとフェロモンが発せられる。
僕の、どちらかと言うと爽やかな匂いとは違い、スパイシーでウッディな香り。
そこに、カイルの汗の臭いが混じってたまらなくなる。
「まだ……。僕を覚えて、ちゃんと」
幼年学校を卒業したら、僕は一度宰相である父のいる政務省傘下の部署に入る。
カイルは、きっと王都の警備をする王都騎士団傘下の訓練騎士団に入るのだろう。
十五歳になって聖ミレニア学園に入学すれば、また寮生活が始まり一緒に過ごせる。
でもそれまでは、今のように会うことはできない。
「カイル……っ。僕をその身に刻んで、心の一番深いところに住まわしてくれ」
カイルのギラギラと煌めく金の目には、確かな欲が浮かんでいるのに。
僕の、こんな身勝手な求愛を拒否しないでいるのに……。
アルファならば、他のアルファにマウントを取られるような行為を嫌う。
でも、カイルは僕にそれを許している。それが何よりの証拠だろう。
それなのに、必ず最後には恐怖の色が滲むのだ。
カイルの目に滲むその恐怖が、僕を遠ざけている。
……まるで、自分自身の中にある何かを恐れているような、そんな目だ。
あぁ、もう。本当に。
我が幼馴染ながら、頑固で理性的で面倒くさい男だ。
あれこれ考えずに、ただ心のままに僕を求めてくれればいいものを。
いったいお前は何を見ているんだ?
僕はこんなにもお前ただ一人を求めていると言うのに……。
「カイル……、僕を見てくれ」
1,181
あなたにおすすめの小説
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
【第一部・完結】毒を飲んだマリス~冷徹なふりして溺愛したい皇帝陛下と毒親育ちの転生人質王子が恋をした~
蛮野晩
BL
マリスは前世で毒親育ちなうえに不遇の最期を迎えた。
転生したらヘデルマリア王国の第一王子だったが、祖国は帝国に侵略されてしまう。
戦火のなかで帝国の皇帝陛下ヴェルハルトに出会う。
マリスは人質として帝国に赴いたが、そこで皇帝の弟(エヴァン・八歳)の世話役をすることになった。
皇帝ヴェルハルトは噂どおりの冷徹な男でマリスは人質として不遇な扱いを受けたが、――――じつは皇帝ヴェルハルトは戦火で出会ったマリスにすでにひと目惚れしていた!
しかもマリスが帝国に来てくれて内心大喜びだった!
ほんとうは溺愛したいが、溺愛しすぎはかっこよくない……。苦悩する皇帝ヴェルハルト。
皇帝陛下のラブコメと人質王子のシリアスがぶつかりあう。ラブコメvsシリアスのハッピーエンドです。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。
他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、
両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。
フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。
丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。
他サイトでも公開しております。
表紙ロゴは零壱の著作物です。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる