嘘ばかりの貴方を愛すなんて誰が出来るの?

夏見颯一

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1.【始まりは妹のタレコミ】

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 王都は何やら騒がしいとの噂を聞きますが、私の住む王都から離れたアステリア伯爵領はその日も長閑なものでした。

「お姉様の婚約者、聖女様の妹君の婚約者になっておりますよ!」

 王都から帰ってきた妹の話を聞くまでは。



 その日も、穏やかな1日が過ぎると思っておりました。

 窓を開けると鳥の囀りの向こうに牛の鳴く声。
 人間より動物の方が遥かに多い田舎貴族の領地なんて、何処もこんなものでしょうね。
 この世界に転生して早18年。生前の年齢を足すと結構枯れた年齢になるからという訳ではないと思いたいのですが、王都よりも私は領地にいる時間が一番好きです。
 子供時代から腹の探り合いが始まる貴族同士の交流なんて、普通の女子大学生の記憶が残っている私には正直苦痛なんですよ。

 まあ、転生したと言っても私はダラダラ生きていた方なので、これと言って何か革命をもたらす知識なんて持ち合わせてはおりません。
 多くの知識を持って生まれた転生者は既に何人もいて、私は彼らの遺産をちょこちょこ改良するだけの生活でしょうか。
 実際のところ、これくらいが気楽で丁度良いんですよ。
 あまり活躍すると社会構造との軋轢と高位貴族達の欲望に巻き込まれ、命の危険に晒されますからね。活躍した転生者は概ね非業の死を遂げております。

 ただ単に転生しただけの私には何の監視もありません。
 今日は何をしましょう?

 とても穏やかでのんびりとした空気に一息ついていると。

「お姉様!」

 ドタドタと廊下を音を立てて走ってきた妹は、ノックもなく私の部屋の扉を開けました。
 そう言えば、今日は王都で生活している妹が帰ってくる日でした。
 ちょっと活動的すぎた妹は、矯正とばかりに父に特に厳しいとされる淑女学校に入れられております。
 これで少しは礼儀を身に付けて帰ってくると思っていたのですが、どうやら無駄だったようです。
 あまりに変わらない姿に、私は眉をひそめました。

「エウリシア、部屋に入るときはノックをしなさいとあれ程……」
「礼儀の話は後で聞きます! お姉様の婚約者、聖女様の妹君の婚約者になっておりますよ!」

 王都の噂は田舎に届くまでは時間がかかります。
 私は王都から急いで帰宅した妹に教えられて初めて王都に広がっているニュースを知りました。


 取り敢えず、最悪です。




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