転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布

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45話

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 王都を彩る「星霜魔導祭」の会場は、無数の魔導灯と人々の歓声に包まれていた。
 リィエルの発表した「自律型魔力循環システム」の論文と、アイアンがその一部を実演したデモンストレーションは、魔導院の長老たちを驚愕させ、会場中から惜しみない喝采を浴びた。

 しかし、当の本人は、形式的な称賛の儀式が一段落するなり、ガイアスの手を引いて喧騒を逃れ、王宮の最上階にあるバルコニーへと辿り着いた。

「……はぁ、ようやく静かになった。解析不能な社交辞令を浴び続けるのは、魔力回路を直接ショートさせられるより疲れます」

「はは、お疲れ様。だがリィエル、お前は立派だったぞ。世界中が、お前の技術と、お前という存在を認めたんだ」

 ガイアスはマントを脱いでリィエルの肩に掛け、冷たい夜風から彼を守るように隣に立った。
 眼下には王都の街並みが広がり、ちょうどその時、祭りのクライマックスを告げる特大の魔導花火が夜空に打ち上がった。

 大輪の光がリィエルの銀髪を七色に染め、彼の瞳に映る星空をさらに輝かせる。
 リィエルは、隣で自分を見つめるガイアスの視線に気づき、今度は視線を逸らさずに真っ直ぐに見返した。

「……ガイアスさん。俺は、独りでいることが最も効率的で、完璧なシステムだと思っていました。でも、あなたという不確定要素(ノイズ)が混入してから、俺の計算はことごとく狂わされている」

「ああ、知っているよ。俺はお前の平穏を乱す、タチの悪いバグみたいなものだろう?」

「いいえ。……今なら分かります。あなたはバグではなく、俺の人生に欠けていた『基幹プログラム』だったんだ。……あなたがいないと、俺のセカイは正しく動作(起動)しません」

 リィエルは、震える手でガイアスの胸元の飾りに触れた。
 言葉にするのは、どの高度な術式を構築するよりも難しかったが、それでも彼は自分の感情という名のログを、はっきりと出力することに決めた。

「……正式に、俺と『生涯独占権』を締結してください。……つまり、その、俺の隣にいる権利を、あなたに無期限で付与します」

 ガイアスは一瞬、呆気に取られたように目を見開いたが、やがてこれ以上ないほど幸せそうに顔を綻ばせた。
 彼はリィエルの腰を引き寄せ、その額に優しく口づけを落とした。

「……喜んで。その権利、一生手放さないと誓うよ。俺の心臓の全リソースを、お前という唯一の存在に捧げよう」

 重なり合う二人の影の下で、シロが「おめでとう!」と元気よく跳ね回り、ルミが祝福の光を振りまく。遠くではアイアンが、誇らしげに空に向けて小さな光弾を放っていた。

 翌日、森のログハウスへと帰る馬車の中で、リィエルはガイアスの肩にもたれかかり、新しい研究ノートの表紙に一文を書き加えた。

『――世界は、独りでは完結しない。隣に誰かがいることで、システムは無限に拡張される。……今日からのログは、二人で記録することにする』

 森の奥、小さなログハウスの窓には、今日も温かい光が灯っている。
 完璧なエンジニアと、彼を愛する騎士の、騒がしくて愛おしい「アップデート」の日々は、これからもずっと続いていく。
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