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17話
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「……見えてきたっす。あれが依頼の『双頭の飛竜(ツインヘッド・ワイバーン)』が潜んでいるっていう、断絶の谷っすね」
カイトが谷の入り口を指差しながら、腰の剣を鳴らした。
新米とはいえ、腐っても名門騎士家の総領だ。
戦場を前にした彼の瞳には、朝の甘えた様子とは一変した、鋭い武人の光が宿っている。
レオはその隣で、ごくりと喉を鳴らした。
切り立った岩壁が続く谷底には、どろりとした不吉な魔力の霧が立ち込めている。
「……大丈夫だよ、レオ。そんなに震えなくていい。僕の結界が、君をあらゆる毒気から守っているからね」
シリウスがレオの肩に細い指先を滑らせ、耳元で優しく囁いた。
シリウスの魔力は、冷たい氷のベールのようになってレオを包み込んでいる。
その冷涼な感覚が、レオの過剰な緊張を少しだけ和らげてくれた。
「……シリウス、離れろ。霧が濃い。あんたの結界だけでは、死角からの不意打ちを防げないぞ」
ガウルが二人の間に割って入るようにして、大剣を肩に担ぎ直した。
彼はレオの反対側の手をぎゅっと握りしめ、一歩も離さないという意志を示す。
ガウルの大きな掌から伝わる、岩のような固さと、焼けるような体温。
レオは二人の異なる「熱」と「冷」に挟まれながら、ゆっくりと谷の奥へと足を踏み入れた。
「ギイイイイイアアアアアッ!」
谷に響き渡ったのは、鼓膜を突き破らんばかりの咆哮だった。
霧を切り裂いて現れたのは、二つの首を持つ巨大な飛竜。
その翼が羽ばたくたび、鋭い風の刃が岩肌を削り、レオたちを襲う。
「カイト、左を抑えろ! シリウス、上空の機動を封じろ!」
ガウルが即座に指示を飛ばし、自身は大剣を構えて正面から飛竜へと突っ込んだ。
「了解っす! レオさんは一歩も動いちゃダメっすよ!」
カイトが弾かれたように飛び出し、飛竜の左側の首を挑発するように剣を振るう。
その動きは荒削りだが、天性の体躯を活かした重い一撃が飛竜の鱗を弾いた。
「ふん、指図されるのは不愉快だが……レオを危険に晒すわけにはいかないからね」
シリウスが杖を掲げ、高度な拘束魔法を紡ぎ出す。
「――『氷銀の鎖(アージェント・チェイン)』」
虚空から現れた光り輝く鎖が、飛竜の両翼を絡め取り、その自由を奪った。
三人のハイスペックな男たちによる、完璧な連携。
だが、飛竜もAランク相当の魔物だ。
拘束を力任せに引きちぎり、口から猛烈な火炎を吐き出した。
「危ないっ!」
レオが叫んだ瞬間、火炎がカイトを飲み込もうとした。
「……っ、しまった!」
カイトが盾を構えるが、至近距離からの熱線は防ぎきれない。
その時、レオの胸の奥が、カチリと音を立てて熱くなった。
(……助けなきゃ。みんなを、僕が守らなきゃ!)
無意識のうちに、レオの手が空を仰いだ。
彼の琥珀色の瞳が黄金色に染まり、全身から柔らかな、けれど圧倒的な密度の光が溢れ出す。
それはシリウスの魔法とも、ガウルの闘気とも違う、生命そのものを底上げする『至純の加護』だった。
「――みんなに、力を!」
レオの光が三人の身体に吸い込まれていく。
「なっ……力が、溢れてくる……っ!」
カイトが驚愕の声を上げた。
彼の全身を包んだ光が物理的な鎧となり、飛竜の火炎を霧散させたのだ。
それどころか、カイトの剣には聖なる炎が宿り、一振りで飛竜の分厚い鱗をバターのように切り裂いた。
ガウルもまた、レオの力に酔いしれていた。
筋肉の組織一つひとつが活性化し、世界が止まって見えるほどの動体視力を手に入れる。
大剣を一閃するだけで、谷の地形が変わるほどの衝撃波が放たれた。
シリウスの瞳は、歓喜に濡れていた。
無限に湧き出す魔力の泉。
普段なら数分かかる大魔術を、瞬き一つの間に構築していく。
「ああ……素晴らしいよ、レオ。君の魔力は、僕の脳を、脊髄を……すべてを溶かしてしまいそうだ」
三人の男たちは、レオから与えられた強大な力に昂ぶり、飛竜を瞬く間に蹂躙した。
それは討伐というよりも、もはや一方的な蹂躙だった。
魔物が息絶え、谷に静寂が戻ると、光を使い果たしたレオはその場に力なく膝をついた。
「レオ!」
真っ先に駆け寄ったのは、カイトだった。
彼はレオの身体を壊れ物を扱うように抱き上げ、自分の広い胸の中に閉じ込めた。
「レオさん! すごかったっす! 自分、レオさんの力のおかげで、あんなに動けたっす!」
カイトの興奮した吐息が、レオの首筋に掛かる。
若さゆえの熱い血潮が、レオの肌に伝わってドキドキする。
「……離せ、雑種。レオ、あんたは無理をしすぎだ」
ガウルが背後からレオを包み込むようにして、カイトの腕からレオを奪い取った。
戦いの余韻で昂ったガウルの肉体は、いつにも増して硬く、熱い。
ガウルはレオのうなじに顔を埋め、レオの香りを肺の奥まで吸い込んだ。
「……いい匂いだ。俺の力が、あんたを求めて暴れているぞ……」
「ふふ、二人とも、そんなにレオを困らせちゃいけないよ。……さあレオ、僕の魔力で君を癒やしてあげよう。一番、深いところまでね」
シリウスがレオの正面に回り込み、レオの頬を両手で包み込んだ。
シリウスの青い瞳は、情欲と独占欲でドロドロに濁っている。
シリウスはレオの唇を、親指の腹でゆっくりとなぞった。
「……あ、あの……みんな、無事でよかった……っ」
レオが弱々しく笑うと、三人の男たちの視線が一点に集中した。
自分たちがどれほどレオに生かされ、愛されているか。
そして、この唯一無二の存在を、決して誰にも渡さないという決意が、彼らの中でより一層強固なものになっていた。
戦いを通じて深まったのは、パーティとしての絆だけではない。
レオを巡る、逃げ場のない『愛の檻』が、さらにその密度を増した瞬間だった。
「……帰るぞ。レオ、あんたを今すぐ、安全な寝室へ連れていきたい」
ガウルがレオを横抱きにし、そのまま谷を後にする。
左右を固めるシリウスとカイトもまた、レオの指先や髪に触れながら、熱い視線を注ぎ続けていた。
「(……なんだか、戦う前よりも心臓が痛いよ……っ)」
レオの心拍数は、三人の男たちの執着という名の熱によって、いつまでも下がることがなかった。
カイトが谷の入り口を指差しながら、腰の剣を鳴らした。
新米とはいえ、腐っても名門騎士家の総領だ。
戦場を前にした彼の瞳には、朝の甘えた様子とは一変した、鋭い武人の光が宿っている。
レオはその隣で、ごくりと喉を鳴らした。
切り立った岩壁が続く谷底には、どろりとした不吉な魔力の霧が立ち込めている。
「……大丈夫だよ、レオ。そんなに震えなくていい。僕の結界が、君をあらゆる毒気から守っているからね」
シリウスがレオの肩に細い指先を滑らせ、耳元で優しく囁いた。
シリウスの魔力は、冷たい氷のベールのようになってレオを包み込んでいる。
その冷涼な感覚が、レオの過剰な緊張を少しだけ和らげてくれた。
「……シリウス、離れろ。霧が濃い。あんたの結界だけでは、死角からの不意打ちを防げないぞ」
ガウルが二人の間に割って入るようにして、大剣を肩に担ぎ直した。
彼はレオの反対側の手をぎゅっと握りしめ、一歩も離さないという意志を示す。
ガウルの大きな掌から伝わる、岩のような固さと、焼けるような体温。
レオは二人の異なる「熱」と「冷」に挟まれながら、ゆっくりと谷の奥へと足を踏み入れた。
「ギイイイイイアアアアアッ!」
谷に響き渡ったのは、鼓膜を突き破らんばかりの咆哮だった。
霧を切り裂いて現れたのは、二つの首を持つ巨大な飛竜。
その翼が羽ばたくたび、鋭い風の刃が岩肌を削り、レオたちを襲う。
「カイト、左を抑えろ! シリウス、上空の機動を封じろ!」
ガウルが即座に指示を飛ばし、自身は大剣を構えて正面から飛竜へと突っ込んだ。
「了解っす! レオさんは一歩も動いちゃダメっすよ!」
カイトが弾かれたように飛び出し、飛竜の左側の首を挑発するように剣を振るう。
その動きは荒削りだが、天性の体躯を活かした重い一撃が飛竜の鱗を弾いた。
「ふん、指図されるのは不愉快だが……レオを危険に晒すわけにはいかないからね」
シリウスが杖を掲げ、高度な拘束魔法を紡ぎ出す。
「――『氷銀の鎖(アージェント・チェイン)』」
虚空から現れた光り輝く鎖が、飛竜の両翼を絡め取り、その自由を奪った。
三人のハイスペックな男たちによる、完璧な連携。
だが、飛竜もAランク相当の魔物だ。
拘束を力任せに引きちぎり、口から猛烈な火炎を吐き出した。
「危ないっ!」
レオが叫んだ瞬間、火炎がカイトを飲み込もうとした。
「……っ、しまった!」
カイトが盾を構えるが、至近距離からの熱線は防ぎきれない。
その時、レオの胸の奥が、カチリと音を立てて熱くなった。
(……助けなきゃ。みんなを、僕が守らなきゃ!)
無意識のうちに、レオの手が空を仰いだ。
彼の琥珀色の瞳が黄金色に染まり、全身から柔らかな、けれど圧倒的な密度の光が溢れ出す。
それはシリウスの魔法とも、ガウルの闘気とも違う、生命そのものを底上げする『至純の加護』だった。
「――みんなに、力を!」
レオの光が三人の身体に吸い込まれていく。
「なっ……力が、溢れてくる……っ!」
カイトが驚愕の声を上げた。
彼の全身を包んだ光が物理的な鎧となり、飛竜の火炎を霧散させたのだ。
それどころか、カイトの剣には聖なる炎が宿り、一振りで飛竜の分厚い鱗をバターのように切り裂いた。
ガウルもまた、レオの力に酔いしれていた。
筋肉の組織一つひとつが活性化し、世界が止まって見えるほどの動体視力を手に入れる。
大剣を一閃するだけで、谷の地形が変わるほどの衝撃波が放たれた。
シリウスの瞳は、歓喜に濡れていた。
無限に湧き出す魔力の泉。
普段なら数分かかる大魔術を、瞬き一つの間に構築していく。
「ああ……素晴らしいよ、レオ。君の魔力は、僕の脳を、脊髄を……すべてを溶かしてしまいそうだ」
三人の男たちは、レオから与えられた強大な力に昂ぶり、飛竜を瞬く間に蹂躙した。
それは討伐というよりも、もはや一方的な蹂躙だった。
魔物が息絶え、谷に静寂が戻ると、光を使い果たしたレオはその場に力なく膝をついた。
「レオ!」
真っ先に駆け寄ったのは、カイトだった。
彼はレオの身体を壊れ物を扱うように抱き上げ、自分の広い胸の中に閉じ込めた。
「レオさん! すごかったっす! 自分、レオさんの力のおかげで、あんなに動けたっす!」
カイトの興奮した吐息が、レオの首筋に掛かる。
若さゆえの熱い血潮が、レオの肌に伝わってドキドキする。
「……離せ、雑種。レオ、あんたは無理をしすぎだ」
ガウルが背後からレオを包み込むようにして、カイトの腕からレオを奪い取った。
戦いの余韻で昂ったガウルの肉体は、いつにも増して硬く、熱い。
ガウルはレオのうなじに顔を埋め、レオの香りを肺の奥まで吸い込んだ。
「……いい匂いだ。俺の力が、あんたを求めて暴れているぞ……」
「ふふ、二人とも、そんなにレオを困らせちゃいけないよ。……さあレオ、僕の魔力で君を癒やしてあげよう。一番、深いところまでね」
シリウスがレオの正面に回り込み、レオの頬を両手で包み込んだ。
シリウスの青い瞳は、情欲と独占欲でドロドロに濁っている。
シリウスはレオの唇を、親指の腹でゆっくりとなぞった。
「……あ、あの……みんな、無事でよかった……っ」
レオが弱々しく笑うと、三人の男たちの視線が一点に集中した。
自分たちがどれほどレオに生かされ、愛されているか。
そして、この唯一無二の存在を、決して誰にも渡さないという決意が、彼らの中でより一層強固なものになっていた。
戦いを通じて深まったのは、パーティとしての絆だけではない。
レオを巡る、逃げ場のない『愛の檻』が、さらにその密度を増した瞬間だった。
「……帰るぞ。レオ、あんたを今すぐ、安全な寝室へ連れていきたい」
ガウルがレオを横抱きにし、そのまま谷を後にする。
左右を固めるシリウスとカイトもまた、レオの指先や髪に触れながら、熱い視線を注ぎ続けていた。
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