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10話
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ベアトリス様が追い出された後、アルヴィス様は僕を自分の膝の上に座らせた。
いわゆる「膝抱っこ」の状態だ。
「ま、待ってください、アルヴィス様! これじゃ仕事ができないんじゃ……」
「構わん。貴様をこうして固定しておかなければ、また勝手に逃げ出そうとするだろう」
彼の腕が、僕の腰をがっしりとホールドしている。
背中に感じる、彼の逞しい胸の鼓動。首筋に当たる、彼の規則正しい呼吸。
すべてが近すぎて、頭がどうにかなりそうだ。
けれど、僕の心は別の理由でざわついていた。
(殿下を癒やすのは、高い魔力を持つ一族の役目……)
さっきのベアトリス様の言葉が、胸に棘のように刺さっている。
「……アルヴィス様」
「なんだ」
「僕じゃなくて……もっと、魔力の高い人の方が、殿下を上手に癒やせるんじゃないでしょうか。僕は『おまけ』で召喚された、ただの人間ですし……」
僕が消え入るような声で呟くと、アルヴィス様が書類を動かす手を止めた。
彼は僕の肩に顎を乗せ、耳元で低く囁いた。
「……まだそんな馬鹿なことを言っているのか」
「だって、僕は水晶も光らなかったし……」
「あの水晶など、私の『呪い』と同じ性質の魔力には反応せん。貴様の魔力は、この世界の既存の枠組みには収まらんほど、あまりに純粋で、あまりに濃密なのだ」
彼は僕の耳たぶを、甘噛みするように唇で弄った。
「あ……んっ……」
「いい声だ。……ベアトリスのような女が私に触れれば、その瞬間に私の毒にあてられて発狂するだろうな。私を御せるのは、世界で貴様一人だけだ。自覚を持て」
自覚。
自分が、この冷徹な王太子の唯一の「救い」であるという自覚。
それは、前の国で踏みつけられていた僕にとって、どんな魔法の言葉よりも甘く、そして恐ろしい呪縛だった。
「……本当、ですか?」
「疑うなら、もっと深く教えてやってもいいのだぞ? 貴様の魔力を吸い上げる方法が、ただ抱きしめるだけではないことを」
アルヴィス様の指が、僕のシャツのボタンに掛かる。
「……ひ、昼間ですよ!」
「ふん、なら夜まで待ってやろう。……その代わり、今夜は覚悟しておけ」
夕闇が迫る執務室で、彼は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
僕は、彼に必要とされる喜びに溺れながらも、これから訪れる「夜の供給」に、期待と不安で胸を震わせるのだった。
いわゆる「膝抱っこ」の状態だ。
「ま、待ってください、アルヴィス様! これじゃ仕事ができないんじゃ……」
「構わん。貴様をこうして固定しておかなければ、また勝手に逃げ出そうとするだろう」
彼の腕が、僕の腰をがっしりとホールドしている。
背中に感じる、彼の逞しい胸の鼓動。首筋に当たる、彼の規則正しい呼吸。
すべてが近すぎて、頭がどうにかなりそうだ。
けれど、僕の心は別の理由でざわついていた。
(殿下を癒やすのは、高い魔力を持つ一族の役目……)
さっきのベアトリス様の言葉が、胸に棘のように刺さっている。
「……アルヴィス様」
「なんだ」
「僕じゃなくて……もっと、魔力の高い人の方が、殿下を上手に癒やせるんじゃないでしょうか。僕は『おまけ』で召喚された、ただの人間ですし……」
僕が消え入るような声で呟くと、アルヴィス様が書類を動かす手を止めた。
彼は僕の肩に顎を乗せ、耳元で低く囁いた。
「……まだそんな馬鹿なことを言っているのか」
「だって、僕は水晶も光らなかったし……」
「あの水晶など、私の『呪い』と同じ性質の魔力には反応せん。貴様の魔力は、この世界の既存の枠組みには収まらんほど、あまりに純粋で、あまりに濃密なのだ」
彼は僕の耳たぶを、甘噛みするように唇で弄った。
「あ……んっ……」
「いい声だ。……ベアトリスのような女が私に触れれば、その瞬間に私の毒にあてられて発狂するだろうな。私を御せるのは、世界で貴様一人だけだ。自覚を持て」
自覚。
自分が、この冷徹な王太子の唯一の「救い」であるという自覚。
それは、前の国で踏みつけられていた僕にとって、どんな魔法の言葉よりも甘く、そして恐ろしい呪縛だった。
「……本当、ですか?」
「疑うなら、もっと深く教えてやってもいいのだぞ? 貴様の魔力を吸い上げる方法が、ただ抱きしめるだけではないことを」
アルヴィス様の指が、僕のシャツのボタンに掛かる。
「……ひ、昼間ですよ!」
「ふん、なら夜まで待ってやろう。……その代わり、今夜は覚悟しておけ」
夕闇が迫る執務室で、彼は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
僕は、彼に必要とされる喜びに溺れながらも、これから訪れる「夜の供給」に、期待と不安で胸を震わせるのだった。
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