α主人公の友人モブαのはずが、なぜか俺が迫られている。

宵のうさぎ

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青年期編

公認

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 しばらくぎゅうぎゅうと抱きしめ合い、いますぐに引き離されずに済んだことへの喜びを分かち合う。
 レオンのサラサラとした髪を撫で、そのまま首筋を辿って耳をくすぐる。
 彼はくすぐったそうに少し首をすくめた後、少し顔を離して非難するような目で見てきた。

 白い肌。スッと通った鼻筋。薄い唇。
 きりりとした切れ長のアイスブルーの瞳。
 もう、どうやったって女には見えない顔つき。
 存在を主張する喉仏。
 
 レオンの頬を両手で挟み込み、できるだけ丁寧に、この愛おしさの十分の一でもいいから伝わる様に。ゆっくりと顔を近づける。
 ツンと鼻先同士がぶつかってしまい、二人してきょとりと目を瞬かせ、それがおかしくてお互い少し笑った。
 改めて、顔を近づけあい。今度は少し角度をつけて。ようやくレオンと唇を重ね合わせた。



 唇を重ね合わせるだけのキスは非常に稚拙で、官能もへったくれもない。
 だがその稚拙なキスだけで心が満たされ、同時に下半身が硬く主張する。
「…………カイル」
 俺の膝の上に座るレオンももちろんそれに気づき、目尻を赤くしてじとりと睨みつけてくる。
「……ごめん。反応しちゃった」
「…………手伝おうか?」
「いや、止まらなくなりそうだから。また今度」

 流石に、応接室でおっぱじめるわけにもいかない。
 いつだれが入ってくるのかわからないしね。ウン。
 それに、どっちが受け入れる側なのか問題もあるしね。ウン……。

 それなのに、レオンは俺の唇にカプリと嚙みついてきた。
 比喩ではなく、本当に歯を立てて。
 散々覚え込まされた行動に、反射的にふわりとフェロモンが立ち上る。

「……レオン。我慢できなくなるから」
「カイルはいつもいつも頭で考えすぎなんだ。素直に僕を求めてみろよ」
「お馬鹿」

 コツリとこぶしを頭に軽く押し当てると、抗議するように今度は首筋に噛みつかれる。

「んっ」
「……僕が、どれだけ焦らされたと思ってるんだ?」
「俺もだいぶ焦れてるんですが……」
「カイルのソレは勝手にお前が我慢しただけだろ。自業自得だ。早く手を出せばいいものを……」
「お前ねぇ……。公爵閣下に許可ないときに手を出したらだめでしょ」
「僕がそれを望んでいるのに?」
「望んでいても、だ」

 ほんっと。いかにも高位貴族の手本です。みたいな顔をして。これでなかなかの跳ね返り。
 自分の想いに素直でまっすぐなレオンがまぶしく感じる一方で、恨めしい。
 世間体を守ることが貴族社会でどれだけ大切か知っているくせに、俺をこんなにも煽るのだから。

 ニヤリと笑ったレオンが俺と向き合うように腰をまたぐと、そのまま下腹部を密着させるように抱き着いた。

「ん……ッ、こら。レオン」
「……はっ、カイル。つまらないことばっかり考えるな」

 再び唇を重ね合わせ、お互いの熱を分け合う。
 お互いのわずかな動きが刺激に繋がり、ひっついたところからどろどろに溶けて一つに交じり合いそうなほど、どこもかしこも熱を帯びていた。



 しばらく唇を引っ付け、時には唇を食みながら熱を分かち合った後、お互いに物足りなさを感じながらも離れざるを得なかった。

「…………これ以上は、洒落にならないぞ、レオン」
「…………同感だ。さすがに僕も応接間のソファではどうかと思う」

 体の奥に宿った熱を冷ますために応接間のソファに隣り合って座る。しかし、どうにも離れがたくて手だけを絡め合わせている。

「ノリノリだったくせに」
「カイルが堅物すぎるからだ」
「ああ言えばこう言うな」
「そういう僕も嫌いじゃないだろ?」
「愛してるさ」
「……僕も、愛してるよ」
 
 もはや、俺とレオンの仲を裂く問題はないに等しい。
 どちらかがオメガにならなければならないが、結ばれる可能性が全くなかったころに比べれば、公爵閣下と父の双方から黙認されたのだ。
 それだけで大きな一歩だ。
 もはや、想いを告げ合うのになんの躊躇も必要ない。



「カイル、君の為なら僕は全てを捨てられる……」

 しばらく、穏やかに話をしていたのだが、不意にレオンが真面目なトーンでそう語りかけてきた。

「レオン、それは……」
「ラジェルド侯爵の話を聞いただろう。転化するためには心身ともに相手に屈服する必要がある。僕はカイルよりもアルファとしては強くない。僕がオメガになる」
「……子供を産むことになるんだぞ。恐ろしくないのか?それに、宰相職をするうえで障害になるかもしれない」
「それはカイルも同じだろう。宰相である僕よりも、騎士になるカイルの方がアルファでいるべきだ。僕はたとえオメガになっても、この身に流れる王家の血が僕を守ってくれるが、カイルはそうじゃないだろう。お前がアルファでいるべきだ」

 レオンの言っていることは間違いではない。騎士がアルファの威圧フェロモンを扱えるかどうかは非常に重要な強さの指標になる。
 だが、そんな理由で負担をレオンに押し付けてもいいのかどうかがわからない。
 顔をしかめて何も言えずにいる俺に、レオンはふっと柔らかな笑いをこぼす。

「今、僕は全てを捨てると言ったけれど、なにも捨てるばかりじゃないんだ。カイルとの未来が得られる。それに……」

 少し言いよどんだレオンの言葉を待っていると、ぽすりと俺の肩によりかかる。
 表情は見にくいが、つないだ手から伝わる熱が上がる。さらに、ちらりと覗く耳が真っ赤に染まっていた。



「ぼ、くは……っ、かいるに、め、ちゃくちゃに……、されたいと、思ってる…………」

「は……?」

 まさかの発言に言葉を失っている俺に、レオンはうなじを晒すように繋いでいない方手で首筋にかかる髪をのける。

「カイル。僕を、きみのオメガにしてくれ……っ」
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