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第3話 寝ぼけた本音って、いちばん本音じゃない?
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目が覚めたとき、最初に感じたのは――あたたかさだった。
毛布の重み。
指先に残る、体温の記憶。
それから、すぐ近くにいる気配。
俺はゆっくり瞬きをして、天井の灯りを見つめた。
ソファで寝ていたらしい。
寝落ち――した。
信じられない。
俺が、人の前で。
しかも、彼女の前で。
そんな無防備なことを。
喉が渇いている。身体の奥がだるい。でも、いつものだるさと違った。
苦しい、じゃない。
ただ、休んだ後の重さ。
それが、変に嬉しい。
「……起きた?」
小さな声がして、俺はそちらを見た。
彼女が、ソファの端に座ったまま、毛布を膝に乗せていた。
寝ていない。
ずっとここにいたのか。
そう思った瞬間、胸がざわっとした。
――迷惑だ。
こんなことをさせたら、迷惑だ。
俺は即座に笑顔を作る。
「すみません。寝てしまいました」
謝罪は安全。
謝るのは習慣。
彼女は首を振った。
「謝らないで」
それから、カップを差し出す。
湯気の立ったお茶。さっきと同じ香り。
「喉、渇いてない?」
「……ありがとうございます」
一口飲むと、喉が生き返るみたいに潤った。
その瞬間、俺の頭がようやく働き始める。
――どうしよう。
ここで最適な行動は何だ。
彼女に礼を言って、仕事の準備に戻る。彼女を休ませる。俺は普段通りに戻る。
普段通り。
そうすれば、全部丸く収まる。
――収まるはずなのに。
彼女は俺を見て、穏やかに言った。
「ねえ。今日も“本音”言って」
「……」
まだやるのか。
俺は心の中で小さく呻く。
“本音を一つ”のルール。
彼女が作ったこのルールは、俺にとって拷問みたいで――でも、救いでもあった。
「……眠気は取れました」
それっぽい言葉を選んだつもりだった。
彼女は少し眉を上げる。
「それ、本音?」
くっ、と喉が詰まった。
この人は、逃げ道の作り方を知っているのに、それを使わない。
まっすぐに、俺を捕まえに来る。
優しく。
でも確実に。
「……」
俺は視線を落とした。
本音。
本音なんて、いつもは押し込めている。
口にしたら終わる。
口にしたら、欲しくなってしまう。
それでも。
喉の奥から、勝手に出てくるものがあった。
「……もう少しだけ、ここにいたいです」
言った瞬間、彼女の目がふわっと柔らかくなる。
「うん。いいよ」
迷いがない。
当たり前みたいに許されることが、怖い。
怖いのに――胸の奥が、ほっとしてしまう。
俺はカップを両手で包んで、湯気に逃げ込んだ。
彼女は少しだけ間を置いて、言う。
「ねえ。昨日、寝る前に」
俺は息を止めた。
やめてほしい。
昨日の俺は、崩れていた。
覚えていないふりをしたい。
「……あなた、言ったよ」
彼女が、穏やかに。
「一人にしないでください、って」
耳が熱くなる。
顔が熱い。
心臓が恥ずかしさで跳ねる。
俺は咄嗟に笑って誤魔化そうとした。
「寝ぼけてましたね……」
逃げる。
軽くする。
冗談にする。
それが安全。
でも、彼女は首を振らない。
笑わない。
ただ、優しく言った。
「寝ぼけた本音って、いちばん本音じゃない?」
俺は固まった。
やめて。
そんなこと言わないで。
そうしたら、俺は――
「……」
言葉が出ない。
彼女は追い詰めない。
代わりに、ひとつ提案するみたいに言った。
「今日も、同じこと言っていいよ」
――同じこと。
一人にしないでください。
それを、寝ぼけてなく言うのは。
あまりにも――重い。
俺が言ったら、重すぎる。
でも彼女は、そういう重さを、嫌がらない。
むしろ、受け止める顔をする。
俺は視線を逸らして、喉の奥で小さく息を吐いた。
「……言えません」
「うん」
彼女はすぐ頷いた。
「じゃあ、別の本音」
それが優しさだった。
逃げ道を作ってくれる優しさ。
俺はカップを置いて、毛布の端を握りしめた。
本音。
別の本音。
胸の奥から、また勝手に出てくる。
ずっと隠していたもの。
言ったら終わるもの。
「……触れてほしいです」
言ってしまった瞬間、世界が静かになった。
自分の声が、あまりにも小さくて。
それでも、確かに聞こえてしまって。
俺は息ができなくなる。
恥ずかしい。
惨めだ。
情けない。
俺は大人だ。領地の補佐官だ。人の前でそんな――
彼女が立ち上がった。
静かに、音を立てずに。
俺の前に来て、膝をつく。
目線が同じ高さになる。
逃げない。
でも、押しつけない。
「うん」
彼女は言った。
「触れるね」
その言葉だけで、胸の奥がほどけた。
彼女の手が、そっと俺の頬に触れる。
指先があたたかくて、やわらかい。
俺は目を閉じた。
これ以上見たら、壊れてしまう。
「……重いですか、私」
彼女が小さく聞いた。
俺は目を閉じたまま、首を振った。
「……重くないです」
声が震える。
「……重いのは、俺です」
言った瞬間、彼女がふっと笑った気配がした。
笑い声じゃない。
嬉しい息だ。
「うん。知ってる」
知ってる。
そんなこと、言わないでほしい。
知られたら、もう隠せない。
彼女はそのまま、俺の頭を胸に引き寄せた。
抱きしめる、というほど強くない。
でも逃げられない、やさしい圧。
「ここ、あなたの場所」
彼女が、囁く。
その言葉が、胸の奥のいちばん柔らかいところに刺さった。
場所。
俺の場所。
そんなもの――最初から持っていなかった。
持っていないと思っていた。
だから俺は、役割で自分を守ってきた。
優しくする役。
穏やかな人の役。
踏み込まない役。
迷惑をかけない役。
そうして、ひとりで立ってきた。
でも今。
彼女の腕の中で。
役が要らなくなっていく。
怖いのに、安心する。
安心するのに、涙が出そうになる。
「……離れたくないです」
口が勝手に言ってしまった。
止める前に、出てしまった。
俺は愕然とする。
こんなの、言うつもりじゃ――
彼女の腕が、ほんの少しだけ強くなる。
「うん」
短い返事。
でも、その返事には決意が入っていた。
「離れなくていいよ」
俺の胸が、ぎゅっと縮まった。
それは痛いのに、甘い。
甘すぎて、息ができない。
彼女は俺の髪を、ゆっくり撫でる。
まるで、子どもをあやすみたいに。
俺はその撫で方に、耐えきれなくなる。
このまま、全部出てしまう。
俺が隠していた、甘えたい気持ちが。
欲しいものが。
「……」
声が出ない。
代わりに、喉が震えた。
涙を堪えるときの震え。
彼女はそれに気づいても、何も言わない。
ただ、撫でる。
抱く。
ここにいていいと、身体で教える。
それが――一番ずるい。
ずるいのに、ありがたい。
俺は小さく、息を吐いた。
「……すみません」
また謝罪が出た。
癖だ。
彼女はすぐ言う。
「謝らないで」
それから、静かに続ける。
「ねえ。あなたが甘えるのって、迷惑じゃないよ」
迷惑じゃない。
そんな簡単に言う。
でも彼女の言葉には、嘘がない。
俺は思わず、子どもみたいな声を出してしまった。
「……でも、俺」
「うん」
「……何も返せません」
それはずっと抱えてきた怖さだった。
与えられると怖い。
返せないから。
返せない自分が嫌になるから。
だから受け取らないようにしてきたのに。
彼女は、俺の頬に軽くキスを落とした。
触れるだけの、優しいキス。
そして言う。
「返さなくていいよ」
俺は息を止めた。
「あなたがここにいるだけで、私は嬉しい」
それは――
俺がずっと欲しかった、許可だった。
存在していい、という許可。
頑張らなくても、役に立たなくても、ここにいていいという許可。
俺は、彼女の服の裾を、そっと握った。
子どもみたいな掴み方。
恥ずかしくて、たまらない。
でも、離したくなかった。
「……一つ、だけ」
俺は、唇を噛んで言った。
彼女は「うん」と答える。
「今日は……行かないでください」
それは頼みじゃなくて、願いだった。
彼女は迷わない。
当たり前のように頷いた。
「うん。行かない」
そして、小さく笑う。
「だって私、重いから」
その“重い”が、こんなにも優しいなんて。
俺は、胸の奥が溶けていくのを感じた。
怖いのに。
嬉しいのに。
涙が出そうで。
俺は彼女の腕の中で、とうとう降参した。
演技の手順も、盾も、全部。
今は――ここにいることだけでいい。
彼女の重さが、帰る場所になるなら。
俺の重さだって、ここに置いていい。
そう思えたから。
毛布の重み。
指先に残る、体温の記憶。
それから、すぐ近くにいる気配。
俺はゆっくり瞬きをして、天井の灯りを見つめた。
ソファで寝ていたらしい。
寝落ち――した。
信じられない。
俺が、人の前で。
しかも、彼女の前で。
そんな無防備なことを。
喉が渇いている。身体の奥がだるい。でも、いつものだるさと違った。
苦しい、じゃない。
ただ、休んだ後の重さ。
それが、変に嬉しい。
「……起きた?」
小さな声がして、俺はそちらを見た。
彼女が、ソファの端に座ったまま、毛布を膝に乗せていた。
寝ていない。
ずっとここにいたのか。
そう思った瞬間、胸がざわっとした。
――迷惑だ。
こんなことをさせたら、迷惑だ。
俺は即座に笑顔を作る。
「すみません。寝てしまいました」
謝罪は安全。
謝るのは習慣。
彼女は首を振った。
「謝らないで」
それから、カップを差し出す。
湯気の立ったお茶。さっきと同じ香り。
「喉、渇いてない?」
「……ありがとうございます」
一口飲むと、喉が生き返るみたいに潤った。
その瞬間、俺の頭がようやく働き始める。
――どうしよう。
ここで最適な行動は何だ。
彼女に礼を言って、仕事の準備に戻る。彼女を休ませる。俺は普段通りに戻る。
普段通り。
そうすれば、全部丸く収まる。
――収まるはずなのに。
彼女は俺を見て、穏やかに言った。
「ねえ。今日も“本音”言って」
「……」
まだやるのか。
俺は心の中で小さく呻く。
“本音を一つ”のルール。
彼女が作ったこのルールは、俺にとって拷問みたいで――でも、救いでもあった。
「……眠気は取れました」
それっぽい言葉を選んだつもりだった。
彼女は少し眉を上げる。
「それ、本音?」
くっ、と喉が詰まった。
この人は、逃げ道の作り方を知っているのに、それを使わない。
まっすぐに、俺を捕まえに来る。
優しく。
でも確実に。
「……」
俺は視線を落とした。
本音。
本音なんて、いつもは押し込めている。
口にしたら終わる。
口にしたら、欲しくなってしまう。
それでも。
喉の奥から、勝手に出てくるものがあった。
「……もう少しだけ、ここにいたいです」
言った瞬間、彼女の目がふわっと柔らかくなる。
「うん。いいよ」
迷いがない。
当たり前みたいに許されることが、怖い。
怖いのに――胸の奥が、ほっとしてしまう。
俺はカップを両手で包んで、湯気に逃げ込んだ。
彼女は少しだけ間を置いて、言う。
「ねえ。昨日、寝る前に」
俺は息を止めた。
やめてほしい。
昨日の俺は、崩れていた。
覚えていないふりをしたい。
「……あなた、言ったよ」
彼女が、穏やかに。
「一人にしないでください、って」
耳が熱くなる。
顔が熱い。
心臓が恥ずかしさで跳ねる。
俺は咄嗟に笑って誤魔化そうとした。
「寝ぼけてましたね……」
逃げる。
軽くする。
冗談にする。
それが安全。
でも、彼女は首を振らない。
笑わない。
ただ、優しく言った。
「寝ぼけた本音って、いちばん本音じゃない?」
俺は固まった。
やめて。
そんなこと言わないで。
そうしたら、俺は――
「……」
言葉が出ない。
彼女は追い詰めない。
代わりに、ひとつ提案するみたいに言った。
「今日も、同じこと言っていいよ」
――同じこと。
一人にしないでください。
それを、寝ぼけてなく言うのは。
あまりにも――重い。
俺が言ったら、重すぎる。
でも彼女は、そういう重さを、嫌がらない。
むしろ、受け止める顔をする。
俺は視線を逸らして、喉の奥で小さく息を吐いた。
「……言えません」
「うん」
彼女はすぐ頷いた。
「じゃあ、別の本音」
それが優しさだった。
逃げ道を作ってくれる優しさ。
俺はカップを置いて、毛布の端を握りしめた。
本音。
別の本音。
胸の奥から、また勝手に出てくる。
ずっと隠していたもの。
言ったら終わるもの。
「……触れてほしいです」
言ってしまった瞬間、世界が静かになった。
自分の声が、あまりにも小さくて。
それでも、確かに聞こえてしまって。
俺は息ができなくなる。
恥ずかしい。
惨めだ。
情けない。
俺は大人だ。領地の補佐官だ。人の前でそんな――
彼女が立ち上がった。
静かに、音を立てずに。
俺の前に来て、膝をつく。
目線が同じ高さになる。
逃げない。
でも、押しつけない。
「うん」
彼女は言った。
「触れるね」
その言葉だけで、胸の奥がほどけた。
彼女の手が、そっと俺の頬に触れる。
指先があたたかくて、やわらかい。
俺は目を閉じた。
これ以上見たら、壊れてしまう。
「……重いですか、私」
彼女が小さく聞いた。
俺は目を閉じたまま、首を振った。
「……重くないです」
声が震える。
「……重いのは、俺です」
言った瞬間、彼女がふっと笑った気配がした。
笑い声じゃない。
嬉しい息だ。
「うん。知ってる」
知ってる。
そんなこと、言わないでほしい。
知られたら、もう隠せない。
彼女はそのまま、俺の頭を胸に引き寄せた。
抱きしめる、というほど強くない。
でも逃げられない、やさしい圧。
「ここ、あなたの場所」
彼女が、囁く。
その言葉が、胸の奥のいちばん柔らかいところに刺さった。
場所。
俺の場所。
そんなもの――最初から持っていなかった。
持っていないと思っていた。
だから俺は、役割で自分を守ってきた。
優しくする役。
穏やかな人の役。
踏み込まない役。
迷惑をかけない役。
そうして、ひとりで立ってきた。
でも今。
彼女の腕の中で。
役が要らなくなっていく。
怖いのに、安心する。
安心するのに、涙が出そうになる。
「……離れたくないです」
口が勝手に言ってしまった。
止める前に、出てしまった。
俺は愕然とする。
こんなの、言うつもりじゃ――
彼女の腕が、ほんの少しだけ強くなる。
「うん」
短い返事。
でも、その返事には決意が入っていた。
「離れなくていいよ」
俺の胸が、ぎゅっと縮まった。
それは痛いのに、甘い。
甘すぎて、息ができない。
彼女は俺の髪を、ゆっくり撫でる。
まるで、子どもをあやすみたいに。
俺はその撫で方に、耐えきれなくなる。
このまま、全部出てしまう。
俺が隠していた、甘えたい気持ちが。
欲しいものが。
「……」
声が出ない。
代わりに、喉が震えた。
涙を堪えるときの震え。
彼女はそれに気づいても、何も言わない。
ただ、撫でる。
抱く。
ここにいていいと、身体で教える。
それが――一番ずるい。
ずるいのに、ありがたい。
俺は小さく、息を吐いた。
「……すみません」
また謝罪が出た。
癖だ。
彼女はすぐ言う。
「謝らないで」
それから、静かに続ける。
「ねえ。あなたが甘えるのって、迷惑じゃないよ」
迷惑じゃない。
そんな簡単に言う。
でも彼女の言葉には、嘘がない。
俺は思わず、子どもみたいな声を出してしまった。
「……でも、俺」
「うん」
「……何も返せません」
それはずっと抱えてきた怖さだった。
与えられると怖い。
返せないから。
返せない自分が嫌になるから。
だから受け取らないようにしてきたのに。
彼女は、俺の頬に軽くキスを落とした。
触れるだけの、優しいキス。
そして言う。
「返さなくていいよ」
俺は息を止めた。
「あなたがここにいるだけで、私は嬉しい」
それは――
俺がずっと欲しかった、許可だった。
存在していい、という許可。
頑張らなくても、役に立たなくても、ここにいていいという許可。
俺は、彼女の服の裾を、そっと握った。
子どもみたいな掴み方。
恥ずかしくて、たまらない。
でも、離したくなかった。
「……一つ、だけ」
俺は、唇を噛んで言った。
彼女は「うん」と答える。
「今日は……行かないでください」
それは頼みじゃなくて、願いだった。
彼女は迷わない。
当たり前のように頷いた。
「うん。行かない」
そして、小さく笑う。
「だって私、重いから」
その“重い”が、こんなにも優しいなんて。
俺は、胸の奥が溶けていくのを感じた。
怖いのに。
嬉しいのに。
涙が出そうで。
俺は彼女の腕の中で、とうとう降参した。
演技の手順も、盾も、全部。
今は――ここにいることだけでいい。
彼女の重さが、帰る場所になるなら。
俺の重さだって、ここに置いていい。
そう思えたから。
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