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第三十九話②『相談と恋バナ』
しおりを挟む「平尾君今ままでの服は自分で決めてたんだよね?」
確認の為そう問いかけると彼は小さく頷く。なら何を間違ってこんなヘンテコなコーディネイトを選出したのだろうか。
嶺歌は平尾にこれまで通りの選び方でいいとアドバイスをするが、平尾はバツが悪そうにこんな言葉を口に出してきた。
『そ、それが……自分が今までどんな風に選んでたか分からなくなったんだ』
「へ? どゆこと?」
嶺歌は訳が分からず彼に言葉の意味を問う。だが平尾も困惑した様子で『で、デタラメ言ってるわけじゃなくて』と必死に弁解していた。
嘘をついているとは思っていないが、彼の言っている事が真面目に分からない嶺歌は、しばし平尾の話を聞いてみることにした。
「疑ってないから落ち着きなよ。最近なんかあったの? 話くらい聞いてあげるけど」
嶺歌が平尾に落ち着くようにそう言葉を投げかけると、彼も少し焦りをしまえたようでこちらに短くありがととお礼を言い、ここ最近の出来事を嶺歌に話し始めていた。
平尾はここ数日、形南と会っていない間に彼女に対しての想いが溢れ出しているらしい。
それは本人も予想している以上に大きなもので、今すぐにでも彼女に想いを伝えたいものの、しかしどうやったら形南にそういう目で見てもらえるのかを考え始めると反芻思考に陥り、埒が開かないようだ。
そのような状況にはまってしまっているせいか、服装選びにも頭が回っていないようだった。混乱状態になりかけた平尾は悩んだ末に嶺歌に相談をしようと重たい腰をあげて相談した、という流れらしい。
それを聞いた嶺歌は何となく彼の気持ちが分かってきていた。結局は、恋煩いのようなものだろう。平尾はそのせいでいつもは出来ていた当たり前のことが出来なくなってしまっているのだ。
つまり、平尾は形南を思うがあまりに彼女に思い焦がれる行為以外の事が出来ない状況なのだ。
「状況は分かったよ、まじかって思ったけど何かあんたの状況は共感できる」
『えっ!? 本当?』
「うん、とりあえず持ってる服全部見せて」
そう言って嶺歌はしばらく平尾のファッションショーに付き合う事にした。
数時間でようやく平尾のデート服が決まり、ひとまず目的を達成出来た事に安堵していると『あ、ありがとう和泉さん』と平尾がぎこちない声でお礼を述べてくる。
「いいよ。あたしも二人には上手くいってほしいし」
嶺歌が惜しげなくそう答えると平尾は『が、頑張る……』と再び声を上げ始める。
そんな彼の声を聞いて平尾の形南への想いの強さを再認識した嶺歌は、彼がこの先の形南との進展を前向きに考えているような気がして、一つ質問をしてみる事にした。
「ねえあれなと付き合いたいって今思ってる?」
『ええっ!!?』
「いやそういう反応いらんから。前は否定してたでしょ。そこどうなの?」
嶺歌が彼の無駄な反応に言及してすぐに催促すると、平尾はえっとと言葉を詰まらせながらしばしの沈黙の後に『……思ってる』と答える。
嶺歌はその回答に口元が緩んだ。平尾もこの数ヶ月で考えが変わったようだ。
「いいじゃん、大丈夫でしょ。いけるよ」
そう背中を押してやると嶺歌は明日の予定の事も聞いてみた。形南とは完全に二人きりで会う予定なのだろうか。
(あれなから連絡来てないんだよな)
そう思いながら平尾に質問をぶつけると彼は二人きりで会うのだと答える。しかしそこでとある人物の名も出てきた。
『あ、明日は実は車で移動なんだ。だから兜悟朗さんもいる事に…なるのかな』
「……そなんだ」
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