α主人公の友人モブαのはずが、なぜか俺が迫られている。

宵のうさぎ

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青年期編

準備

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 公爵閣下と父から、どちらかがオメガになることを前提の交際を黙認されてからレオンと話し合った。
 父に相談し、貴族街への入り口付近にある裕福な商家向けの屋敷を一棟もらい受け、そこで転化のために会うことにした。
 流石に、意図的にフェロモンを交らわせるのにあのサロンカフェの二階を使うのは流石にな。



「平民の家というものには初めて入ったが、なかなかいいな。こじんまりとしていて。お前の匂いがよくわかる」
「平民の家の中でも広い方だけどね」

 レオンを招き入れた屋敷の中。家具などは以前住んでいた商人一家が置いて行ったものだ。
 その中でベッドだけは買い換えた寝室の中、レオンと二人でベッドに腰掛ける。

「レオン、本当にいいのか?」
「ああ。……ヒートアタックにあった僕を助けに来てくれた時のことを、覚えているか?」
「忘れるわけがない。俺は、あの後ラットに陥ったとき、想像の中でお前を汚した。ずっと……、それが許せなくて、レオンからの求愛を受け取れずにいた」
 罪を告白するようにそう告げると、レオンは少し驚いたようだがすぐに俺の手に指を絡めた。

「僕も、あの時君への恋を自覚したよ」

 俺の手を自身の顔へと導き、触れさせる。

「あの日、カイルのフェロモンを浴び、あの強く煌めく目を見てから。僕はずっとお前のつがいになりたくてしょうがなかった。カイル、僕を君だけのオメガにしてくれ」
「…………怖かったら、言ってくれ」

 
 転化の条件は、アルファの威嚇フェロモンに中てられること。
 それにより、転化する側が本能的に『敵わない』と思うことで、その強いアルファの子孫を残そうと体が転化する。
 だから、俺はレオンを完全に屈服させるつもりで強く威嚇フェロモンを出した。

 すぐにレオンの体は固まり、わずかに震えだす。
 本能的な恐れだ。それなのに、顔はとろりと蕩けて俺を見上げてくる。

 なるほど。これは。なかなか心臓に悪い。

 いますぐに、自分のつがいを押し倒し、体の奥底まで貪りたい衝動に駆られるが、オメガでもないのに負担があまりにもデカすぎる。
 服を脱いではいけないと、自身を戒める。
 真に体を繋げるのは、レオンが本当にオメガになってからだ。

「レオン、うなじを見せて」

 ごくりと唾を飲み込む音が大きく聞こえる。
 レオンが、非常にゆっくりとした動きでベッドの上にのぼり、俺に背を向けた。
 俺が言った通り、うなじがよく見えるように髪をのけて少し頭を下げた。

 無防備に晒された白いうなじに、たまらず飛びつき歯を立てた。

「ぁッ!」
「レオン、れおん。俺のつがい。俺の唯一」

 ぶわりと余計に自身から放たれるフェロモンが濃ゆくなるのを感じる。
 何度もなんども歯を突き立て、噛み跡を残す。
 その跡をなぞる様に舌を這わせ、そのたびにびくりと跳ねるレオンの反応を楽しむ。

「ッ……かいる、ぞわぞわするっ」
「うん。もっと感じてくれ」
「は……ッ。くそっ、下は触られてもいないのに……ッ」

 よく見ると、レオンの下半身の一部がわずかに盛り上がり、呼吸も荒くなっている。
 むらっとくるが、我慢だ。手を出して止められる自信がない。
 自分のモノも、硬く反応している。

「レオン。早く、俺だけのオメガになってくれ……っ」



 そんな逢瀬というにはあまりにも濃密な時間を何度もレオンと共に過ごす。
 タイムリミットは、成人する十八歳までの数年だ。
 俺もレオンも、訓練先での休みをかぶせてできるだけ会えるようにした。

 国境騎士団の記録でもあったように、たとえ転化の兆候が出始めていても、しばらく離れてしまうと意味がなくなる。
 毎日会うことができない分。会えた時には飛び切り濃いフェロモンをレオンの体に刻み付けた。
 屈服しろと、俺の子を産めと。そうレオンの体に言い聞かせるように。何度も何度もそのうなじに歯を立てた。





 何度目の逢瀬だろうか。気づけば、訓練期のほとんどの時間が過ぎ去り、学園への入学が目前に迫っている。
 オメガへの転化は順調と言ってもいいだろう。
 回数を重ねるごとにレオンの体の反応はどんどん顕著になっていく。
 最近では、何度か一時的なものではあるけれど発現熱のような症状も現れるようになってきた。

 今日も、いつもと同じようにレオンをオメガへ転化させるために寝室のベッドの上でレオンのうなじに歯を立てる。

「ぁ……ッ、カイル、カイルッ。もう、むりだ……っ」
「レオン、まだだよ。逃げないで」
 ベッドにうつぶせになって逃げようとするレオンの上から覆いかぶさるようにして、彼をシーツに縫い付ける。
 お互い、服は着たままだ。それがかろうじて俺の理性を引き留める。

「かいる、カイルッ。も、あつい……ッ」
「ん。大丈夫。そのまま、俺を受け入れてくれ」

 濃いフェロモンをレオンにぶつけながら、それが早くレオンの体を作り替えてくれと願いを込めてうなじに噛みつく。
 それ以外には何もしていないのに、びくびくと震えるレオンの体。
 この行為を始めたばかりのころは、今ほど敏感ではなかった。
 しかし、回数を重ねるごとにレオンの反応はどんどん顕著になっていった。

 いますぐに、ここでレオンを奥まで拓きたい衝動に駆られる。
 しかし、まだオメガになっていないレオンの体では負担が大きすぎる。

 抑えきれぬ欲をフェロモンに込めてぶつければ、呼応するようにレオンの香りにも甘さが混じる。

「レオン、愛してる」
「ひぁっ!」

 びくりとひと際大きく体を震わせ、甲高い声を一度上げたレオン。弓なりに反った背中が艶めかしい。
 信じられないとばかりに真っ赤に染めた顔でこちらを振り返るレオンの表情で、この愛撫未満の行為だけでレオンが達してしまったのだと察した。

 言い様のない愛おしさが募り、再びそのうなじに強く嚙みついた。

 すっきりとした甘みを含んだベルガモットのようなフェロモンの匂い。
 レモンの皮のように、少しばかり苦みの残るそれに、どうしようもないほど煽られる。
 噛みつくたびにあがる高い声が、ガリガリと俺の理性を削っていく。



 早く、はやくオメガになってくれ。

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