お人好しな新米冒険者は最強パーティに愛で尽くされる~行き倒れ戦士と毒舌魔導師、そして大型犬な後継者に囲まれて~

たら昆布

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14話

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聖域の深部は、冷ややかな静寂と、肌を刺すような高密度の魔力に満ちていた。
白銀の柱が並ぶ回廊を、三人の足音が不規則に響く。
レオはガウルとシリウスの間に挟まれ、震える肩を強張らせていた。

「……空気が重い。まるで、巨大な何かに見下ろされているみたいだ」

レオが呟くと、ガウルがその大きな手でレオの頭を優しく、だが力強く撫でた。
ごつごつとした掌の感触が、レオの不安を少しだけ溶かしていく。

「安心しろ。何が来ようと、俺の背中から先には通さない」

「ふん、相変わらず脳筋な台詞だね。だが同意はしよう。レオ、僕の魔力障壁の中にいなさい。一歩でも外に出れば、その華奢な体は魔力の渦に引き裂かれるよ」

シリウスが冷徹に告げ、レオの腰を自分の方へと引き寄せた。
シリウスの細いが強靭な腕が、レオの脇腹に密着する。
法衣越しに伝わるシリウスの鼓動は、意外なほど激しく打っていた。

回廊の突き当たり。巨大な石扉が、禍々しい紫色の光を放って脈打っている。
その扉の前に、姿を持たない影のような怪物――『次元の門番』が待ち構えていた。

「来るぞ! 二人とも!」

レオの叫びと同時に、影が巨大な鎌を振り下ろした。
ガウルが咆哮を上げ、大剣でそれを受け止める。
凄まじい衝撃音が響き、石の床が蜘蛛の巣状に砕けた。

「ぐ、あああっ……! なんだ、この重さは……っ」

ガウルが膝をつきそうになる。
これまでの魔物とは次元が違う。物理攻撃がほとんど通用せず、逆にガウルの精気が吸い取られていく。

「どきな、駄犬! ――『蒼炎の獄縛』!」

シリウスが杖を振り上げ、超高密度の中級魔術を放つ。
だが、影はシリウスの魔術さえも霧散させ、その鎌をシリウスに向けて振り上げた。

「……馬鹿な。僕の魔術を完全に無効化しただと……?」

二人が絶体絶命の危機に陥ったその時。
レオの胸の奥で、何かが爆発した。

(嫌だ。二人が傷つくのは、もう見たくない!)

お人好しなレオの心が、自己犠牲を厭わない純粋な願いが、彼の中に眠る「聖なる器」の封印を完全に吹き飛ばした。

「やめてええええええ!」

レオの叫びとともに、琥珀色の瞳が眩い黄金色へと染まる。
背後から噴き出したのは、物理的な熱さえ伴う巨大な光の翼だった。
レオの全身から溢れ出す至純の魔力が、聖域全体を白銀の世界へと塗り替えていく。

「……なんだ、この光は……。体が、熱い……っ」

ガウルが目を見開く。
レオから放たれた光の帯がガウルの全身に絡みつき、彼の筋肉を、細胞を、爆発的な活力で満たしていく。
傷が瞬時に塞がり、大剣が聖なる輝きを帯びて巨大化した。

シリウスもまた、驚愕に身体を震わせていた。
レオの光が彼の中に流れ込んだ瞬間、魔導師としての限界値が跳ね上がった。
頭脳が研ぎ澄まされ、詠唱なしで最高位の魔術が構築されていく。

「レオ……君、なんて……。これほどまでに、僕たちを『満たして』くれるのか」

シリウスの瞳が、狂おしいほどの悦喜に濡れた。
レオの加護を受けた二人は、もはや人外の強さを手に入れていた。

ガウルが地面を蹴り、光速に近い速さで影を切り裂く。
シリウスが指先を鳴らし、影を次元の彼方へと消し去る。
一瞬の出来事だった。

戦いが終わり、光の翼が消えると、レオはその場に力なく崩れ落ちた。
完全に魔力を使い果たした、抜け殻のような状態だ。

「レオ!」

ガウルとシリウスが同時に駆け寄る。
ガウルがレオを抱き起こし、その熱い胸板にレオの顔を押し当てた。

「無茶をしやがって……! だが、あんたの力のおかげで助かった」

「レオ、目を開けて。……素晴らしいよ。君の本当の姿を、今、僕はこの目に焼き付けた」

シリウスがレオの頬を撫で、指先をレオの唇に這わせた。
レオは朦朧とした意識の中で、二人の男の視線を感じていた。
それは先程までの心配とは別の、もっとドロドロとした、逃げ場のない「欲」の視線。

「……はあ、はあ……。よかった、二人とも、無事で……」

レオが弱々しく笑うと、ガウルの腕に一層力がこもった。
シリウスの指先が、レオの首筋の脈動を確かめるように強く押し付けられる。

「レオ、あんたはもう、俺たちなしでは生きていけない。……この力を制御できるのは、俺たちだけだ」

ガウルの低い、独占欲に満ちた声。

「そうだよ。君のその神聖な輝きは、僕たちが泥に染めて、守ってあげる。……誰にも触れさせはしない」

シリウスの冷たくも熱い囁き。

レオは気づいていなかった。
自身の力が覚醒したことで、二人の男の愛が、守護から「監禁」に近い執着へと変貌を遂げたことに。

聖域の扉の向こう側で。
レオの運命を左右する三体目の、そして最も若く「凶暴」な存在が、その声を上げるのを待っていた。
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